すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がフロアの心を一つにする。前情報のないアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブが大きな熱狂を生む。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターが、“オルタナティブ”をテーマに、今響くアーティストやおすすめのニューリリースをテキストとプレイリストで紹介します。
bed『円相|Enso』
東京発の4人組バンド・bedが、UKの新鋭レーベル・Forty Milesから初のEPをリリース。今年に入って日本とUKの二拠点活動をスタートさせ、5月にはタイでのライブとUKでのツアーを行う。帰国後の6月5日、Instagramのストーリー告知のみで、深夜の自主企画パーティを開催。私も遊びに行ったのですが、彼らが世界へと羽ばたく前夜の、東京のフッド感溢れる空間とパフォーマンスに魂が震えた。
4人の佇まいや発するエネルギーから、「bedとは何者か」と聞かれたら間違いなくロックバンドと答える。だがそれは明らかにジャンルという概念の外側で鳴っている。もちろん、各パーツを紐解けば、そこにはさまざまな音楽からの影響がうかがえる。ただしここで重要なのは、bedのクロスオーバー感覚が、他者との比較や差異化のゲームに回収されないことだ。相対という息苦しさをぶっ飛ばす絶対性の強度。それは、bedがクラブ、レイヴやライブハウスなど、東京という文化のカオスのなかでさまざまなシーンを横断し、多様な人々の集まるコミュニティの熱量を、フィジカルで増幅してきたからこそ成せる業だ。ファンも巻き込んだ圧倒的な自由の獲得。その渦が時代の輪廻に大きなムーブメントを起こすかもしれない。『円相|Enso』は、そんなポテンシャルに満ちた作品だ。
LEENALCHI 『Here Comes That Crow』
韓国はソウルを拠点にするバンド・LEENALCHIのニューEP。編成はボーカル4人と、ツインベース、ドラムの7人で、楽器隊の3人がシンセのアレンジも担っている。音楽性は明快でありながら、切り口が斬新。朝鮮半島の民俗芸能・パンソリと、80年代のポストパンク/ニューウェーブ、シンセポップからの影響が色濃いバンドサウンドを融合させたスタイルが、話題を呼んでいる。
パンソリは17世紀(朝鮮時代中期)にストリートから生まれた大衆芸能で、本来は歌い手と太鼓のみの超ミニマル編成。ポストパンク/ニューウェーブ、もっと狭めて言うなら、メンバーがファンだと公言するTalking Headsのオルタナティブなインテリジェンスから導き出されたローファイ感覚と多国籍性、そこから派生したTom Tom Clubのチープでポップなディスコ感覚との相性は抜群だ。そしてそれは単なる巧妙なミクスチャー音楽にとどまらない。過酷な身分社会の矛盾からくる、民衆の抵抗感やパロディを背景に持つパンソリ。そんな当事者意識に対して、アメリカの肥大化した消費社会システムを客観的に観察し、ノイローゼ的な違和感を募らせたTalking Heads。その非対称性と、両者ともに音楽を通じて鬱屈とした感情を快楽へと昇華したという共通項が、真っ向からシンクロしている。そういう意味では、LEENALCHIという存在、ならびに本作は極めてアヴァンギャルドなカウンターポップだと言える。
N.S. DANCEMBLE 『iii』
N.S. DANCEMBLEはラッパー/ウッドベース奏者として知られるNAGAN SERVERを発起人に、バンド名のとおり“ダンス”をキーワードに集結した6人組。ハウスやディスコ、テクノ、ヒップホップ、ジャズ、ファンクなど、さまざまな要素を生演奏にこだわりミックスして、その肉体性と踊れるビートの可能性を拡張してきた。
最新EPとなる本作は、そんな彼らの実験精神や遊び心がさらにアップデートされている。タイトル曲「iii」は、ポリリズムやBPMの変化、ミニマルな反復をコラージュしたマジカルなビートの展開が効いている。「Vitamin B」は、シンプルなジャズファンクと、それ単体でもダンスを想起させるラップとの掛け合わせが、オーセンティックなダンスグルーヴを時代の前に推進する曲。「tobacco」は、生音バンドならではのファンキーなグルーヴと、ヒプノティックなプログレッシブハウスが見事に融合している。そして、ラストを飾る「再生」は、インダストリアル/EBM的ダークで硬質なサウンドにジャズやファンクが溶け込む、エッジと柔軟性を併せ持った新感覚のダンスミュージックに。人力では演奏できない打ち込み音楽があると同時に、人力でしか出せない味や発想がある。卓越した演奏スキルと鋭い嗅覚によって生まれる、N.S. DANCEMBLEならではのダンスフロア像。7月5日、代官山UNITでのワンマンライブを目撃せよ。
ドラムンベースやジャングルとパンクやオルタナティブロックの掛け算に、さらにガソリンを注ぐようなBiminiやWu-Lu。ダンスビートの推進力とパンクの破壊力のあいだにシナジーを起こすBathing SuitsやBucket、Lip Critic、Shelf Livesなど、今月はアッパーでダンサブルなバンドサウンド多めに。Bleech 9:3のようなオルタナティブロックど真ん中のバンドがブレイクの兆しを見せていることもおもしろい流れ。DJでは、それらもですがEffyやMa Shaといったテクノ、エレクトロもよくかけています。
とにかくやりたいことでいっぱいの今日この頃ですが、7月11日に笹塚ZOOKIDにて、私の12時間DJパーティをやります。今回で5回目なのですが、時間帯や来てくれる方々の流れもしっかり見ながら、引き出しフル稼働でやりますので、ぜひ1杯やりにきてください。
INFORMATION
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DJ TAISHI IWAMI 12 HOURS SET
日程:7月11日(土)
時間:19時~7時
会場:笹塚ZOOKID
チャージ: 1000円





