UPDATE : 2025.04.15

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#ART & CULTURE

SUPERFUZZ MUSIC vol.5

Text:Taishi Iwami

すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がクラウドの心を一つにする。前情報のない無名のアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブがフロアを大いに盛り上げる。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターが、“オルナタティブ”をテーマに、タイムリーなアーティストやおすすめのニューリリースをテキストとプレイリストで紹介します。

bed「Kare Wa 3.0」

私たちが4月3日にCIRCUS Tokyoにて開催したSextileの初来日公演『Sextile in Japan』~4月5日に渋谷clubasiaでの『SUPERUZZ  6th Anniersary』と続けて出演してくれたbedのニューシングル。フジテレビと『ウォーキング・デッド』などを手掛ける米スカイバウンドエンターテインメントによる共同制作ドラマ『HEART ATTACK』のオープニングテーマとして制作された曲で、すでにFODで配信、地上波でも流れているので、画面越しに耳にした方も多いのではないでしょうか?

「Kare Wa 3.0」は文字通り「Kare Wa」の3つ目のバージョンで、1つ目はMVにて公開中。2つ目の「Kare Wa 2.0」は、配信中のライブレコ―ディング作『Archives: May 27th, 2023』に収録されており、ドラマの監督である丸山健志氏はその構想当初からこの曲での幕開けを想像していたそう。そしてオファーを受けたbedは、新たにレコーディングしたバージョンの制作を提案。パンクやガレージロック、テクノやアシッドハウスなど、さまざまな背景を感じとることができるが、これは融合というよりは開拓、創造といった言葉が相応しい。ジャンルでは割り切れない新たなバンド音楽/ダンスミュージック。そんなbedの持ち味がアップデートされた、スリリングで迫力満点のサウンドや各パートのフレーズの強度に刺激され、リピートが止まりません。

Sextile「S is For」

Sextileが、5月2日にリリースするニューアルバム『yes, please』からの先行曲第2弾。先述した『Sextile in Japan』でも、『SUPERFUZZ 6th Anniversary』でも、過去の人気曲に負けず劣らずどころか、この曲含む新曲のパフォーマンスがフロアのハイライトになっていたことが印象的でした。パンク、ポストパンク、EBM期から、よりダンスにフォーカス。パンデミック以降は、さらにクラブ/レイヴカルチャーに接近した彼らの現在地が示す未来にワクワクした時間でした。

1980年代のダンスパンクやハウス、90年代のレイヴカルチャー、2000年代のエレクトロクラッシュなどの文脈に対する愛と、モダンなプロダクションが見事に融合。ポップなフックも満載のカラフルなダンスミュージックに。2023年にリリースされた前アルバム『Push』を経て、Sextileの新たなシグネチャーとなるサウンドが確立されたように思います。2つの公演含む彼らと過ごした10日間はほんとうに素晴らしい日々で、今も余韻と寂しさが……。その様子は後日レポートにします。

Snapped Ankles『Hard Times Furious Dancing』

活動の拠点はロンドン、自分たちのことを“森の民、木々の子孫”であると言い、メンバー全員がギリースーツを着用している謎めいた集団、Snapped Anklesが5枚目のアルバムをリリースしました。彼らの曲はSUPERFUZZでもずっとプレイしてきましたが、今回はダンスミュージックとしての強さがより高まった、フロア仕様の作品に。

サイケデリックロック、パンク/ポストパンク、テクノやブレイクビーツなど、ありとあらゆるバックグラウンドに自然のエネルギーや人間くさい血を通わせ、物価の高騰や貧富の差など世の中の不条理に対抗する。そのサウンドはまさに森のレイヴ。私たちはただ快楽に浸るためだけにそこに行けばいい。そうすることで、やがて自由という概念を共有し、明日を生きる力が奮い立つ。そんな価値あるパーティで起こるドラマが凝縮されたようなアルバムだと感じました。

Sextileからはもう1曲紹介。同じく5月2日にリリースするアルバム『yes, please』より、私たちSUPERFUZZが昨年末に招聘したLAのバンド、AutomaticのIzzy Glaudiniをゲストボーカルに迎えた曲を。1990年代トランスからの影響を感じるレトロサイバーなシンセが降り注ぐアッパーなダンストラック。EBMのダークネスは残しつつパンキッシュで弾けた方向に舵を切ったNuxx Vomicaの新曲や、テクノのミニマリズムを基盤にワイルドなミクスチャー感覚の光るBlack Girl / White Girlの新曲は、これからDJでのヘビーローテーションになりそう。

 

ニューバンドでおすすめなのがUKはリバプールを拠点にするGirl Group。極めてシンプルでDIYなサウンドとキャッチーなメロディにウィスパーボイスのマッチングがばっちり。Wet LegやThe Royel Otisのように、インディー/インディーポップをより広いフィールドに届けられるポテンシャルに満ちています。

 

最後に、Sextileの初来日公演とSUPERFUZZの6周年はのべ600人の方々にご来場いただき、最高の2デイズになりました。私たちはこれからもいろんな仕掛けをしていく予定なので、今後ともよろしくお願いします。まずは5月17日、渋谷club Malcolmでのレギュラー回でお会いしましょう。

INFORMATION

  • SUPERFUZZ

    Ailternative, Indie &Raw Disco Party

     

    日程:2025年5月17日土曜日

    会場:渋谷club Malcolm

    オープン:23時30分

    入場料:2000円(1ドリンク含む)

    DJ:KEIGO / MUSASHI / TAISHI IWAMI

PROFILE

  • TAISHI IWAMI

     10代の半ば、ファッションに対する自我が芽生えるとともに、ロックンロールやパンク/ポストパンク、インディーロックといったロックミュージックのディグに明け暮れるように。そして街で手にした1枚のフライヤーがきっかけで、そういった音楽の流れるクラブへ。お洒落でカッコいい人たちがダンスに興じるフロアに魅せられ、DJを始める。2019年にオルタナティブミュージックパーティ『SUPERFUZZ』を立ち上げた。

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