UPDATE : 2025.04.14

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#LIFE STYLE

「培われるサバイブスキル」

Photo/Text:Kae Homma

友達は、みんな腕のいい料理人

 

ふとロンドンに引っ越してきてからのことを振り返ってみると、圧倒的に伸びているスキルがあることに気付く。それは英会話だ!と言いたいところだけど、それよりもここ数年のうちに自然と料理ができるようになっていた。

 

これは環境がそうさせてくれたと言っても過言ではない。時間が沢山あったコロナ禍に、人生で初めて連日料理をすることに挑戦してみたが、コロナが開けて忙しくなり始めた頃には外食やUberなどに頼り、以前の生活に戻っていったことをよく覚えている。

 

ロンドンに引っ越してきて間もない頃、友人のお家に招待されては、毎回出てくるご飯のレベルの高さに驚いた。そしてすぐに気付いたことは、男女問わずに料理ができる人が多いということ。またそれは、この国に住んでいる長さと比例しているような気がする。

お家ご飯のレベルが基本みんな高い・・

「イギリスのご飯って美味しくないよね?」という感覚が日本人には根付いているような気がするが、実際には、「高いお金を払えば美味しいものが食べられる」というのが答えだろう。

補足すると、イギリスにはインド系・トルコ系の移民コミュニティが根付いているため、カレーやトルコ料理はその中でもリーズナブルで美味しいお店を見つけることができる。

またレストランに限らずスーパーも同じで、良い食材を手に入れたいならオーガニックショップやウエイトローズなど、ちょっと良いお店に行けば手に入る気がする。日本にも成城石井のような高級なスーパーからお手頃価格のスーパーはあるが、こっちでは金額以上に品質の差がすごいのが印象的である。安いスーパーで買うニンニクは風味がないし、ネギは使えるところが少ないし、ほぼ水みたいなトマトに出会うこともある。

 

また日本人として日本食レストランには無論厳しいが、値段が高いのに美味しくないのはこの国のあるあるとも言えるだろう。

美味しいものが食べたい時にリーズナブルな価格で食べることができる日本とは異なり、美味しいものを食べたいなら自分達で作るのが一番経済的で、結果美味しいということに辿り着き、知らず知らずの間に私の料理スキルも上がっていった。

イギリスのパブ飯の定番、日曜日にだけ食べれるサンデーロースト

日本人の友人が作ってくれたサンデーロースト

幸せを感じる基準値が下がる国

いつかの旅行帰り、お土産屋で買ったポストカードで家族に手紙を出す友人

こっちでの生活が長くなるにつれて日本へ戻ると、その暮らしの便利さにいつも驚く。大して頑張らなくても手に入れられるサービスやモノが本当に多く、なんて住みやすい国で生活をしていたかに気付かされる。

 

電車が時間通りに来るのは当たり前だし、コンビニへ行けば何でも欲しいものがすぐに手に入る。サービス一つとっても「お客様は神様だ」のような完璧さが日本にはあり、これが日本の素晴らしさとも思えるが、それと同時に頑張らなくてはいけない基準が当たり前のように高くて、みんな働きすぎだし疲れ切っているようにも感じる。

 

それに比べるとロンドンでは、電車やバスもよく遅れるしあらゆるサービスは雑で基本的に不便。

けれども逆にこの「完璧ではない環境」にも慣れてくると、バスが時刻通りに来るだけのような小さなことでも幸せに感じられるようになっていて不思議である。

6PM、サマータイムが始まって街全体が浮かれてて最高

つい先日も急にボイラーが故障して(もう5回目くらいになる)夜にシャワーが浴びられなかった。ここだけ聞くとただ不便な話なのだが、翌日に修理をしてもらい、温かいシャワーが浴びれただけで小さな幸せを感じた。

同じことが日本で起きていたら近所の銭湯にでも行ってるんだろうが、そんな選択肢など勿論ないからこそ当たり前にお湯が出ることの有り難みに気付かされたりもする。

フラットメイトがイタリアから連れてきたミアが我が家に仲間入り

また日本にいた頃は100円ちょっとのコンビニコーヒーを毎日のように飲んでいたが、そんな安くてどこでも買えるようなコーヒーはこの国には存在しない。どんなに安くても600円以上はするし、平均的に700円は越える。個人的に毎日のコーヒーは欠かせないので、節約も兼ねてエスプレッソの豆をまとめて買ってはお家で淹れているのだが、自分好みの豆を探しているそんな時間も幸せである。

 

せかせかとした日本での生活とは対照的に、この国ではみんな自分達の時間を小さな喜びと共に、ゆったりと楽しんでいる気がする。

お気に入りのコーヒーショップのひとつ、バッチベイビー

PROFILE

  • 本間 加恵

    1995年生まれ。東京都出身。スタジオアシスタントを経て、2020年に独立。 

    ファッションフォトやポートレートを軸に活動し、ファッションブランドのルックやマガジンの撮影を担当している。 

    2023年に拠点をロンドンに移し、活動中。 

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