一度見ると病みつきになってしまうかわいらしくもどこかシュールなキャラクターを描く、ストリートアーティストのYAMEPI©︎。彼の作品の魅力はなんといっても大胆な線の使い方に裏原カルチャーに影響受けたファッション性ではないだろうか。そんな弱冠22歳にして国内外から注目集めているYAMEPI©︎には、双子の弟、TAKERUがいる。TAKERUはこれまでYAMEPI©︎とともにのアパレルブランド「JAM®」のグラフィックを担当しながら、兄の作品制作にも関わるなど、裏方としての活動をメインにしてきた。その2人の兄弟が初となる兄弟展「YAMATOTAKERU」を東京・表参道にあるギャラリーMATで1月28日まで行った。
今回なぜ兄弟で展示を行ったのか、またTAKERUはどのような形で参加したのかなど、展示会場で話を聞いた。そして2人そろってでは初となるインタビューだったようなので、そのあたりも楽しんで読んでみてほしい。


もっと同世代の若い子にもアートに触れてほしい
ー「YAMATOTAKERU」は兄弟での初の展示となりましたが、どのようなコンセプトの展示なのでしょうか?
YAMEPI©︎:今回のコンセプトは僕らが好きなフィギュアやおもちゃをイメージしてそれぞれが作品を制作しました。会場のそこまで大きくはなかったので大きさもちょうどいいかなって思ったんですよね。
TAKERU:あと僕らは双子なので、左右で展示を分けることにしました。左側がYAMEPI©︎で右が自分。


ーなるほど。TAKERUさんにとっては初の作品展示になりますが、それぞれイラストを描くようになったきっかけを聞かせてください。
YAMEPI©︎:小さい頃から時間があれば描いていました。当時は動物だったりとかわいい生き物を描いていたと思います。
TAKERU:僕も小さい頃から描いていました。今回の個展では小学生くらいからずっと描いてきたシロクマをモチーフに制作しています。
ーそうなんですね。YAMEPI©さんは美大に通っていたとのことで絵画に対する知識や経験がありますが、TAKERUさんはどうですか?
TAKERU:僕もYAMEPI©と同じ美大に通っていました。YAMEPI©は美術学科で、僕はデザイン学科だったので、学科は違うんですけど。でも2人とも2年でやめました。
ーではそれぞれの作品についても聞かせてください。TAKERUさんの作品はシロクマがモチーフとのことですが、キャンバス作品がパッケージされていておもしろいですね。

TAKERU:作品にいる大きなシロクマは今回新たに描いたキャラクターなんですけど、小さなシロクマのほうは小さい頃から描いてきたものです。それでコンセプトに合わせて、自分の好きなアメコミのフィギュアみたいにしたいなと考えて、キャンバス作品をフィギュアが箱に入っているようにして、そのキャラが好きなものだったりも合わせて描きました。パッケージも自作していて、裏にもびっしりキャラの説明などが描いてあります。ちなみにサンプリングソースはX-MENからです。
ー箱も自作とはすごい! それぞれ色が特徴的ですが、意図はありますか?
TAKERU:こいつらは“TOKIO KUMAS”という架空のチームに属している設定にしていて、みんな同じチームの仲間なんです。でも性格や好みは違うので色や好きなものがばらばらなんですよね。個人的にはKUROKUMAが好きです。


ーYAMEPI©さんの作品もパッケージされていますね。
YAMEPI©︎:今回の展示ではコンセプトもそうですけど、もっと同世代の若い子にもアートに触れてほしいなって思いもあって作品の値段を思い切って下げたんです。そうすれば同世代でも買いやすいだろうし、部屋にも飾ってくれるだろうなって思って。それでサイズを小さくして、さらにパッケージ化したというのもあります。そして作品は僕が2年前から描き始めた“BOYS”ってシリーズで人造人間です。顔は一緒なんですけど、ひとりひとりキャラクターがあって、性格やファッションが違うんですよね。


ーどれも個性的で独特なファッションが素敵ですね。ちなみに同世代だとアートを買うという行為はまだあまりしていないのでしょうか?
YAMEPI©︎:そうですね。タメとかだと全然いないです。あと部屋をいろんなもので飾ったりもしてないですね。逆に僕らは一緒に暮らしているんですけど、好きなフィギュアやポスターを部屋中に飾っています(笑)。ー確かに好きなものはいつでも見られるように飾りたいですよね。今回の作品も程よいサイズでいろんなキャラがいるのでいろいろと集めたくなりますね。
YAMEPI©︎:そうやってコレクションしたくなるものを目指して作品を作りました。
ーではそれぞれの作品を見てみて違いを感じるところはありますか?
YAMEPI©︎:よく見ると違う作品なんですけど、今回は似ちゃいましたね。だいぶTAKERUが僕の作品に引っ張られてしまったので、これからはもっとそれぞれの違いを出していけたらいいですね。でもTAKERUのほうは線が細くて、描写も細かいんですよね。
TAKERU:僕にとっては初めての展示だったのもあって確かに似てしまったので、もっと違いを出していきたいですね。とはいえ、好きなものが一緒なので、描きたいものも似てきちゃうので気をつけないといけないですね。

ー2人ともどのように描いているのですか?
YAMEPI©︎:描き方も一緒でiPad上でまずは下絵を描いて、それをキャンバスに落とし込んで、アクリル絵の具で色を入れています。
ーデジタルとアナログを使い分けているんですね。これは難しい質問かもしれませんが、TAKERUさんはYAMEPI©︎さんの作品制作をずっとそばで見てきたと思いますが、YAMEPI©︎さんの作品の魅力はどんなところだと思いますか?
TAKERU:キャラ設定とラインの引き方ですかね。この独特のラインってYAMEPI©︎にしか描けないんですよね。真似しようと思っても僕にはできなくて。YAMEPI©︎:ラインに関しては、これまでに何度も何度もいろんなキャラクターを描いてきてやっと見つけたラインなんですよね。今の自分の表現としてはベストな線の引き方なんですよ。

ーラインも魅力ですが、YAMEPI©︎さんといえばスカルプチャー作品あります。これはYAMEPI©︎さんひとりで制作したものですか?
YAMEPI©︎:デザインと着色は僕がやっているんですけど、造形は僕ら兄弟ともう2人で組んでいるクルー、COMETのメンバーにやってもらっていて、十字路ってアーティストが僕の作品から原型を作っています。
ーCOMETのもう1人のメンバーもアーティストですか?
TAKERU:大久保晃生というフォトグラファーです。僕らが作ったものは彼が撮っていますね。

双子だけに2体を同じパッケージに入れたコラボフィギュアも作りたい
ーではここからは個展以外の話も聞かせてください。お2人はブランド「JAM®」も運営されていますが、どういったブランドなのでしょうか?
TAKERU:僕ら2人でやっているストリートブランドです。大学1年の終わりに始めたので2021年の春ですね。シーズンとかで区切ったりせずに自分達が着たいと思った洋服やフィギュアを作りたい時に作っています。
YAMEPI©︎:今回の展示でも作品をプリントしたTシャツを「JAM®」名義で作りました。他にも僕の作品を使ったコラボレーショングッズも作ったことがありますし、今はCOMETとしてTAKERUと大久保晃生がメインで雑誌も作っていますね。


ー雑誌ですか!
TAKERU:僕らと同世代のアーティストにフォーカスした雑誌になります。YAMEPI©︎にも出てもらっていて、4月頃にローンチしたいと考えてます。兄弟で昔の雑誌を読んだりしていて影響を受けているので、自分達でも作りたいってやっています。
ー自分達だけで雑誌を作るなんてすごいです……。影響を受けたブランドやデザイナーはいますか?
TAKERU:「A BATHING APE®」ですね。今も昔のアイテムをネットで探したりしてます。なのでNIGO®さんとスケシンさんには影響を受けています。
YAMEPI©︎:僕もそうで、付け加えるなら「BOUNTY HUNTER」とHIKARUさんとMANKEYさんですかね。ちなみに裏原のことはTAKERUに教えてもらったんですよね。

ー好きなことも一緒なんですね。ちなみに2人は双子ということで見た目もそっくりですが、見分け方はありますか?
YAMEPI©︎:今は僕が赤髪なのでわかりやすいですけど、頬骨が出ているほうがTAKERUで、出てないのが僕です。あと僕のほうがよくしゃべります(笑)。
ー(笑)。双子でよかったことや困ったことはありますか?
YAMEPI©︎:たまたまですけど、好きなことややりたいことが一緒なので、互いにアイデアが出せ合えるし、他の人に比べると意思の疎通がスムーズですね。考えることがわかるというか、伝わらないってことがほとんどない。例えば「JAM®」でパッケージのグラフィックを頼んだら、僕の頭にあるイメージを完璧に再現してくれました。だから困ったことはあまりないですね。
TAKERU:困ったことといえば、YAMEPI©︎の友達に間違えられるくらいかな(笑)。僕にとっては知らない人なので焦ります……。よかったことは考え方もですけど、身長と体重も一緒なので服がシェアできること。あとはしょっちゅう情報共有をしているので、知りたいことの知識が倍になりますね。
ーなるほど! まさに私生活もともに過ごしているわけですが、今後やってみたいことはありますか?
YAMEPI©︎:今回だけに限らずまた兄弟で展示はやりたいですね。次は大きな作品を別々ではなく共作で作りたい。
TAKERU:コラボフィギュアも作りたいです。双子だけに2体を同じパッケージに入れてっていう。
YAMEPI©︎:それいいね! やろうやろう!
PROFILE
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YAMEPI©
大胆な線によって描かれる特徴的なキャラクター造形と、作り込まれた世界観が国内外から支持されている若手アーティスト。 無数のキャラクターやストーリーは、YAMEPI©が影響受けてきて現在は身を置いているストリートカルチャーから生み出されている。2023年には単独の初個展を行い、大きな注目を集めた。
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TAKERU
2001年生まれのYAMEPI©の双子の弟。普段はグラフィックデザイナーとしても活動するかたわら、白熊をモチーフにしたキャラクター作品を制作し始める。「YAMATOTAKERU」が初の展示となる。また兄弟で運営するブランド「JAM®」でも雑誌作りやデザインなど、自分達でできるものはすべて手がけている。