UPDATE : 2026.07.28

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#ART & CULTURE

SUPERFUZZ MUSIC vol.19

Text:TAISHI IWAMI

すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がフロアの心を一つにする。前情報のないアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブが大きな熱狂を生む。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターが、“オルタナティブ”をテーマに、今響くアーティストやおすすめのニューリリースをテキストとプレイリストで紹介します。

Alewya『Zero』

Alewyaは、エチオピア人の母とエジプト人の父を持ち、サウジアラビアやスーダンで幼少期を過ごしたのち、ロンドンで育った。2020年にシングル「Sweating」でデビュー。以降、多層的な出自を持つ彼女だからこその作品をリリースしてきた。中東や東アフリカのオリエンタルな旋律、UKのクラブシーン、ヒップホップやR&Bなど、さまざまな音楽性やカルチャーが溶け合う。そこにある感覚は、クロスオーバーというよりシームレスという言葉がしっくりくる、Alewyaという一つの言語、大陸のようだ。

本作は、そんな彼女の初となるフルアルバム。これまでのダンスフロアでの即効性やフィジカルな推進力は健在。ダンスホール×UKベースな「Maktoub」、パワフルなアフロハウス「Selah」はそのシンボルと言える。加えてネオソウル直系の「Red Clay Luv」や、ボーカルメロディが曲を引っ張るドラムレスのタイトル曲「Zero」など、歌とプロダクションの表現領域に広がりを感じる曲もちりばめられている。本人は“Zero”を“無限の双子”だと話す。何も存在しないゼロは、欠如であると同時に、まだ何にでもなり得る可能性を孕んでいる。既存のジャンルやイメージをいったん更地にして、そこから広がる世界を目指す。そんな気概と自由に溢れた作品だ。

MADMADMAD『Overload EP』

ロンドンを拠点にするMADMADMADのニューEP。2023年にリリースしたアルバム『Behavioural Sink Delirium』は、サイケデリック/クラウトロックやパンク/ポストパンクといったレトロなオルタナティブミュージックをミキサーにぶち込んだような、奇想天外なスタイルが印象的だった。そこから2年。2025年のEP『Run』ではストレートなダンスミュージックへと、明確に方向転換を図る。そして今作はその路線をさらに推進する作品となった。

バンド曰く、発想のキーワードはダダイズム。合理性や秩序を掲げた社会が第一次世界大戦を招いた不条理と、形骸化した既成芸術への反発などから生まれた運動が、作品にどんな影響を与えたのか。ロジックや権威を拒んだその衝動を、ダンスフロアに落とし込む。過剰な情報を意味へと整理するのではなく、思考より先に脳と体を揺らすダンス/ディスコミュージックへと変換。Daft Punkがポストパンクに接近したようなディスコ「Overload」、アシッドハウスとThe Chemical Brothersの文脈にバンドサウンドで挑んだような「The Way」、タイトル通り酩酊感を煽る、深夜のダンスフロアに効く「Mezcal」など、即効性抜群のバンガーが並ぶ。そういえばメスカルって日本人はほとんど飲みませんよね?

The Nightclubs「Clairaudient」

70年代~80年代のパンクやシンセポップとハウス/ディスコといったクラブミュージックが、サウンドのみならずファッション面においてもクラッシュした瞬間の熱狂や美しさ。1990年代末~2000年代前半のムーブメント、エレクトロクラッシュの再燃とアップデートが今、世界の都市で起こっている。それは以前から言われていたことだが、Charli XCXのアルバム『Brat』のヒット、NYの夜をスリージーに染め上げたThe Dareが世界に名を轟かせたことでいよいよ本格化。同じくNYからはFcukersの株が急上昇。LAからはロック色の強いThe Hellp、ロンドンではBassvictimがインターネット世代的クロスオーバー感覚で人気を博し、チープでローファイな方向に振り切ったThe Femcelsらも注目されている。

そんななか、次のブレイク候補として紹介したいのは、The Nightclubs。ベルリンを拠点にする二人組で、今作が2曲目のリリースとなる。まさに2000年代を感じさせるオーバードライブされたシンセの咆哮、Crystal Castlesの初期のようなビットクラッシュや、粒子の粗いパンクなドラムマシンを、小さな地下のダンスフロアでさらに冷徹に研ぎ澄ませる。そのなかを舞うツインボーカルの、妖しくビタースウィートなメロディに酔いしれる。クラフトを突き詰めた、独自のダークで退廃的な世界観が、この先どんな広がりをみせてくれるのか楽しみだ。

というわけで、今月は紹介した3作品の流れに乗って、多彩なダンスビートのうえで、さまざまな音楽性がクロスするニューリリース・プレイリストに。その一方で、自身の音楽性を“ブロークンR&B”と称するMagi Merlinや、カオスな世界をミニマルな電子音に削ぎ落としたDaniela Lalitaなど、エクスペリメンタルなサウンドもおすすめ。Saint Clairのようなオルタナロックど真ん中のバンドがUKで盛り上がってきている感覚もあり、今年の下半期もおもしろくなっていきそう。

 

そして、7月31日(金)と8月22日(土)の深夜には、下北沢SPREADで主催のイベントを開催します。7月は詳細告知済み。音とフロアにただ身を任せるだけで震える、今のアンダーグラウンドシーンにおけるダンスミュージックの多面性をしっかり感じられる、かなり強いラインナップなので、集合お願いします。8月はあらためてお知らせします。

INFORMATION

  • キルタイム

    日程:7月31日(金)

     

    オープン:23時30分

     

    会場:下北沢SPREAD

     

    入場料:2,000円(別途1ドリンク代)

     

    DJ:kuniii / HALU / MELEETIME / TAISHI IWAMI / TEI TEI

PROFILE

  • TAISHI IWAMI

     10代の半ば、ファッションに対する自我が芽生えるとともに、ロックンロールやパンク/ポストパンク、インディーロックといった音楽のディグに明け暮れるようになる。そして街で手にした1枚のフライヤーがきっかけで、そういった音楽の流れるクラブへ。お洒落でカッコいい人たちがダンスに興じるフロアに魅せられ、DJを始める。2019年にオルタナティブミュージックパーティ『SUPERFUZZ』を立ち上げた。

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