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UPDATE : 2022.07.25

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#ART & CULTURE

“有用性” を捨てよ、“無駄” の旅に出よう。
発明家・藤原 麻里菜が見つめる『無駄づくり』の真髄とは

Photo : Kae Homma

Hairmake : Narumi Tsukuba
Edit : Nozomu Miura
Planning : Takazumi Chiba

「無駄」って、一体、なんなんだろう。

僕らを長年脅かしつづけるあの感染症は、世の中の “通勤” をほんの少し「無駄なもの」としてしまったような。
上司が言う『それって、無駄じゃない?』といった言葉には、心がほんのりズキンとくる。

「効率化」を追い求めるあまり、僕らはいつも「無駄」を避けながら暮らしているような気も。
朝、布団のなかでつぶやく「あと5分だけ……」は、はたして無駄なのか……?
「無駄」って、ネガティブなことなんだろうか……。

『無駄は、有用性からの解放なんです』と話してくれた彼女が見つめる、「無駄」の美しさについて考えてみよう。

有用性という言葉を捨て、精神を解放しろ

ー藤原さん、今日はよろしくお願いします。楽しいお話が聞けそうな気がして、今日までずっとワクワクしていました。

 

藤原:よろしくお願いします。

 

ーまずは、藤原さんが『無駄づくり』をテーマに発明をしようと思ったきっかけを。

 

藤原:ものをつくること、工作がもともと好きだったんです。発明を始めた当初は、「ルーブゴールドバーグマシーン(いわゆるピタゴラスイッチのようなもの)」をつくるところからはじめてみました。ただ、出来上がったものは、あまり「成功」とは言えないような出来栄えで。それを「失敗」と呼ばず、どうにか「成功」と呼べないかと考えた結果、「無駄づくり」という言葉が生まれたんです。そう呼べば、失敗だって面白いから。

 

 

ー「無駄づくり」という言葉のおかげで、「無駄」が肯定され得る。ポジティブな取り組みなんだなぁと感じます。語句自体のイメージから、どうしてもネガティブなムードを感じてしまっていて。効率効率……とせかせか動いていく世の中に、若干の疑問を持ってしまうというか。

 

藤原:無駄づくりの「無駄」というのは、有用性からの解放なんです。プリンストン高等研究所の設立に関わった科学者であるエイブラハム・フレクスナーのエッセイに『有用性という言葉を捨て、精神を解放しろ』という一節があって。私はこれがすごく好きなんですよね。この精神があるからこそ、新しいものは生まれるし、生活を豊かにするものが生まれると考えています。

無意味なもの、無意味な時間にこそ、豊かな魅力があるのかもしれない

ー有用性。効率。パキパキとした暮らしのなかに、ある種の “余白” をもたらしてくれるような気がしますね。『無駄づくり』って。

 

藤原:本当にそう思います。私は麻里菜という名前なのですが、小学生のときに学校の宿題で「親に自分の名前の意味を聞く」というものがあったんです。いざ家に帰って、親に私の名前の意味を聞いてみたら、『別に意味なんてないよ』と言われて。そのとき、「あっ意味なんてなくていいんだ」と思ったんですよね。心がちょっと楽になったような気がして。そこから、無意味なもの、無意味な時間などに価値を感じて、愛するようになりました。

ーうんうん。すっごく美しい話ですね。意味があることだけがすべてじゃない。きっと、新型コロナウイルスの流行から「働くことの意味」のようなものを考える人が増えたんじゃないかと思うんです。藤原さんは、そういった思いを抱くことはありますか?

 

藤原:仕事、働くことって、一日の大きな時間を過ごす部分じゃないですか。きっとそれによって「自分の価値」のようなものがハッキリと決められてしまう気がするけれど、実はそんなこと、ないと思います。自分の仕事に対してポジティブな気持ちになれなくても、そう思えなくても、他の時間で自分のアイディアと共に生きられれば、それによって人生は楽しいほうに向かっていくのかな、って。

これからつくってみたいものは、ないです。その時々に感じたものをつくりたい

ー自分のアイディアと共に生きる。それが有用的であっても、そうでなくても。藤原さんは、いつも未来を見据えてアイディアを膨らませているのでしょうか? これから作ってみたいものや、こんなものを発明できたらいいなぁと感じるものなど、ありますか?

 

藤原:ないです。

 

ー正直なことを言うと、その言葉を待っていました(笑)。

 

藤原:「昨日思ったものを今日つくる」がモットーなんですよね。

 

ーこれは決めつけかもしれないけれど、これまでつくってきたものたちのなかに、「思い入れのある発明品」というのも無いんじゃないかなぁと思います。

 

藤原:まさに。ごめんなさい、特にないです。

ーいいなぁ。その時々に思い浮かべたものをつくること。「再来週にはこんな無駄をつくろう!」って、ないですもんね。たとえば、ファッションについてはどうですか? 「こんな服を着よう」だったり「こんな服を着ていたいな」だったり。

 

藤原:考えることが面倒なので、正直、あまりファッションを楽しまないタイプなんです。ただ、きれいな色をした服を着ている人が周りにいると楽しくなるので、みんなにはファッションを楽しんでもらいたいなと思っています。その意味では、ファッションは「無駄」じゃないはず。楽しいことだなぁと感じますよ。

 

ー藤原さんにお話をうかがえて、すごくよかったです。今日はありがとうございました。

 

藤原:ありがとうございました。

PROFILE

  • 藤原麻里奈

    1993年生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家。
    株式会社 無駄 代表取締役。

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