UPDATE : 2026.07.17

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#LIFE STYLE

TJPW FREAK!! vol.01 二度目の満開を迎える場所。上福ゆきと東京女子プロレスが貫く “嘘のない美学”

Photo:Daichi Fukawa

Text:Nozomu Miura

FREAK MAG.が東京女子プロレスとタッグを組んでお届けする新連載『TJPW FREAK!!』。記念すべき第1回に登場するのは、唯一無二のオーラを放つレスラー・上福ゆき。

 

ミスコンを経てレースクイーンやモデルとして活動しながらも、どこか満たされない日々を過ごしていた彼女がたどり着いたのは、まったくの異世界であった「プロレス」のリングだったという。

 

今年12月、人気絶頂のさなかに、彼女はリングを降りることを発表した。なぜ、このタイミングで自ら幕を下ろすのか。そして、彼女が愛した “二度目の満開” を咲かせる場所・東京女子プロレスとは、一体どんな場所なのか。上福ゆきがこれまで歩んできた道のりと、リングで貫いてきた美学を紐解けば、そこには彼女が選び取ってきた「嘘のない生き方」のヒントが、きっと見えてくるはずだ。

“港区女子” から、プロレスラーへ。まったくの未経験から飛び込んだ世界

ーー 今日はよろしくお願いします。上福さんは、まったくプロレスをご存知なかった状態から業界に入られたとのことですが、そもそもどういった道のりを経てデビューに至ったのでしょうか?

 

上福:ちょっと複雑なので、順を追って話しますね。19歳の頃、都内で一人暮らしを始めて、大学のミスコンをきっかけに芸能界に入りました。それからはレースクイーンなどをやっていたんですが、正直パッとしなくて。当時の言葉で言うと “港区女子” のような、テキトーに六本木で遊んでタクシー代をもらって帰る、みたいな生活をしていました。

 

そんな中、23歳になった頃、周りが結婚ラッシュを迎えて。ふと「誰にもロクにアドバイスすらできない人生でいいのか………?」と思ったんです。

ーー かなり焦りそうですよね。

 

上福:そうですね。「もっともっと仕事に一生懸命になりたいな」と思い、マネージャーに相談してみたんです。そうしたところ、「すごくエロい番組に挑戦するか、不動産か、髙木三四郎という面白い人に会うか」の三択を提示されて。“髙木三四郎” というのが、後に私が所属する『東京女子プロレス』を運営する会社の社長だったんです。

 

ーー 上福さんが選んだのは、三つ目の選択肢だった、と。

 

上福:高木さんに会って、気づいたらプロレスラーとしてデビューしていました。『前転やってみて』などと言われて、そのまんまスムーズに(笑)。プロレスの「プ」の字も知らない、そもそも自分の生活に「プロレス」が一切存在しない状態からのスタートでした。

ーー その状態で飛び込んでみて、もっとも驚いたことは何でしたか?

 

上福:まず、受け身をとる練習ですね。20代の女性がひっくり返って飛んで跳ねる姿なんて、普段見ないじゃないですか。みんな細いのに気合いが入っていて、「そこら辺の女より強いな……」とびっくりしました。私は群れるのが昔から好きではないので、女子団体でやっていけるか不安もありましたが、自分で人生を変えたいと思って勇気を振り絞りましたね。

挫折を知るからこそ、強い。「二度目の満開」を咲かせる場所

ーー 所属しているレスラーのみなさんは、入り口が三者三様だと伺いました。

 

上福:みんなそれぞれ、全然違います。社長のスカウトをきっかけに軽いノリで始めた子もいるし、中にはアイドルになりたかったけれどオーディションに落ち続けていたような子もいる。アイドルという路線ではなく「強い女の子」を表現する道を選んだり。頭がよくて見た目もきれいで、きっとそのまま就職して人生を進めていけたはずなのに、メンタルを落としていた時期にたまたま路上プロレスを見て「おもしろい」と思い、この業界に入ってきた先輩もいる。落ちていたときにプロレスに元気をもらったから、って。

ーー そんな『東京女子プロレス』を一言で表すとしたら、どうなるでしょうか。

 

上福:「二度目の満開」ですね。一度目の舞台で綺麗に花を咲かせられなかった奴らが、二度目を咲かせに来る場所。真っ直ぐそのまま成功した上で『東京女子プロレス』にいる人って、たぶんいないんです。みんな、一回は何かしらでダメになってから、入ってくる。だからこそ「二度目の満開」なのかなぁ、と。

ーー ご自身にとっても、そういう場所でしたか?

 

上福:私自身、『東京女子プロレス』に所属して良かったと思います。だって、しょうもないじゃないですか。ずっと六本木をフラフラしていたって。部活もやったことがなかったので、友達とはまた違う「仲間」というものを、ここで初めて知りました。

 

先輩・後輩の関係性も、感謝の気持ちも、全部この団体で学んだと思っていますし、生半可な気持ちで生きていない自分にやっと出会えた気がしています。

 

たとえば、四人で一つの試合をつくる。みんなで一つの興行を成功させる。先輩・後輩の関係性も、感謝の気持ちも、全部この団体で学んだと思っていますし、生半可な気持ちで生きていない自分にやっと出会えた気がしています。

ーー そんなメンバーが、『東京女子プロレス』にはいる、と。

 

上福:まさに。団体の魅力としては、中学生以下は無料、女性向けのレディースシートなども安く用意している点も挙げられますね。また、プロレスのイメージとしての「ドロドロした遺恨」のようなものもなくて。「KAWAII×DREAM×STRONG~明日が楽しみになるプロレス~」というコンセプトのもと、試合後はみんなハッピーな多幸感に包まれるような。そんなプロレス団体ですね。

エースではなく、“客寄せパンダ”でいい。自分だけの役割とは

ーー リングの上で、「上福ゆき」をどんな存在として見せたいと考えてこられましたか。

 

上福:プロレスラーっぽくないプロレスラーでいたい、というのはずっとぼんやり思っていました。あとは野球のようなチームスポーツと同じで、メンバーの一人ひとりに “役割” がある、とも思っていますね。うちはかわいい系やシンプルな子、マッチョな子が多くて、セクシー系がいなかったんです。であれば、そっちに振ってみよう、と。みんながアメリカの試合を目指しているなら、自分はアジアに行ってみよう、と。とにかく他のメンバーと被らないように、東京女子プロレスのバリエーションが常に増えるようにと意識してやってきました。

 

ーー エースになりたい、ではなく。

 

上福:正直私は、団体で一番じゃなくていいんです。トップの選手じゃなくていい。“客寄せパンダ” になれたらいいと思っていました。東京女子プロレスを別の角度から盛り上げて、自分で仕事を取ってこられる人になりたかったんですよね。

ーー 当時(以前のプロダクション所属時)は、ほとんど仕事がなかったと伺いました。

 

上福:そう、ぜんぜんなくて。当時のマネージャーに「仕事、全然ないじゃないですか」と言ったら「真剣にやってるけど、ないんだよ!」と返されちゃって。今でも仲はいいんですけどね(笑)。ただ、これは少し強めの言い方になってしまうけど、売れないグラビアアイドルがマネージャーのせいにしているようなのが、本当に嫌だったんですよ。自分に仕事がないのを誰かのせいにして、ダベってる感じが好きじゃなくて。だらしねえな、と。じゃあ自分で動いてみようかなと思い、自発的に行動していましたね。

 

ーーその「動く」というのが、すごいですよね。書店でふとバイク雑誌を手に取り、自分のほうがかっこよく乗れると思って、アポなしで出版社に直談判しにいったというお話を見かけました。

 

上福:あれは、いわば “復讐” ですね(笑)。事務所と、愚痴っている自分たちへの当て付けです。

ーー結果、一発目で表紙。しかも一度で終わらせないために、中型と大型の免許を取って、バイクまで買った、と。

 

上福:自分が「辞めようかな」と言ったら、マネージャーから「お前、辞めたところで何もなくない?」と言われて。だったら、自分で仕事を取ってから辞めればよくない? と思って、そうしました。反骨心が強いんでしょうね。見返してやる、という気持ちでしか動けないタイプだと思います。

嘘はつかない。リングでもプライベートでも貫く美学

ーー 上福さんが、SNSなどを含めて自らキャリアを切り開いてきた中で、心がけていることはありますか?

 

上福:絶対に嘘をつかないことです。誰かに何かを提案してもらったとしても、自分がやりたくなければ、絶対にやらない。媚びを売ってまで自分の意見を変えることもしません。そもそも人から嫌われてもしょうがないと思っていますし、自分のことを真っ直ぐに好きでいてくれる人と全力で向き合いたいんです。ダサいものをかっこいいと言ってしまったら、もう、終わりですから。

ーー そんな真っ直ぐな強さの源泉は、一体どこにあるのでしょうか。

 

上福:アメリカに住んでいた時代に受けた人種差別が大きいですね。朝礼の時に隣の男の子から肩を押さえつけられてひどい言葉を言われた時、黙っていたら消えちゃうと思ってブチギレたんです。そうしたら逆に会話が生まれて、帰国する日にはみんながケーキを焼いてきてくれました。「表現しない奴は存在しないのと一緒」という環境だったので、言わないと負けるという意識が強くなったんだと思います。あの時の気持ちは、今でもずっと変わらず大切にしています。

試合は相手との対話。一番輝いているタイミングでの引退

ーー 今回のようなモデルとしての撮影と、リング上での試合とでは、表現の意識に違いはありますか?

 

上福:撮影の時は自分を素敵に見せたいという1人よがりな部分がありますが、試合は「相手との対話」と捉えていますね。先輩と戦う時は自分の無茶を出したいし、後輩と戦う時は後輩のいいところを出してやりたい。試合になれば相手への気持ちの方が強いので、自分よりも相手が輝けばいいと思うシーンも多いです。

 

ーー自分を見せる時間ではない、と。

 

上福:私が自分自身を魅せるのは、入場までです。入場だけは、まつ毛の角度をきれいにするとか、グリッターメイクで派手にするとか、そこまでは頑張ります。でも、試合が始まってしまえば、あとは私たちだけの世界なので、見られ方はあまり気にならないんですよね。

ーーメイクもご自身でされているのだとか。

 

上福:そうそう、『東京女子プロレス』は、なんなら自分のメイクだけでなく、対決をする「リング」も設営しているぐらいですよ。そこも面白いポイントだったりするんです。ひとつの興行を、みんなで作り上げるスタイルですからね。

 

ことメイクに関して言えば、基本は派手にしたいんですけど、対戦相手がすごく彫りが深くてギラギラした人だと、逆にちょっと薄くしてみたり。“対比” をつくるんです。コスチュームも、相手によって柔らかく見えるものを選んだりして。「この人と私は違うんだぜ」という思いはいつも持っていますね。まあ、基本はラメを塗っておけばどうにかなると思ってますけど(笑)。よく見るとやばいですよ、まつ毛、描いちゃってるので。デートには絶対に向いてないと思う(笑)。

潮時は、自分で見つける。“一番イケてる私” で幕を下ろす美学

ーー そんな上福さんは、12月での引退を発表されましたが、ご自身のキャリアの一番輝いているところで辞めるという決断には、どのような思いがあったのでしょうか。

 

上福:もちろん長く居ようと思えば居られる優しい団体ですが、いつかは辞めなければいけません。後輩に負ける気は微塵もないのですが、若い子たちも、どんどん目立っていかなきゃいけないんですよね。

 

だからこそ、無様に負けるようなタイミングではなく、自分が一番イケてる潮時を見つけて辞めようと思ったんです。毎試合ベストを尽くして、負ける日もあれば勝つ日もある。それぞれに後悔がないようにやってきたつもりですし、たとえネイルが1本欠けたとしても必ず塗り直しながら、一生懸命やってきましたから。

ーー 後悔する日は来ると思いますか?

 

上福:後悔する日なんか、絶対に来ないと思います。このまま順調に引退できたら、今までに感じたことのない感謝の気持ちが芽生えるだろうと思うと、ワクワクするぐらいですね。

 

実はこれまで、プロレスデビューしてから、家族もペットも後回しにして生活してきたんですよ。気づいたら祖父母が亡くなってしまって、今は祖母が一人だけ。プロレスを頑張るときは、家族がどうなっていても試合を頑張りたいと思ってしまうんですよね。

 

引退後のことを今から考えるのもどうかと思うけれど、仮に考えるとしたら、家族との時間をゆっくり取りたいかなぁと思います。でも、やっぱり、引退まではずっと頑張り続けていたいですね。これまで通り、後悔のひとつも無いように。

取材を終え、彼女は渋谷の街へと歩みを進める。
鬱屈とした街の喧騒に立っても、鈍く暗い路地裏においても、彼女の表情や立ち振る舞いはキリッと輝いて見える。
それはまるで渋谷の街がそのままリングであるかのよう。

 

ただ、そこに佇んでいる。
真っ直ぐな目線と、凛とした表情を携えて。

 

彼女は、あと半年でリングを降りる。

満開のままに幕を下ろす、その瞬間を、ぜひともじっくりと見届けてほしい。

PROFILE

  • 上福ゆき

    1993年生まれ、神奈川県藤沢市出身。

    中学3年から高校時代をアメリカ・オハイオ州で過ごす。東洋大学在学中にミスコンで準グランプリを受賞し、モデル、レースクイーン、グラビアタレントとして活動。

    2017年8月26日、東京女子プロレス後楽園ホール大会でデビュー。2020年11月、TOKYO DOME CITY HALL大会でインターナショナル・プリンセス王座を初戴冠し、3度の防衛に成功。シンガポールのクイーン・オブ・アジア王座、ベトナムのVPW認定女子王座を獲得し、二冠王者に。2025年9月、上原わかなとのタッグ「Ober Eats」でプリンセスタッグ王座を戴冠、同月に東京女子プロレス正式所属となる。2026年6月7日、後楽園ホールで団体最高峰のプリンセス・オブ・プリンセス王座に初挑戦するも、王座奪取はならず。その3週間後、引退を発表した。写真集『脚罪』も販売中。

     

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