NEUT Magazineの編集長をしながら、空いた時間は友達とおいしいものを食べることに全ベットしている僕(平山 潤)ですが、最近周りにお店を持たない飲食店が増えている、そんな気がする。ウーバーで注文すればいつでも届くとか、そんな都合のいい関係じゃない。だからこそ無性に食べたくなるけど、自分のタイミングじゃ食べられない、神出鬼没飯。英語で言うと“POP UP FOOD”を毎月紹介していきます。
第4回となるPOP UP FOODでピックアップするのは、NEUT Magazine編集長・平山潤が、渋谷パルコで11日間行われたクリエイターの祭典《P.O.N.D.》のために「Jikasei MENSHO」と共同考案した限定メニュー。魚介類と野菜のみを使用し、動物性の肉を一切食べない人も楽しめるよう作られた「NEUT火鍋らぁめん」。

フレキシタリアンであり、自身でケータリングサービスも行っているモデルのLEIYAさんと、「のーぷら No Plastic Japan」やラジオパーソナリティなどの環境活動をしているノイハウス萌菜さんをゲストに迎え、ラーメンを食べながら「食の主義」について対談します。


左からmonaさん、Leiyaさん、平山潤
スパイスで温まる、魚介濃厚スープの火鍋らぁめん
平山潤(以下、潤):NEUT MagazineとMENSHOがコラボしたP.O.N.D.限定メニュー「NEUT火鍋らぁめん」、どうですか?
ノイハウス萌菜(以下、萌菜):濃厚でクリーミーだけど火鍋のスパイスもしっかり効いていて、スープが印象的!
LEIYA:プリッとした麺の食感も珍しいですよね。薬膳のビジュアルが好きだから、個人的にまるごと入ってるのは嬉しい。メニューを考えるとき、こだわったところは?
潤:今回NEUT Magazineプロデュースということで、たくさんの人が食べられる体に優しいラーメンを目指して、僕自身、家で作って食べるほどハマってる火鍋の味を再現することにしました。
Menshoの開発チームと試行錯誤し、白湯スープには鶏の代わりに鯛の中骨を使うことで、肉を食べないペスカタリアンの人でも食べられるように。あとは、僕がいつも麺を食べるとグルテンが原因で眠くなるから、米粉と生姜を入れた麺を開発してもらい食べやすくしました。八角やナツメがまるごと入っていたり、少しずつ溶かして楽しむ辛味ペーストは、イモリの形にしたりして見た目を楽しんでもらえるようにこだわりました。

萌菜:見た目もかわいくてクセになる味のラーメンですよね。この麺が普段のMENSHOのオプションで選べるようになったら嬉しいなぁ。
潤:お店で食べられるのはP.O.N.D.の開催期間中だけだったけど、パルコオンラインストアで冷凍の「NEUT火鍋らぁめん」を限定販売予定なので、食べたくなったらチェックしてみて。
萌菜:家で食べられるって嬉しいですね!今回、食のプロデュースをした感想は?
潤:食に関するプロデュースは初めての試みだったけど、いつもと違うコンテンツを通してNEUT Magazineの価値観を届けることができて楽しかったです。Webマガジンと食のコラボって不思議に感じる人がたくさんいると思うんだけど、今後も今回のP.O.N.D.みたいに、自分のフィールドじゃないところで、「先入観に縛られない<ニュートラル>な視点」を届けていけたらおもしろいと思う。

潤:今回は「食の主義」に関わらず、できるだけたくさんの人に食べてほしいという思いがあったんだけど、2人の「食の主義」は?
萌菜:ヴィーガンは日本ではまだまだ普及していないけど、選択肢があるなら、基本的にはヴィーガンがいいです。だけど、今は必要に応じて魚を食べることもあるから、言葉で表すとしたら「フレキシタリアン」かな。
LEIYA:私も名前をつけるとしたらフレキシタリアン。ヴィーガンとして厳しく制限していたこともあったけど、うまくバランスが取れなくて、そこから自分の体質に適したバランスを気にかけるようになりました。今は野菜8割、肉と魚は体からの信号を感じたときに食べています。
潤:ヴィーガンを推奨しているからといって肉や魚を全く食べないんじゃなくて、場面に応じて一番良いものを選択しているんだね。
萌菜:肉や魚を食べなくてもおいしいものはたくさんあるし 、みんなが100%ヴィーガンにならなくても、その選択肢が当たり前に選べるものであってほしいですよね。

選べるライフスタイルを大切に、考えるのはバランス
潤:「食の主義」について考えるようになったのはいつ?
LEIYA:学生時代、イギリスのマンチェスターに滞在していたとき。街中においしいヴィーガンレストランがたくさんあって、オーガニックスーパーでも高くない値段で買いものができたので、健康のことも考えてヴィーガンを取り入れることにしました。
萌菜:学生時代に自分が作った料理を投稿していたフードブログの延長で、食について考えるようになりました。野菜しか食べないって、一見選択肢がないように思えるけど、動物性食品を使わずに自分の欲を満たす工夫を重ねると、むしろバラエティが増えて作る楽しみも増すんですよね。
潤:日本でヴィーガンフードを買おうとすると高かったり、おいしいヴィーガンレストランってあまりなかったりするイメージ。
萌菜:肉を買わないから普段の食事より安いはずなのに、ブランドにこだわると高いものになってしまうことがあるんだよね。値段が高いのにあまりおいしくないというイメージが、ヴィーガンを始めるハードルの高さの原因なのかも。
潤︰ブランドにこだわらなければ、イメージより安くたべられたりする。日本で外食するときも、オプションとしてもっとヴィーガンが選びやすくなってほしいね。2人が食べものを選ぶときの基準は?
萌菜:家畜が一生閉じ込められて過ごすのを想像すると、自分だったら絶対イヤだという、動物愛護の視点から考えると賛同できないから肉を食べない選択を私はする。野菜を買うときも応援できるかどうかで食材を選びたいので、生産者さんの顔や思い、こだわっている農法がわかる透明性の高いものをチェックしています。
LEIYA:食べものを選ぶとき、生産過程って結構大事な基準だよね。
父がムスリムで、子どもの頃、ハラール(イスラム法で「許されたもの」を指し、食品においてもイスラム法上で食べることが許されている食材や料理)の肉を食べていたことがあるんです。ハラールの農場から来た肉は、一般の農場よりも動物に配慮されている部分があります。例えば、他の動物たちがいるところで屠畜することは禁じられているんです。個人的には、ある意味、動物愛護が成立しているような気がしていて、ムスリムじゃないけどハラールの肉を選んでいます。肉以外を選ぶときも、海外から飛行機や船で輸送されたフードマイレージの大きいものより、できるだけ地域経済をサポートできる国産品を選ぶようにしています。
潤:生産過程の透明性や環境への影響、地域経済への貢献、健康…。選択基準がたくさんあるからこそ、それぞれのライフスタイルや文化に合った食の選び方ができると良いね。
萌菜:たしかに。「ヴィーガンだからこうすべき!」ではなく、それぞれのライフスタイルに合った無理のない食べ方が理想だよね。

潤:LEIYAはケータリングサービスをやってるんだよね。始めたきっかけは?
LEIYA:パートナーが料理人で、「いつか一緒にレストランをやりたいね」って話したことがきっかけで、ケータリングサービスを始めることになりました。2人の食への思い、こだわりを他の人にシェアしながらコミュニティを作っていけたら楽しいんじゃないかと思って。なるべく国産で人工調味料を使わない、体も心もハッピーになる料理を作って出しています。

正解は一つじゃない、キーワードは「フレキシブル」
平山:僕もこの前ゲストで呼んでもらったけど、二人のPodcast、BEHIND THE CHANGEについて教えてくれる?
萌菜:社会に変化をもたらしているリーダーたちの活動の裏にある、モチベーションや葛藤を聞くPodcastを配信しています。今は1シーズンを終えて、2023年1月にシーズン2がスタート予定。シーズン2では、月毎のテーマに沿って、社会課題をリスナーと共に深掘りしていけるような内容にしていこうと思っています。
潤:2人とも、食から派生していろんな社会問題についても考えているよね。今後、どんなことを伝えていきたい?

LEIYA:食のことも社会問題も、一つの正解を押し付けるんじゃなくて、個人のライフスタイルのなかで、それぞれができることをするっていう形が一番いいよね。あるヴィーガンの人から「フレキシタリアンは楽でいいよね」って言われたことがあるけど、柔軟になることは怠惰とは違うと思ってる。ライフスタイルや文化を無視せずにいられるから自分の心が開放されるし、いつもヴィーガンを優先していると、コミュニケーションが難しい場面もあるじゃない。
こないだおばあちゃんの家に行って野菜だけで料理してたら、「私の小さい頃、お肉なんて高かったから、野菜だけだったわ」って言われて。「今はそれが 流行ってるのよ」って話したら、おばあちゃんも興味を持って、最近は豆だけで料理するのにハマってるみたい。何かを推奨したいとき、押し付けじゃない自然な伝え方が大切だと思います。
萌菜:伝え方一つで受け取りやすさが変わることってあるよね。ヴィーガン一つとっても、シリアスな視点じゃなくて「健康」とか「節約」がささる人もいる。今回食べた「NEUT火鍋らぁめん」のような受け取りやすい伝え方を考えながら、食の主義に関してだけじゃなく、社会に対する意識の持ち方にも状況に応じた柔軟性があって良いっていうことを提案していきたいですね。
PROFILE
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LEIYA
1995年生まれ。日本とガーナのミックスルーツ。
現在は表現者として、モデル活動と並行して、ポッドキャスト「BEHIND THE CHANGE」のナビゲーター、翻訳者として活動している。
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ノイハウス萌菜
1992年生まれ。ドイツ人と日本人の両親を持つ。2018年にステンレスストローブランド「のーぷら No Plastic Japan」を設立。現在は、日本初のゼロ・ウェイストスーパーマーケットを展開する「斗々屋」の広報担当や、ラジオ局J-WAVE 81.3「STEP ONE」ナビゲーター、社会活動を取り上げるポッドキャスト「BEHIND THE CHANGE」のホストを務める。
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Jikasei MENSHO
米国Twitterビルに本店を構えるJikasei MENSHOの東京支店。環境問題をラーメンで提起するなどの社会活動も行い、宗教、アレルギー、様々な理由で食事の制限がある方々にも、ラーメンを楽しんで頂きたいと考え、ヴィーガンメニューも提供している。看板メニューは鶏白湯らぁめん。
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平山 潤
世間で<エクストリーム>だと思われるようなトピック·人に光を当て、より多くの人に「先入観に縛られない<ニュートラル >な視点」を届けるウェブマガジン「NEUT Magazine」の編集長。食べること、人と話すことが好きです。本連載の担当編集をしています。
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