すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がクラウドの心を一つにする。前情報のない無名のアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブがフロアを大いに盛り上げる。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターが、“オルナタティブ”をテーマに、タイムリーなアーティストやおすすめのニューリリースをテキストとプレイリストで紹介します。
Happy Mondays『Step On (Paul Oakenfold Remix)』
1980年代後半。シカゴやニューヨークで発展したハウスは、スペインのイビザ島へと渡り、ほかさまざまなジャンルの音楽とともにプレイされた。そのことに刺激を受けたUKのDJたちは、自国でレイヴを軸にしたムーブメント、セカンド・サマー・オブ・ラブを巻き起こし、その流れに多くのロックバンドが触発されマッドチェスターに繋がった。そんなシーンを象徴するバンド、Happy Mondaysの代表曲「Step On」を、同曲のオリジナルプロデューサーであり、セカンド・サマー・オブ・ラブの中心にいたDJ、Paul Oakenfoldが35年越しにリミックス。
アシッドハウス×サイケデリックロック。レイヴ/クラブカルチャー×ロックバンド。そんなクロスオーバーの原点と、そこから積み重ねられてきた歴史に感動しつつ、この気持ちよすぎる音の前ではウンチクなんてどうでいい。今この瞬間ただクレイジーになっていく。“たかが文脈”、それでいい。とは言え、“されど文脈”も大切に、少し歴史の変遷に触れてみることで世界は広がる。私はそんな感じでダンスフロアから抜けられなくなり、DJを始めたんだなあとしみじみ思う。原曲はずっと途切れることなくかけ続けてきたし、このバージョンもかけ続けそうな予感。ということで、パーティで会いましょう。
Automatic『Is It Now?』
私たちSUPERFUZZが昨年11月末から12月にかけて日本に招聘した、LA発の3人組、Automaticが3rdアルバムをリリース。私たちがメンバーにインタビューした際に、ベーシストのHalleは「ある意味で自分たちを制限することによって創造性や独自性を引き出すことが、制作の起点になっています」と話してくれましたが、その引き算の発想、ミニマリズムがさらに極まった内容になっています。
Halleの言葉を土台に、パンク/ポストパンクやロックンロールに受けた衝動を研ぎ澄ました1stアルバム『Signal』。スペースエイジを思わせるレトロ宇宙的世界観を描き出した2ndアルバム『Excess』。1stのタイトな魅力と2ndの表現力が絶妙なポイントでクロスする。そこに世界中のフェスやライブハウスでのパフォーマンスを経て獲得した、シンプルながらも豊かなグルーヴが加われば無敵。持ち前のノスタルジックなメロディとともにパーカッションを効かせたダンスナンバー「Black Box」や、ブレイクビーツからの影響を挟みこんだ「Mercury」、サディスティックでスリリングなミニマルパンク「Treminal」など、ダンスフロアを揺らすばっちり入っていて、パーティの現場にもマストな1枚に。
Sisters In The Velvert『Mother’s Octave』
東京都内を拠点に活動するバンド、Sisters In The VelvetがニューEPをリリース。90年代のオルタナティブロック/グランジ直系のサウンドを鳴らしていた初期から、ポストロック、フォーク、ソウル、ジャズといったさまざまな音楽からの影響も表現に落とし込みながら、オリジナリティを追求したフルアルバム『Leaves』を経て、明らかなネクストフェーズへ。
Sisters In The Velvetとは。そのオリジナリティやシグネチャーになる音を意識的に追い求めてきた時期を経て獲得したスキルやリテラシーがあってこその、ゴールに捉われない即興的で感覚的な作品だと感じた。呼吸のように出てくる卓越したメロディやアンサンブル、録った瞬間の生々しさにこだわったであろう人間味のあるサウンドプロダクションにドキドキする。システマチックなコミュニティが混在する、冷たくてわけのわからない世の中において、もっとも優しくて温かい場所がここにある。12月17日には渋谷WWWでワンマンライブも。これは楽しみだ。
今回は年末パーティーシーズンということで、ダンスフロアを意識したテクノやベースミュージック、ハウスやディスコパンクの新曲を盛り込みながらお届け。
そして、この連載も今回で1周年。続けて来られてよかった。みなさんありがとうございます。ディグという私の趣味であり日課を凝縮してお届けするパーソナルな連載ではありますが、誰かの刺激や気づきになっていれば幸いです。そして、これからもよろしくお願いします。
こちらはおまけ。先日、原宿のTokyo Beer Labで公開収録したDJの映像も貼り付けておきます。ディスコパンク、インディー、サイケデリックを主体にした1時間のミックス。ぜひ空いた時間に、作業中に流してくださいね。
次回SUPERFUZZは12月5日の金曜日。渋谷Club Malcolmにてお待ちしています。
INFORMATION
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SUPERFUZZ - Ailternative, Indie &Raw Disco Party
日程:2025年10月17日金曜日
会場:渋谷club Malcolm
オープン:23時30分~5時
入場料:2000円(1ドリンク含む)
DJ:KEIGO / TAISHI IWAMI





