UPDATE : 2023.10.11

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#ART & CULTURE

-Gravure freak- 渡辺万美と考える愛すべき日本のカルチャー"グラビア"<vol.00>渡辺万美

Photo :Takao_okb

Text:Ryo Tajima

グラビアアイドル、ジェンダーフリーブランド『Bushy Park(ブッシー・パーク)』を手掛ける渡辺万美さん。海外の『PLAYBOY』のプレイメイトでもあり世界的な活動を続けている。同時にグラビアをアートとして表現する『SCRATCH GIRLS(スクラッチガールズ)』というプロジェクトをプロデュースしている。

 

 

そんな渡辺万美さんによるグラビア連載“グラビア・フリーク”がスタートするわけだが、今回はそのイントロダクションとして、渡辺万美さんが現在のグラビアカルチャーに対してどう考え、何を表現したいのかをインタビューしていく!

グラビアアイドルをアートにする“SCRATCH GIRLS”

ーまずは、万美さんが『グラビアアイドル』という日本独自のカルチャーを広めていこうと考えるようになった経緯を教えていただけますか?

 

 

渡辺万美(以下、万美):私は1989年生まれで17歳のときからグラビア活動をしてきました。当時はまだ地下アイドルなどの文化ができる前の時代で、グラビアアイドルの勢いがすごかったんです。それこそ私も所属していたサンズエンターテインメントのタレントはテレビや映画のなど業界でも最前線で活躍していました。そんな時代に、私はグラビアアイドルという存在があることをお仕事を通して学んでいったんです。ヌードではなく水着を着てビーチで撮影するという存在があって、そのお仕事は私にとってすごく楽しくて刺激的なものだったんですよ。

 

ー00年代の当時、小池栄子さんやMEGUMIさんといった方々を毎日のようにテレビ番組で拝見させていただいてように思います。

 

万美:はい。それがアイドルのカルチャーが広まり、彼女たちの人気が高まっていくにつれて、グラビアアイドルと呼ばれていた人たちがよそに追いやられるようになってきたと私は感じているんですね。例えば、雑誌への露出が他のアイドルたちとの争奪戦状態になっていたり、具体的に言ってしまえばギャランティが以前と比べものにならないくらい下がってしまったり。それがとてもショッキングだったんです。

ー外側から見ていると、グラビアのシーンの実情がそういう状況であったなんて知りませんでした。

 

 

万美:人気がない子はすぐに仕事がなくなってしまうし、人気があってもそれほどビジネスとして成功できないという状況がグラビア界にあるんです。中には無職状態になってしまう子もいるんですけど、彼女たちは高校生の頃から就職もせずにグラビアアイドルという仕事をやってきたわけなので、パッと他の職種に転身するのも難しいんですよね。実際に私の周りにも生活をするためにメンタルが病んでしまった子もいました。そんなときに、私にできることは何だろう?  グラビアアイドルのみんなが自分の仕事に誇りを持って胸を張れる場所が作りたい、と20代後半から考えるようになったんです。そこで周りにいるクリエイターやいろんな人に相談して行き着いたのが『SCRATCH GIRLS(スクラッチガールズ)』なんですよ。

ー後輩のグラビアアイドルたちのためにも、文化としてグラビアに注目が集まってほしいと考えてのプロジェクトが『SCRATCH GIRLS』なんですね。

 

 

万美:そうですね。私の中で肌を露出させるという行為にはエロティシズムから生まれるアート性があると考えているんです。それで、ずいぶん前からグラビアアイドルをアート作品に昇華できないかなと考えていて、1年半くらい試行錯誤して今の形になりました。

 

 

ー何か『SCRATCH GIRLS』のインスパイア源になったものはあったりするんですか?

 

万美:以前、『妄撮』っていう作りがユニークな写真集があったんですよ。1ページめは服を着ているんだけど、めくっていくうちに服の部分が破れて水着になったりしていくっていう仕掛けがあって、買った人だけが水着姿が見れるというものだったんですね。そこに着想を得て現代アートギャラリーのDRELLA(ドレラ)と一緒に制作していきました。グラビアはアートだよ、ということを証明できる場になるようにと思って。

このままではグラビアアイドルが死語になっちゃう

ーそこにはグラビアアイドルの地位を高めていきたいという思いもあるんですか?

 

 

万美:はい。これも20代後半の頃から考えているんですけど、グラビアアイドルという職業をカッコよく、憧れられるものにしていきたいと思っているんです。グラビアアイドルってどうしても芸能界に入ってきた若い子が知名度向上のために“やらされるもの”だって印象があるんですけど、そうではなくて、自分からグラビアアイドルになりたいと世間的に思われるものにしていきたいんですよね。そうでないとグラビアアイドルたちはどんどん端に追いやられてしまうし、出番がどんどんなくなってしまうんじゃないかと思うんです。

ーアイドルや俳優も水着で撮影する時代の中で、グラビアアイドルというジャンル自体が消えてしまうのではないかという危惧が万美さんにあるわけですね?

 

 

万美:そう、グラビアアイドルという言葉がなくなりつつあると思うし、今やっている子も胸張って「私はグラビアアイドルです」って言える子は少ないんじゃないかなと思いますね。もしかしたら今、20代の男の子たちはグラビア雑誌を読まずに大人になっているかもしれないですし、そもそも知らないかもしれないじゃないですか。そうなってくると、グラビアアイドルが死語になっていきているとも考えられえるわけなんです。でも、私は自分の身体を見せることはカッコイイことだし、アート性があるんだってことを強く伝えていきたいですし、それが自分の使命なんじゃないかと思うんです。

プレイメイトになって気づいた露出とアートの関係

ー例えば、昔のピンナップガールのポスターはアートですし、『RICHARDSON(リチャードソン)』などはポルノをアートやファッションとして表現していますよね。万美さんのやろうとしていることは、そこに近しい部分があるんじゃないでしょうか?

 

 

万美:まさにそうですね。露出する行為=アート足りうると確信を持つようになったのが、海外の『PLAYBOY』のプレイメイトに就任してからなんですよ。プレイボーイのポスターってヌードであってもアートとして部屋やオフィスに飾る人が多いですよね、特に海外では。でも、日本ではその感覚がない。むしろ隠さなくてはいけないものと考えている人もいる。そこに目が向くようになったんです。

ーなるほど。そういった流れを経てグラビアをアートに昇華していく計画を具体的に進めることにしたんですね。今回、FREAK MAG.では万美さんの連載がスタートするわけですが、どんな連載になっていきそうか概要を教えていただけますか?

 

 

万美:グラビアアイドルたちをアートにするというテーマのもと、現役で活動している子たちと対談したりしていきたいですね。もしかしたら、彼女たちのお悩み相談室的なものになるのかもしれません。そこで実際にどういう風に考えているのか、という本心を聞きつつ、世間の人にはグラビアアイドルたちがどういう考えでどんな活動をしているのかを連載を通して伝えていきたいですね。その中で、もしかしたら『SCRATCH GIRLS』になる子も出てくるかもしれません。私としては楽しみながら今の子たちとお話しつつ、グラビアアイドルの可能性を探っていきたいと考えています。

 

 

ーありがとうございます。今後の展開を楽しみにしています!

PROFILE

  • 渡辺 万美

    ジェンダーフリーブランド『Bushy Park(ブッシー・パーク)』ディレクター。

    『SCRATCH GIRLS(スクラッチガールズ)』プロデューサー。ジュエリーブランド『Muff(マフ)』デザイナー。

    グラビアを軸にファッションやアートと幅広く活動中。

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