クリエイティブディレクター/アートディレクター/グラフィックデザイナーとして、音楽やファッションなどさまざまな分野で活躍する2BOYが、今話したい人物を訪れる対談企画「2BOYのくりえいてぃぶ研究所」。
今回は花柄毛布を使った造形が注目を集めているアーティスト・江頭誠とともに、お互いのルーツやアートの魅力を語り合う。
かねてから江頭のファンで彼の作品も所有している2BOY。江頭も作品の購入者との対談は初めてとのことで、フレッシュかつ濃厚な内容に。
――これまでは2BOYさんが面識のある方、一緒に仕事をしたことのある方に出ていただいていましたが、今回なぜ直接は面識のない江頭さんにオファーしたのですか?
2BOY:僕が江頭さんを知ったのは2022年でした。江頭さんが、GUCCIのショートフィルム『Kaguya by GUCCI』の装飾を手掛けられていた時ですね。花柄の毛布に覆われた部屋一面に感激して、それから江頭さんの活動を追いかけるようになり、先日の展示会でポメラニアンを毛布に包んだ作品を購入したんです。
江頭:売れたことは知っていたんですけど、まさか対談というかたちで購入していただいた方に会えるとは。とても嬉しいです。
2BOY:だから、江頭さんのルーツから聞いていきたいなと。そもそもアートというものを意識し出したのはいつ頃ですか?
江頭:幼少期は小児喘息であまり外で遊べなくて、幼稚園でもみんながグラウンドに出ているのに、僕は教室にいたんですね。その頃から絵を描き始るようになって、そしたら大人がみんな褒めてくれるので楽しくなっちゃってみたいな(笑)
2BOY:そこからどういう経緯で、毛布で物を包むという今のスタイルになっていったんですか?
江頭:高校生くらいのときに美術家になりたいと思うようになって美大に入りました。そこでは彫刻や造形を専攻していました。基本的には木を彫ったり鉄を溶接したり、でも自分はちょっとひねくれていて、みんなとは違う方向を見たいと思うタイプだったんですよね。みかんの皮やラテックスを使ったり、IKEAの机を掘ったりとかしているうちに、最終的に花柄の毛布に辿り着いたんです。
2BOY:なぜ花柄の毛布だったんですか?
江頭:三重の田舎から大学進学を機に上京して、最初は部屋に友達が来ることを想定して、インテリアに気合が入るわけですよ。そこでいろいろやってたんですけど、実際に友達が遊びに来た時に、母からもらった花柄の毛布を使ったベッドメイキングを見て、「それ、ちょっとダサくない?」って言われて。僕はダサいとも思ってないし、でもそこまでかわいいとも思ってないし、母親からもらった物をいじられたモヤモヤもあるし、っていう妙な気持ちの引っかかりがずっとあったので、昇華するために大学の卒業制作で使いました。
2BOY:そのスタイルで生活していけるようになった流れも知りたいです。
江頭:昔より収入の占めるアートの割合は大きくなってきていますけど、まだまだですよ。最初は美術家になろうと上京したものの、いつのことだったか、大学を出たらアートをやらず就職するって決めたんです。けっこう周りの人に影響されやすいから、そういうものなんだろうなって。
2BOY:人に影響されなかった大学時代の制作に対する姿勢や、毛布を選んだ経緯とは逆なんですね。
江頭:影響されやすい自覚があるから、抗うときは抗うみたいな。大学卒業後の進路については素直に影響されたというか、多数の流れに乗ったというか。でも就職活動は一発でうまくいかなくて1年間バイトして、そのあと東北沢駅に近い井の頭通り添いにあるアンティークの家具を扱う山本商店で職人として4年間務めました。山本商店は音楽をやってたり、漫画を描いていたりする人もいて、サブカルチャー色が強かったんです。その人たちに背中を押してもらって、アートコンペに参加したり、そこで賞を獲ったり、ということがあって30歳手前でアートの道で生きていこうと決めました。とはいえ、すぐにそれだけで食べられるわけではないので、美術の予備校や高校で、講師をしながらちょっとずつ自分の作品の制作に使う時間が増えていったっていう感じですね。2BOYさんはどうですか?
2BOY:僕は、今に至る前に勤めていたアパレルの仕事が嫌だったとかではないんですけど、そこにずっといる自分が想像できなくて、29歳と11カ月で当時の会社の社長に話して、今の仕事に踏み入れました。30歳手前って、なんかあるんですかね。
江頭:僕も山本商店を辞めたのは30歳になる前だったので、なんかわかります。僕もすごく悩んでましたね。そこからは、どんな感じでした?
2BOY:一言でいうと、運良くここまでこれたなって。ほんとうに人に恵まれているんだと思います。
江頭:僕も、ほんとうに人に恵まれていて、運だけで生きてきたくらいに思っています(笑)
2BOY:運オンリーってことはないでしょ(笑)
江頭:もちろん、自分でやってきたっていう自負もありますけど、運の要素が強いと感じているいるということは、それだけ人に感謝できているのかなって。そういう意味でも運だと思うって大切だなって。
2BOY:その考え方いいですね。僕も今度、運について聞かれたらそう言います(笑)。
――お二人の作品を作るにあたってのインスピレーションは?
2BOY:僕は街で目にするものや出会う人とのコミュニケーションなど、生活のなかで起こることですね。
江頭:僕も近いかもしれないです。散歩していて気になったものを写真に撮るとか、あとはリサイクルショップ巡りが好きで、なかでも有名なチェーン店とかではなくて、ちょっと人が入りにくいような店が好きで。対象はあやしければあやしいほど、どうでもいいものであればあるほどいいんですよね。道路に落ちてる軍手とか気になるし、リサイクルショップでも、使っていた人の名前が書いてあるゲームカセットとか買っちゃうんです。毛布もそうですよね。価値がないわけではないけど友達はダサいと言いましたし、人が見てないところにこそ新しい何かがあるっていうか。
2BOY:そんな感じで、僕が生活のなかで刺激を受けるものに対する感受性の根底には何があるのかと考えると、漫画とファッションと音楽なんですね。江頭さんはどうですか?
江頭:僕も漫画は大きいですね。幼稚園の頃から水木しげるさんが好きで、当時はそれが水木さんの作品だって知らないし、字も読めないんですけど、めちゃくちゃハマったんです。あの薄気味悪い感じというか、ただの森の絵なんですけど、なんかありそうな気配が漂っている感じ。水木さんの描く妖怪もそうですよね。あの独特の気配みたいなものは、僕の根底にあると思います。人が使っていた毛布も、リサイクルショップで目にする商品も、スピリチュアルじゃないですけど、何かが宿っている感じするじゃないですか。
2BOY:わかります。その気配をかたちにしていく作業ってどんな感じなんですか?包むモチーフの決め方とか。オファーを受けて作る作品もあれば、自発的に作る作品もあると思うんですけど。
江頭:どこかに出展するあてもなく作ることもありますし、グループ展だとそれらのストックの中から選ぶこともありますけど、基本的にはその展示会の内容や会場からイメージして作っていきますね。例えば、銀座の蔦屋書店で展示した時は、蔦屋の中にスターバックスがあって、そこに盆栽があるなんて田舎の僕には考えられないわけですよ。「東京ってすげえな」と思って、これはもう盆栽しかないなと。
2BOY:ちょっとレトロなものや、動物や霊柩車もそうですけど、ずっとそこにあるもの、懐かしいと感じるものが多いですよね。例えば黒電話を包んだとしても、iPhoneを包んでいるイメージは湧かないないというか。
江頭:自分がどういう人間かを掘り下げる作業から始めるから、レトロになっていくのかなと。当時、自分と社会がどう繋がっていたのかとか、昔好きだったものって実は情報操作に踊らされていただけなんじゃないかとか、そういうことが起点になっているので。あとは、先にも言いましたが、みんなが今は見ていないような何かが好きだと、結果的にそうなってくるのかなと。だから10年後にはiPnoneを包んでいるのかもしれないですね。
2BOY:商業的な仕事や相手の要望ありきのクライアントワークと、ご自身の作家性とのバランスいうことについてはどうですか?消費されることへの抵抗というか、言葉が難しいですけど、そういうことって感じます?
江頭:何をもって消費かって、難しいですよね。過去にやったことと同じような感じを求められると、自分は新しいことがやりたいから悩むとか。
2BOY:僕は自分のことを商業クリエイターだと思っているので、過去の踏襲を求められるならぜんぜんやりますけど、ちょっと抗いたい気持ちもありますし。少なくても、あくまでそれは過去に起こったことで、今の空気感は大事にしてうまく落とし込みたいと思っています。
江頭:そういうベクトルだからこそ、自分だけではできなかった新鮮味が生まれることもありますよね。
2BOY:ありますね。
江頭:とか、いろいろ考えますけど、僕は、友達にダサいと言われた毛布がGUCCIのファンの方々の目に触れるとか、自分の気持ちが昇華されている気がしてハッピーな気分になりますし、アパレルブランドや企業の施策やイベントによって、ふだん美術観やギャラリーに行かない人がアートに触れられるいい機会があるのはいいことだと思います。そうやっていろんなことに見てもらえて、展示会だけではなくミュージックビデオに参加させてもらうようになったり、いろんなジャンルのいろんな方に出会えることも嬉しいですし。シンプルに言うならば、誰かに求められることが嬉しいので全力でやりたい。
2BOY:今後やってみたいこととか、包んでみたいものとなると、どうですか?
江頭:子供に楽しんでもらいたいんですよね。
2BOY:知育とかそういうことですか?
江頭:僕が知育できるのかはわからないですけど(笑)、それこそ教育番組のセットとか毛布のマスコットとか。あと、さっきの気配の話ともつながるんですけど、毛布でお化け屋敷を作りたいんです。毛布でお化けを作るんじゃなくて、道端に落ちてるタオルとか軍手とか、濡れたぬいぐるみとか、布とか布製のものって、ギョッとするじゃないですか。
2BOY:確かに、おもしろそうですね。あと、僕は江頭さんの作品を見ると、触りたくなる。
江頭:大人も子供も自由に、触ってもらいたいし、ぐちゃぐちゃになるまで遊んでもらいたいです。美術館やギャラリーだと制限はありますからね。
2BOY:誰もが知ってる毛布の感触が、作品になるとどんな感触なのか、興味あるじゃないですか。そういう手触りも含めて、オリジナルの毛布を作ろうとは思わないんですか?
江頭:作品ありきの毛布、となるとどうなんだろう。最初にダサいと言われた花柄毛布、そこの根本を変えちゃうと違うのかなって。でも、昔ながらの花柄毛布って徐々に減ってきてるんですよね。あの重さとか、やっぱりいいじゃないですか。
2BOY:昔の寝具って重かったですよね。今は軽くて当たり前だから。
江頭:重い毛布や布団って、安心感ありますよね。
2BOY:わかります。そういう、減ってきているものを自分で減らしていくっていう、刹那とか寂寥感みたいなものってあります?
江頭:やっていくうちに愛が芽生えてきて、毛布を切れなくなったり、保存し始めたりするようになりましたね。遺影じゃないですけど、自分が使った毛布を集めたブックも作りました。あとは、毛布を送ってくださいって募集したんですけど、集まった毛布から花を1輪分切り取って、返礼品にしようかと思っています。
――2BOYさん的に今後包んでもらいたいものあります?
2BOY:こうなったら家とか街とか、めっちゃ大きなもの。空気とかそういう、もはや物体ではない概念みたいな、実現性は一旦置いといて、想像するだけでも無限に出てくる可能性がある表現っていうとちょっと評価目線になりますけど、そういうところもまた魅力なのかなと。
江頭:こうやって話をしているなかで生まれることって、たくさんあるのでそう言ってもらえて嬉しいです。
2BOY:こういう会話もそうですし、最初の話に戻っちゃいますけど、街を歩いているときとか、ザッピングしていて目に入った情報とか、そういうところから得られた何かと何かをコラージュするとか掛け合わせるとか、おもしろいですよね。
江頭:ザッピングってもうあまり言わないじゃないですか。テレビも観られなくなってるし。最適化された情報がベースになっているから、生活に偶然性とかノイズみたいなものが減ってきている。文明の発展によって無駄になったように思えることって、大事にしたいですよね。
――江頭さんの作品は、木彫りの熊でも霊柩車でも部屋でも、用途が決まっているものや日常で特に気にも留めなくなった何かを包むことで新たな動き、物語が生まれるような感じがするんですよね。2BOYさんの仕事も、例えばミュージシャンの作品のジャケットだと、それによって曲の魅力が補強されたり、それを目にすることで新しい想像や解釈のきっかけになったり。そこは角度は違えど、お二人の共通する部分なのかなと、思います。
2BOY:僕はゼロイチではなく、誰かに相談されたことに対して、アイデアを出したりビジュアライズしたりすることは得意なんで、そうなっていたら嬉しいですね。
江頭:ゼロイチということで言えば、僕もまったく白紙の紙に絵を描くのは苦手なんですよね。なにか前提があって乗るほうがやりやすい。毛布で包むっていうのも、毛布と包む対象があるからなので、そういう意味では似てるのかな?
2BOY:近いところはある気がします。僕の場合は依頼してくださった方の想いありきで、音楽作品だったら、曲は見えないからそれを視覚としてイメージしいきます。そこに経緯やコンセプトはありますけど、それをわかってほしいとは思わなくて、聴いてくれた人の日々がちょっと豊かになればいいかなって思ってるんですけど、江頭さんはどうですか?
江頭:素敵ですね。僕も作品に対して、聞かれたら答えられる自分の言葉やコンセプトは持ってるんですけど、作品の見え方を限定したくはなくて、ちょっと言葉で補足することはありますけど、軽い道案内程度で解釈は触れてくださった方に委ねたいんです。そしてその人が何を思ったのか、話を聞くほうが、自分の作品を語るよりも好きですね。
2BOY:こうして話していると、一緒にリサイクルショップ行きたくなってきました。
江頭:お互いのことを想って商品を買うとかどうですか?買わなくても道中の小石とかでもいいんですけど、相手のことを考えてプレゼント交換みたいなことをして、それをもとに作品を作るみたいな。頭で誰かのことを考える時間があるって、いいじゃないですか。
2BOY:何にしようか溢れすぎて迷う気がします(笑)
――実現したら記事にさせてください!今日はありがとうございました。
江頭:自分の作品を買ってくださった方との対談、楽しかったです。
2BOY:こちらこそ、ありがとうございました。
PROFILE
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江頭誠
戦後の日本で独自に普及してきた花柄の毛布を主な作品素材として、立体作品やインスタレーションを手掛ける。
2015年に発泡スチロール製の霊柩車を毛布で装飾した「神宮寺宮型八棟造」で「第 18 回岡本太郎現代芸術賞」特別賞を受賞。その翌年、毛布で洋式トイレをつくった「お花畑」で「SICF17」のグランプリを受賞する。
主な展覧会に「六本木アートナイト 2023」埼玉近代美術館で個展を開催など。
展示以外にアーティスト YUKI の「My lovely ghost」の MV や GUCCI のショートフィルム「Kaguya by Gucci」にアートワークで参加、2025年に東京ガールズコレクションにも参加。





