UPDATE : 2025.09.10

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#ART & CULTURE

SUPERFUZZ MUSIC vol.10

Text:TAISHI IWAMI

すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がクラウドの心を一つにする。前情報のない無名のアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブがフロアを大いに盛り上げる。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターが、“オルナタティブ”をテーマに、タイムリーなアーティストやおすすめのニューリリースをテキストとプレイリストで紹介します。

Deki Alem『Forget In Mass』

スウェーデンはゴーテボリ出身の双子、SammyとJohnnyを中心としたプロジェクトがデビューアルバムをリリース。スウェーデン発ですがもっとも大きな影響源はUKに。独特のダークネスや陰鬱とともに、ポストパンク、ダブ、ヒップホップ、ソウルなどさまざまな音楽が混ざり合う。そこは90年代のブリストル。Massive  Attack、PortisheadやTrickyらトリップホップを根城にしたならず者が、ストリートやダンスフロアを魅了する。

不穏で生々しいベース音とブレイクビーツ。トリップホップのど真ん中を貫く「Insane」から、激しさとスピードのギアを上げてビッグビートやレイブカルチャーに向かうような「Fun」~「House Fire」の流れは名刺代わりと言っていいでしょう。ラスト3曲「Stray Dog」「Tip Of Your Toungue」、「Mr Man」ではレゲエ/ダブへの色とりどりなアプローチを見せながら「Insane」に繋がっていく、すなわち無限ループアルバム。ロンドンやベルリンなどでも注目を集め始めており、これからの躍進が楽しみな存在です。

yahyel『In Amber』

東京を拠点に活動するyahyelが4thアルバムをリリース。彼らは今年で結成10周年を迎える。2010年代、エレクトロやダンスミュージック/クラブミュージックと歌もの、すなわちポップミュージックが接近し、ポストダブステップ、エレクトロR&Bと呼ばれるような新感覚の音楽が生まれていった世界と共鳴する1stアルバム『Fresh &Blood』。その路線に厚みと綿密でプログレッシブなプロダクションが加わった2ndアルバム『Human』。生演奏にフォーカスし、ライブでも有機的なコミュニケーションのエネルギーが強まった『Loves&Cults』。それら過去のアルバムごとに獲得した魅力を融合した集大成、プラス新たなフェーズをを示すような作品に。

「No Other Cars」はライブだけでなくレコーディングにも生ドラムとギターを採り入れ、「Four」のようなロックバンド然とした曲も制作した前作と、1stアルバムのシンプルで余白のあるサウンドを、掛け合わせシナジーを起こしたよう。1stや2nd期のようでありながら、ダンスホールレゲエというyahyelのダークネスとはもっとも遠いところにあるようなビートを採り入れた「Ya」、濃い味のポップなシンセリフを軸にハイパーポップに接近した「Daffodils」など、色彩の豊かさも本作の特徴。そしてそれらは打ち込みから生演奏というプロセスを経て、ドラムにおいてはふたたび生演奏を止め、アナログシンセを大胆導入したことによって作られたという点も興味深い。そこから10月12日、ZEPP SHINJUKUでの10周年ライブではどのようなパフォーマンスを披露するのか、今から楽しみです。

Master Peace「There’s No More Underground」

ロンドン出身のアーティスト、Master Peaceのニューシングルは一撃必殺のビッグアンセム。先にBandcamp〜公式ホームページでの無料ダウンロードサービスを実施したうえで、サブスクでも公開されました。インディーロック/インディースリーズやポストパンク、ダンスパンク、ソウルやファンクなどさまざまなジャンルを横断してきた彼ですが、今回はオールドスクールで混じり気のないパンクソング。そこにはどんな意味があるのか。

リリックを追ってみると、アンダーグラウンドやグラスルーツ文化へのリスペクトを込めつつ、その枠を飛び出してメッセージを発信し続けることへの決意を感じる。それが、彼の作品中、もっともアンダーグラウンドのエネルギーに満ちたDIYで粗削りな曲だという力強さに高まります。クラブで爆音、最高に気持ちいいだろうな。そしてライブが観たい、今いちばん来日してほしいアーティストです。

UKガラージが再燃しインディーミュージックやポップミュージックとクロスする。数あるその手の曲の中でも飛びぬけて上がったのはBakerの新曲。Tame ImpalaやBlood Orange、Peaceといった2010年代の重要インディーアーティストが素晴らしい新曲をリリースしてくれたことも嬉しい。SoulwaxやFelix Da Housecatなど2000年代エレクトロクラッシュを彩ったアーティストが新たなシグネチャーを打ち出していることも興味深い。そしていまイチオシのニューアーティストはJane Leo。テキサスはオースティン出身の2人組で、80年代のニューウェーブやエレポップ、エレクトロパンクをインディーカルチャーの今に落とし込むセンスが最高です。

この連載も今回で10回目、番外編もあわせると12回、そしてもうすぐ1年。じわじわと気にしてくれる方も増えてきて嬉しい限り。そしてここで紹介しているような空気をパーティでも味わえる『SUPERFUZZ』も毎月開催しているので、ぜひ一度足を運んでみてください。

INFORMATION

  • SUPERFUZZ - Ailternative, Indie &Raw Disco Party

    日程:2025年9月12日金曜日

     

    会場:渋谷club Malcolm

     

    オープン:23時30分~5時

     

    入場料:2000円(1ドリンク含む)

     

    DJ:KEIGO / TAISHI IWAMI

PROFILE

  • TAISHI IWAMI

     10代の半ば、ファッションに対する自我が芽生えるとともに、ロックンロールやパンク/ポストパンク、インディーロックといったロックミュージックのディグに明け暮れるように。そして街で手にした1枚のフライヤーがきっかけで、そういった音楽の流れるクラブへ。お洒落でカッコいい人たちがダンスに興じるフロアに魅せられ、DJを始める。2019年にオルタナティブミュージックパーティ『SUPERFUZZ』を立ち上げた。

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