これまで意外と触れてこなかったロンドンでの仕事の話でもしようかなと。日本で久しぶりに会う同業者の友達によく聞かれるのが、「海外での仕事って正直どうなの?」という質問。
実際に引っ越して来てからのロンドン生活は、私が想像していた何十倍もフォトグラファーだけでお金を稼ぐのが難しい街だった。
引っ越して来る前は、「写真スタジオで働いた経験もあるし、フォトグラファーとして仕事の経験もあるからどうにかなるでしょう」と軽い気持ちで引っ越してきたものの、現実はそこまで甘くなく、何とも競争率の高い世界。
日本から引っ越してきて活動している私のような人がいるように、ヨーロッパ圏やアジア圏からも沢山のフォトグラファーがロンドンに集まってくる。
悔しくも格好良い写真を撮るフォトグラファーは沢山いるし、ベテラン、若手問わずに兎に角レベルが高いイメージだ。その中でどれだけオリジナリティを出し、人の目に留まるかがこの国で勝ち抜くための秘訣だと思う。
また日本人の手先の器用さや繊細さは海外でも認められているからか、ヘアやメイクをやっている友人達は、同世代でもロンドンへ来てから良い仕事をしている一方で、フォトグラファーとスタイリストはなかなか茨の道であることをここ数年で痛感した。
フォトグラファーのアシスタントは、アシスタントではなく立派な仕事
キッズモデルは天使
「アシスタントをするだけでもかなりお金が稼げるよ」と話を聞いていたため、「学べて稼げるなんて一石二鳥だ!」と思っていたものの、アシスタントとして働けるまでの道のりもかなり長かったのを覚えている。
実際に好きなフォトグラファーの広告の撮影現場へ行き、アシスタントとして参加した際に見た世界は、細分化されたプロたちの仕事内容だった。
ロンドンのスタジオには、日本のように撮影を手伝ってくれるスタジオマンがいないので大変
スチール(写真)のフォトチームは5名いて、フォトグラファー・アシスタント3名(1st アシスタントは、ライティングの指示も出来るライトマン)・パソコン周りの操作のみを担当するデジタルオペレーターなど、一人一人に個々の役割がきちんと在ることが多い。
これまで日本で見てきたフォトグラファーとアシスタントとの関係性は、いつか独立する日の為に、一人前になるための準備期間として師匠に師事し、一定期間学びながら働く、師弟関係が存在する印象だった。しかし、ロンドンでのフォトグラファーとアシスタントとの関係性は全く異なり、ほぼ対等の立場であるように感じる。アシスタントのプロ達がフォトグラファーの撮影環境を整え、支えているイメージに近いだろう。
またロンドンでフォトグラファーのアシスタントをしている人達は、何十年も続けている人が多く、誰か一人に師事をすることも少ない。数名のフォトグラファーの現場を同時に支えている。アシスタントをするだけでもきちんとしたお金を稼げるからかもしれないが、アシスタントは、ただのアシスタントではなく立派な仕事になっていることがよく分かった。
好きなフォトグラファーの現場へ行き、色々見て学べると思って来たのだが、アシスタントのプロ達が彼らの現場を常に支えていたのが現実であり、ここに入るまでの競争率も高いことを学んだ。
売れているフォトグラファーこそ作品撮りをする
ロンドンに来てからのパーソナルワーク、ロンドンでの作品撮りはモデル代がかからないのが日本との違い
クリエイティブディレクターの友人や売れているフォトグラファーの友人にロンドンでの仕事の取り方を相談していた時のこと。「テストシュート(作品撮り)は定期的にやっている?」と聞かれたのが印象的だった。
日本でスタジオマンから独立する際には何度もやってきたものの、ロンドンへ来る前の数年間は一切やってきていなかった。
どんな仕事をしているかも勿論大切だが、どんなディレクションで撮影をするのかを見せることがこっちでは大切だとみんな言う。
実際に、売れっ子フォトグラファー達も常に自分のテストシュートやプロジェクトをやっているのをよく目にする。
パーソナルワーク
日本では「誰に師事をしていたか」「どんなチームで撮影をしているか」「仕事のやりやすさ」などが判断されがちな気がするが、こっちでは「あなたのディレクションでどんな写真を撮るのか」が重要視されており、まず始めに「その人の作品性」が尊重されていることがよく分かる。
今、注目されている同じ人の元へ仕事が偏りがちな日本に対して、無名でも誰かの目にとまれば色々なチャンスがあるのがロンドンの良さだと思う。
最近やったパーソナルワークのBTS
圧倒される日本の広告量
若者が集まる街、ショーディッチでも限られている広告の量
日本へ帰ってくるといつも驚かされるのが、街中の広告の量。渋谷や新宿などの大都市では、街中をあらゆる芸能人の顔が広告で埋め尽くされているし、駅は勿論、電車の中でもそうだ。
それに比べてロンドンの街は驚くほどに広告が少ない。
エアコンがお家に設置されていない理由に、室外機が外観を壊すからとも言われているが、街に広告が少ないのもそれが理由なのかもしれない。
トンネルの下など日本ではあまり見かけない場所にある
若者が集まる街でファッション広告や映画の広告などはちらほらと見かけるが、日本のようにギラギラと下品な並び方がされていない。破かれたり落書きされたりはしているけれど。(笑)
広告への落書きは日常茶飯事
コンビニや薬局などに入っても日本では、商品ひとつひとつが丁寧にパッケージされており、その中に写真が使われている商品も少なくないが、ロンドンではありとあらゆるものが剥き出しで売られており、デザインもそこまで凝ってはいない。(笑)
沢山の商品広告のために、撮影が生まれる機会が多い日本と、撮影の本数は少ないがグローバル広告などひとつひとつの撮影が大きいロンドン。フォトグラファーとしては正直どっちも魅力的だが、日本に居る方が撮影のチャンスは掴みやすいことに気が付いた。
住み始めて2年半、ほんの少しずつだがようやくロンドンでのクライアントも増えてきた。甘くない世界に心が折れそうな時も多々あるが、腐らず好きな写真をこのまま続けていきたいと思う。
PROFILE
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本間 加恵
1995年生まれ。東京都出身。スタジオアシスタントを経て、2020年に独立。
ファッションフォトやポートレートを軸に活動し、ファッションブランドのルックやマガジンの撮影を担当している。
2023年に拠点をロンドンに移し、活動中。





