今年も、やってきました。僕らの背中を押してどこまでも連れて行ってくれそうな強い風。誇らしげに咲いていた鮮やかな桜色、その向こうに見えるカラッと晴れた青空。鳥たちは、その季節の到来を嬉しそうに喜んでいるような。そう、春です(そりゃもう嬉しくて、ちょっとエモーショナルにもなってしまいます)。
新たなチャレンジにぴったりな季節、春。新たに進学をする人もいれば、新社会人としてのキャリアをスタートした人も多いことでしょう。また、会社で働いている方々にも、きっと年度始めに心を入れ替えた、なんて人も少なくないはず。
ここでは、そんな春に新しい道へと一歩踏み出した、お二人の対談をお届けします。大学生の頃に出会ったというお二人(写真左から ANNIさん、ERICAさん)は、お互い「モデル」のキャリアを続けながらも、この春にそれぞれ「大学院生」と「会社員」という道を選んだのだそう。そんな二人が、新生活への期待や不安、心意気などを、いつも通りのテンションで語り合ってくれました。
置かれた場所で努力を続け、自分が思う「正しさ」を叶える

ERICA:そういえば、大学1年生の頃に出会ってから、もう4年も経ったんだね……!
ANNI:そうそう、めちゃくちゃ早いよね。インカレ(複数の大学を横断するもの)のサークルで出会ったんだったっけ、私たち。
ERICA:私が、ANNIの所属するファッションサークルにお邪魔して、そこで初めて出会った。でも、3ヶ月くらいでやめちゃったんだよな、そのサークル。正直「ANNIと出会えたからいいや」って気持ちが強かった(笑)。
ANNI:あのサークル自体が悪いのでは全然なく、もちろんメンバーはみんなそれぞれファッションが好きなんだけど、私たちが思う「好き」とはちょっと違ったよね。私たちはそこでの「人脈」とか「交流」とかに興味があったんだけど。
ERICA:実際フタを開けてみたら、服の「デザイン」に特化していて。だったらもういいや、ANNIに会えたし、って。

ANNI:何回言うの、それ(笑)。でも本当、うれしかったなぁ。今もこうして仲良くいられるのも、すっごくうれしい。それはそうと、最近どう? 社会人として働き始めて、今、どんな感じ?
ERICA:仕事としては、“投資コンサル” と呼ばれる業務をやってるよ。ハウスメーカーに勤務してるんだけど、そこには事業がいくつかあって。お客さまにとっての “住処” としての家を建てる、いわば “to C” の事業と、土地をお持ちのお客さまに向けて「ここに建物を立てて、運用しませんか?」とお誘いしたり、その投資プランを考えたりする “to B”の事業。私は後者の “to B” の仕事をしてる。
ANNI:そもそも、その仕事を選んだのはどうして? ちょっと面接みたいになっちゃうけど(笑)。

ERICA:志望理由としましては……(笑)。やっぱり私は、モデルの仕事をずっと続けていたかったんだよね。社会人として会社に所属するにしても、モデルとしての活動も並行してやっていきたいと思っていて。私が選んだ「不動産」の仕事って、火曜と水曜が休みになりがちなんだよね。平日に休みがあれば、モデルの仕事も続けていけるな、って。
ANNI:あくまで、モデルの仕事を中心に据えてるんだ。それなら、なんとなく無理のない形で続けていけそうじゃない?

ERICA:ただ、実際会社に入ってみて、上司から『あなたは違う部署の方が向いていると思う』と言われちゃって。結局、土日休みの部署に配属されることになったんだよね……。正直それには結構悩んだけど、今置かれた場所で一生懸命努力して、ゆくゆく会社のみんなのことを説得できたらいいな、とは思ってるよ。ただ、「不動産」のキャリアだけが正解じゃないとも思っているし、これから気持ちが変わっていくかもしれないし、ね。
“似てるけど、全然違う。違うけど、私たち、すごく似てるよね”
ERICA:ANNIはこの春、大学院に進学したんだよね?

ANNI:そうそう、この春から大学院生になったよ。学部生だった頃に学んでいた経営学を、院でも学び続けたいなぁと思っていて。その学び方は変わったけどね。
ERICA:学び方?
ANNI:学部の頃は、“アカデミック” としての学びが多かった。でも、大学院での研究は、より “プラクティカル(実用的)” なものが多いんだ。たとえば「A」という企業があったとして、とある時期に大きなビジネスチャンスを形にしたとする。その “とある時期” に行われた経営戦略の裏側だったり、その意思決定のあり方だったり、実際の数字だったり、そういったことを研究するんだよね。事実に基づくものを、根拠に基づく形でしっかり紐解いていく感じ。 “思考訓練” の場に近いかな。
ERICA:モデルの仕事は、どういうふうに続けてるの?

ANNI:私もERICAと同じで、やっぱり「モデル」としての仕事をずっと続けていたいんだよね。たとえばERICAが言っていた『火曜・水曜が休みじゃないと……』というのも、すごくわかる。ただ、ちょっと厳しい言葉かもしれないけれど、それって、規模を狭めなきゃいけないじゃない?
ERICA:まさに、それで悩んでるところもあるなぁ。泣く泣くお断りしなきゃいけないことも少なくないし。
ANNI:うんうん。結構辛いよね。だから私は、あえて夜間の学校を選んだ。18:30から22:00ぐらいまで研究するコース。そうすれば、平日の日中でもモデルの仕事ができるなぁ、って。モデルの仕事も学業も同じだけど、やっぱり私は自分をレベルアップさせられる環境にいたいなぁと思うんだよね。
ERICA:うん、うん。

ANNI:「将来こんな仕事がしたい!」といった目標みたいなものは、正直全然なくてさ。明確なビジョンは、無いんだ。その時その時に最善なチョイスができるように、今できることをしっかり続けたいな。大学院を卒業する頃にも、その前にも、準備段階であっても、自分がもっとも良いと思える選択をしたいよね。
ERICA:なんか、私たちもちょっと大人になったんだな、って思うよ。昔から今まで仲良くいられていること、本当にうれしい。私たちって、似てるけど、全然違うよね。
ANNI:すっごくそう思う。同感。
ERICA:私は自己肯定感がバカみたいに高いんだけど(笑)、ANNIは割とセンシティブな面を持ってるよね。「自己肯定感が低い」と言ってるんじゃなくて。繊細で、冷静な目を持ってる。だからこそ、私にリスクヘッジが足りない時なんかは、アドバイスをくれたり。

ANNI:「見方」は違うけど、同じ方を見てるよね。それぞれ違う世界に歩みを進めても、こうして仲良くいられるのは、そういうところなのかも。私もERICAから助けられているところがたくさんあるし、喧嘩もなくこうして一緒にいられるのはすっごくうれしいよ。
ERICA:なんか、友情を確認するための対談みたいになっちゃった(笑)。全然関係ないけど、私、最近「サバゲー」を始めてみたんだよね。
ANNI:めっちゃ急じゃん。ただ、すっごく行ってみたい(笑)。 実はかなり興味あったんだよね、サバゲー。わたしはこの春から一人暮らしを始めて、ひたすら自炊してる。お互いいろんなことを楽しみながらチャレンジしていけたらいいよね。ほんと。
ERICA:そうだね、本当にそう思う。なんか真面目な話ばっかりになっちゃったけど、やっぱり私たち、根が真面目なんだろうな。今日はこれから予定なし?
ANNI:うん、ないよ。
ERICA:じゃ、打ち上げ行こうよ。焼肉食べよう!
ANNI:それ、最高!! 行こう行こう!!
あとがき

お二人が楽しそうに “新生活” について話す姿を眺めながら、ふと思ったことがあります。それは、赤い炎と、青い炎について。会社員としてのキャリアをスタートしたERICAさんには赤い炎を、大学院に進学したANNIさんには青い炎を、それぞれ見たような気がしました。
燃えたぎっているように見える赤い炎にも、ゆらりと揺らいでしまう時だってある。一見冷静に見える青い炎も、確かにしっかり熱く燃えている。それでも、“炎” としての性質は、同じ。お二人に、そんなことを思い浮かべました。
ダジャレでは決してありませんが、焼肉屋さんの席に隣り合って座る彼女たちが、七輪の上に燃え上がった “炎” を静かに見つめていた時の表情を、なぜか忘れられません。同じ方を向いて、口元に笑みをたたえながら話すお二人。それぞれの春、お互いが努力を続ける場所にたくさんの花が咲いていること、先へ先へと向かう道のりにうれしいことが数多く待っていることを祈ります。新たな季節、草木が色鮮やかに萌える、春の始まりです。
PROFILE
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ANNI
2002年3月生まれ。大学在籍中にモデルとしてのキャリアをスタートし、現在はモデル事務所『TOMORROW TOKYO』に所属しながらも、大学院生として経営学の研究に励んでいる。ファッション誌や美容広告を中心に、さまざまなシーンで活躍中。近ごろは、人生初の一人暮らしに奮闘しているのだそう。
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ERICA
2002年1月生まれ。フリーランスモデルとして活躍しているかたわら、この春から会社勤めを始める。中学2年生の頃にモデルとしてスカウトを受け、現在では広告を中心に据えつつもシーンを問わぬ活躍を見せている。ANNI曰く『おしゃべり大好きな私が自然と聞き役になってしまうほど、ERICAはお話上手』とのこと。