Freadaディレクターの小笠原希帆が世の中のあれやこれやに独自の視点で物申していく「小笠原希帆の”お言葉ですが!”」。第二回は、「言葉遣い」をテーマに、日常や仕事で「あ〜!気になる〜!」と感じた言葉遣いについて、同じく“気になる仲間”で親交の深い『Swell vintage (スウェルヴィンテージ)』のオーナー・山本めぐみさん(めぐさん)とともに白熱トーク!
前編では『店員さんの気になる言葉遣い』について盛り上がったお二人ですが、後編では『時代と共に変化する言葉』について深い考察が繰り広げられております。
言葉のカジュアル化はマックならOK?エルメスはどう?
(小笠原希帆:以下、小笠原)「言葉を正しく使う意識って、お店のカジュアルさにもよるのかな。例えばマックならカジュアルな日本語でも許す?」
(山本めぐみ:以下、めぐ)「マックもだめ。プロ意識にかけると思うから」
(小笠原)「エルメスでも『1万円からお預かりします』って言うのかな?」
(めぐ)「言われたことないかも。ハイブランドの店舗で買い物する時にその違和感はないもん」
(小笠原)「教育が徹底されてそうではあるよね。メグさんの前職はどんな感じだった?」
(めぐ)「受付はアパレルと違って商品がないから、より言葉遣いが大切になってくるんだよね。売り物があったら、例えば服を買うとか、ご飯を食べるっていう行為でお客様は満たされるじゃない。でも受付はスタッフとお客様の間に挟むものがないから、言葉遣いがよりその人と会社の印象として残っちゃって、クレームに繋がりやすかった。だから定期的に研修をしてたんだよね」
(小笠原)「それってどんなふうに研修してたの?」
(めぐ)「実際にその場に例えて、ロールプレイング形式の研修をしてたよ。クレームに対してどう対応するかを、実際に受付役とお客様役に分かれて実演して、それをみんなで見てディスカッションをして…って感じで、リアルな現場を想定して理解を深めてたかな」
(小笠原)「なるほどね。やっぱり定期的に研修して言葉遣いのズレを修正していくのは大事なのかも」
“サイズ感・丈感・金額感”、“しわをのばしてあげる”。アパレルの接客独特の言い回し
(小笠原)「『サイズ感・丈感・金額感の“感”の使い方に違和感があります』って意見もあったよ」
(めぐ)「アパレルの人は使いがちだよね。多用してるから目につくのかな?」
(小笠原)「“〜感”ってふわっとさせるんじゃなくて、もっと断定して欲しいのかもしれないね」
(めぐ)「あとは洋服に対して“〇〇してあげる”って使い方が気になるって人がいるよね。私は言っちゃうけど」
(小笠原)「言っちゃう!“しわをのばしてあげる”とか、“袖をまくってあげる”とかね。あと商品に対して“この子”って言うことを嫌がる人もいるよね。洋服に対して愛がある表現だから、私は許容範囲だと思うけどな」
(めぐ)「正しく使われていないことを指摘する人と、単純に言葉の響きが嫌って人がいるよね。それでいうと“いただいて”の連呼が嫌だって意見も。接客してるときに、『試着室に入っていただいて、お履き物を脱いでいただいて…』っていう敬語の重複が気になるみたい。気持ちはわかるけど、こちらとしても言わざるを得ないというか」
(小笠原)「『試着室に入ってください。お履き物を脱いでください』だとちょっと冷たい感じがするよね」
(めぐ)「そうそう。あとは前の会社で『お休みをいただいております』って表現が間違ってるんじゃないかって議論になったことがあるんだよね」
(小笠原)「休暇って取引先の許可をもらって休んでるわけじゃないから間違ってるのかな(※6)。でもそれが日本語の美しいところでもあると思うけど」
(めぐ)「うん。そのほうが相手に不快感を与えないだろうっていうその人の気遣いだもんね」
老若男女が使うようになった“ワンチャン”。言葉は時代とともに変化するよね
(小笠原)「“ご遠慮ください”って日本語に違和感があるって人もいたね。この前SNSで、“ご遠慮ください”、“お控えください”って類の注意書きに対して、『“ご遠慮ください”、はできるだけしないでくれたらありがたいくらいの意味で絶対だめだと思っていませんでした』っていう意見(※ 7)を見たんだよ」
(めぐ)「えー!面白い(笑)。ひと昔前はそんな解釈聞いたことなかったけど、本当に言葉って時代とともに変わっていくんだね。これからはちゃんと“禁止”って書かなきゃいけない時代になっていくのかな」
(小笠原)「それでいうと、私は“ワンチャン”ってすごく使うんだけど、かなり浸透したよね?ワンチャンスの略で、“もしかしたら、ひょっとしたら”って意味なんだけど。可能性があるかもしれない場面でよく使っちゃう」
(めぐ)「うん。うちの息子も使ってる。最初は意味がわからなくて、『それってどういう意味?どういうときに使うの?』って聞いたら『“ワンチャン”は”ワンチャン”だよ』って教えてくれなかった(笑)。もう浸透しすぎて、使い方を説明することすらできないみたい」
(小笠原)「私の知り合いの60代の人にも通じたもん。かなり浸透してる。でも私たちってさ、テキストで“ワンチャン”って使わないよね。SNSでも書いたりしないし」
(めぐ)「話し言葉と書き言葉は分けてるよね。“すいません”って話すけど、“すみません”じゃなくて“すいません”って書かれるのは気になっちゃうみたいな」
(小笠原)「LINEで話し言葉をそのまま使うのはどう?“ワンチャン”ってLINEでは言っちゃうよね」
(めぐ)「たしかに。LINEは話し言葉に近いものを使っちゃうかも。昔はメールが基本だったけど、いまは会社でもチャットツールが使われてるから、言葉遣いが変化してきたのかもね。いま思ったけど、もし希帆にメールを送るとしたら、“お世話になっております”って絶対入れちゃう。どんなに仲が良くても、入れないとメールとしておかしいなって思うから。LINEでは逆に入れるのがおかしいと思うから書かないな」
(小笠原)「そうだね。メールだと別のスイッチが入るのかもしれない」
“台風一過”って台風の家族のことだと思ってた(笑)。誰にだってある!言葉の勘違い
(小笠原)「『“少々お待ちください”を指摘されてから“少しお待ちください”って言うようにしてる』って意見もあって。間違ってはないと思うんだけど、指摘されると気になっちゃう言葉もあるよね。それで正しい言葉遣いを調べたりとか」
(めぐ)「いまテレビでも正しい使い方を取り上げる番組が多いよね。たとえば“敷居が高い”って言葉は、いまでは“高級すぎて入れない”って意味で格が高いものに対して使うけど、本来は“不義理や面目のないことがあって、その人の家に行きにくい”って意味らしい(※8)。指摘されなかったら間違って使い続けてる人も多いと思う」
(小笠原)「それでいうと“役不足”も同じように意味が間違って使われてるのをよく聞く。例えば『この仕事は私には“役不足”です』って言ったとしたら、『自分の“力不足”です』っていう意味で使ってる人が多いんだよね。正しくは“与えられた役目に満足しないこと、その人の力量に対して、役目が不相応に軽いこと”(※9)って意味だから本当は逆なんだよ」
(めぐ)「わたしも小さい頃、“台風一過”って台風の家族のことだと思ってて(笑)。高校生のときに初めて言葉の意味を知ったんだよね。誰でも意味がわからないまま使い続けちゃう言葉ってあるんだよね。だから指摘されることも大事だし、自分で怪しいなって思ったら調べるのも大事だね」
良い接客を“褒める”行動が日本の未来を救うかも?
(小笠原)「ここまで言葉遣いについて話しておいてあれなんだけど、接客って結局はセンスなんだよね。変な日本語を使っても印象が悪くない人っているから」
(めぐ)「接客での間合いの取り方とか、空気の読み方とか、センスでこなしちゃう人っているよね。でも、センスはなくても努力でカバーできることもたくさんあると思う。正しい日本語を覚えたりすることって、勉強するっていう努力だから」
(小笠原)「そうだね。正しい日本語が使えるに越したことはないもん。0円で買える素養だしね」
(めぐ)「私、すごいなって思うスタッフさんがいたら、ちゃんと名前を見て店長に伝えてるんだよね。『あの子めちゃくちゃいいですね。最高ですね。良い教育をしてますね』って。そうしないと努力してる人が埋もれちゃうと思うから」
(小笠原)「すごい!めぐさんの行動が日本のレベルの底上げに繋がってる可能性あるよ。どんどんやったほうが良いと思う。褒められたスタッフさんももっと頑張ろうって思えるし、周りの人への刺激にもなるよね」
(めぐ)「絶対やったほうが良いよ。良いことって意外とネットの口コミとかで出てこないものだから」
(小笠原)「若い世代には褒めて伸びる人も多いと思うから、その方法はいまの時代に合ってるかもね」
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小笠原希帆の"お言葉ですが!"