「FREAK MAG.」が注目するダンサーのルーツと生き様に迫る新連載「DANCE FREAK」。 記念すべき第一回に登場するのは、西海岸のスタイルを体現する日本人ダンサー・rotoだ。
西海岸のギャングカルチャーから生まれたダンス「C-Walk」。 そのステップひとつで、本場アメリカの伝説的ラッパー・Snoop DoggやIce Cubeにまで自身の存在を知らしめた彼は、いかにして世界で評価されるに至ったのか。
同世代のトップダンサーたちが幼少期から英才教育を受けた「キッズダンサー第一世代」ばかりの中、彼が本格的にダンスを始めたのは19歳。あまりにも遅すぎるスタートだった。 エリート教育を受けたわけでも、本場のストリートで育ったわけでもない。 そんな彼が行き着いたのは、オリジナル(本物)をただ模倣するのではなく、日本人としてのアイデンティティを掛け合わせる、彼なりの「カルチャーへの誠実なアンサー」だった。
身体能力ではなく「知性」で勝つ。遅れてきた19歳の生存戦略
──まず、ダンスを始めたルーツについて教えてください。
roto:ダンスを人から習い始めたのは19歳の時ですね。僕らの世代は、周りはみんな5歳とか物心ついた時から踊ってるような「キッズダンサー第一世代」なんです。だから、その中ではかなり遅いスタートだったと思います。
もともと中学生の頃に、LMFAOのMVに出てくるQuest Crewというダンサーたちを見て、「ダンス、やってみたいな」という憧れを持っていて。でも、僕は4歳からずっと空手をやっていて、地元も埼玉の田舎だったのでダンススクールもなくて。周りの目やプレッシャーもあって、「ダンスをやりたい」とは言い出せなかったんですよね。YouTubeが出始めた頃だったので、画面越しに海外のダンサーの動きを観て、ただ見様見真似で追いかける……それくらいのことしかできませんでしたね。
──周りが経験者ばかりの中で、19歳からのスタートに焦りや劣等感はありましたか?
roto:ありましたね。大学のサークルに入った時も、同期の半分は経験者でした。「もっと早くやっていればよかった」という劣等感が、正直ずっとあったんです。 でも、身体能力だけで彼らに勝つのはもう無理だと思って。彼らは積み上げてきたものが違う。だからこそ、頭を使って勝つしかないなと感じたんですよね。英語を勉強して海外の動画を観たり、現地の文化や歴史的背景を深掘りしたりして。知識量やカルチャーへの理解度なら負けないぞ、という部分を自分の強みにしていこうと切り替えたんです。
「ヒップホップ=NY」への違和感。西海岸に“居場所”を見つけるまで
──rotoさんといえば、西海岸のスタイル「C-Walk」が代名詞ですが、なぜそのスタイルに行き着いたのですか?
roto:ダンスを始めた頃は、「ヒップホップ=ニューヨーク」というのが主流でした。先輩たちがニューヨークで学んで持ち帰ったスタイルが日本のスタンダードだったので、まずは膝を曲げて重心をズシッと沈み込ませる、いわゆる「ダウン」のリズムから教わるのが当たり前……といったような。
でも、僕が本当に好きだった音楽はSnoop DoggやIce Cubeのような、いわゆる西海岸のラップだったんです。彼らの音楽をバックにニューヨークスタイルのダンスを踊ることに、自分の中で少し違和感があったというか、「なんか違うな」とずっと思っていて。
──自分が好きな音楽と、習うダンスのスタイルが噛み合わなかったと。
roto: そうなんです。そんな時に「C-Walk」に出会って、自分の感性と音楽がバチッとハマったような感覚がありました。C-Walkはもともとギャングカルチャー(Crips)のステップなんですが、その背景も含めて「あ、これが自分のやりたかったスタイルなのかな」としっくりきたんですよね。
よくよく考えたら、小学生の頃から『Red Hot Chili Peppers』が大好きだったのですが、彼らもカリフォルニアのバンドじゃないですか。だから、根っこの部分で西海岸のバイブスみたいなものが自分に合っていたのかもしれません。
「本物」になれない葛藤の果てに。海を越えたカルチャーに対する、彼なりの向き合い方
──とはいえ、日本人が海外のカルチャー、特にギャング由来のスタイルを踊ることに対して、葛藤はありませんでしたか?
roto:かなりありましたよ。InstagramのDMを通じて「日本人のくせに」とか「文化の盗用だ」と言われることも、未だにありますし。でも、ある時ふと気づいたんです。「どう頑張っても本物にはなれないな」と。 僕は日本の恵まれた家庭で育ったし、彼らのような過酷な環境にはいない。でも、だからこそ「ただのファンとして、好きでやっているんだ」と開き直れる部分もあるのかなって。
──開き直る、というのは?
roto: これはひとつの例ですが、僕、「タコライス」が好きなんですよ。タコスってメキシコの本場の料理じゃないですか。でもタコライスは、そのタコスの味付けを日本のお米に合わせて沖縄で生まれた、日本オリジナルの料理ですよね。
僕のダンスも、ある意味でタコライスみたいなものでいいのかなと思うんです。本場の味をリスペクトしつつ、日本人の感覚でアレンジしたもの。それを「偽物だ」と卑下するんじゃなくて、ひとつの新しい価値として楽しんでもらえたらいいなと。僕は本場の「タコス」にはなれないけど、きっと「タコライス」にはなれる。最近はそんなふうに思えるようになりましたね。
──なるほど。単なる真似ではないからこそ、面白いと。
roto: 実際に、本場のレジェンドであるCJ Macというラッパーが来日した時に、ステージに上げられてC-Walkを披露する機会があったんです。そこで「お前かなりヤバいな、続けろよ」と認めてもらえて。
また、Snoop Doggが僕の動画をInstagramでシェアしてくれたこともありましたが、結局、本気で好きで突き詰めていれば、海を越えても伝わるものがあるんだなと思うんです。だから今は、「タコライス」みたいな自分のスタイルも、悪くないなって思えるようになりましたね。
「聖域」の壁を壊す。アングラの魂でメジャーを制覇するために
──最後に、今後のビジョンについて教えてください。
roto:今のダンスシーンは、テレビやメディアに出る「エンタメ層」、振付などを行う「コレオ層」、そしてクラブなどで踊る「アングラ層」になんとなく分断されている気がするんです。僕はアングラ出身ですが、これからはその壁を壊して、オーバーグラウンドに行きたいな、とも思っていて。
アングラにはカッコいいダンサーがたくさんいるのに、彼らの中には、お金を稼ぐ仕組みがなくてバイト生活をしている人も多い。僕がSNSやメディアに出て成功することで、「こういう稼ぎ方や見せ方もあるんだ」というひとつのロールモデルになれたらいいですね。
──かつてはメディアに出ることを敬遠していた時期もあったとか。
roto: 確かにありましたし、今もそれについて葛藤していないと言えば、嘘になるかもしれません。昔は「テレビに出てるやつなんて……」と尖ってましたね。でも、Snoop Doggだって料理本を出したり映画に出たり、キャッチーな活動をしているけどカッコいいじゃないですか。
変なプライドを持ってしまうことでチャンスを逃すより、何でもやってやろうとは感じています。極論、「どうせ死ぬし」と最近よく思うんです。どうせ死ぬなら、人の目なんか気にせず、アンダーグラウンドの矜持を持ったまま、メジャーの舞台で思いっきり暴れてみるのも悪くないかなと。今はそんなふうに思っています。
PROFILE
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roto
ダンサー/クリエイターとして、様々な領域で活動している。
SNS総フォロワーは300万人超。
Snoop DoggやICE CUBEといったレジェンドアーティストのSNSにも多く取り上げられている。millennium parade “bon dance” MV モーションアクター
King & King “Pull up” MV 出演
KDDI au CM 出演
.ENDRECHERI. 堂本剛ライブ「REBORN」ダンサー出演





