富士山の麓に鎮座し、1200年以上の歴史を紡いできた「富知六所浅間神社」。その静謐な境内に、ストリートの風が吹き込んだ。
今回のFREAK MAG.は、タトゥーアーティスト/グラフィックデザイナーのTAPPEI氏による奉納ライブペインティングを取材。彼のトレードマークである「天使のキャラクター」は、いかにして日本の伝統信仰と融合したのか。旧知の仲である編集部・Editor Tとの対話から見えてきたのは、単なる話題作りではなく、場所と表現が共鳴し合うための真摯なリスペクトの形だった。
一見対極にある『伝統』と『ストリート』が交差した、~富知六所浅間神社×TAPPEIライブペインティングの様子~あの場所でしか生まれ得なかった表現の記録をレポートする。
FREAK MAG.:TAPPEI、素敵なライブペイント楽しかったよ!
TAPPEI:はい、ありがとうございます!
FREAK MAG.:今日はFREAK MAG.的な視点で、今回のイベントについて聞けたらなと思ってます。
TAPPEI:はい!
信仰心と「天使」のモチーフ
FREAK MAG.:最初に、堅苦しい感じではない雑談なんだけど、TAPPEIって信仰心あるの?
TAPPEI:うーん、すごく特別強いってわけではないですね。例えば、お天道様が見てるよ的なことあるじゃないですか?悪いことしたら返ってくる、っていう。 それくらいの感覚です。
FREAK MAG.:なるほど、原始宗教的な大いなる力(自然)に感謝とかおそれを感じるとかかな?
TAPPEI:そうですね。特に何かを信仰しているわけじゃないって感じです。
FREAK MAG.:TAPPEIの主なモチーフの一つに「天使」じゃん? 天使と神社って、一般的な宗教の表現からすると違う文化で、日本人特有のごちゃ混ぜの宗教観がないと「神社×天使」って成立しないと思うけど、それって考えたことある?
TAPPEI:正直言うと、僕の中では「天使のキャラクター」って言ってるんです。 「天使」そのものってわけではなくて。 天使という括りにしたら、色んな方に失礼な絵を描いてる可能性はあるので、正直僕も気にはしていたんです。
今回お話いただいた時にも、最初は天使のキャラクターを入れずに作ろうかなと思ったんですよ。 あのキャラを使わずに描こうと思ったんですけど、「TAPPEIさんの思うようにやっていただいて大丈夫です」って言っていただいたんで。じゃあ、そこは見ている人に委ねるという形で使わせてもらいました。
FREAK MAG.:表現の仕方が難しい時代だし、そこを突破できるのって絵描きとか彫り師だと思っていたから、TAPPEIの挑戦が嬉しかったな!
神社という場所と「精神的な枷」
FREAK MAG.:TAPPEIって基本、ストリートの文脈で活動してきたよね。
TAPPEI:そうですね、多かったですね。
FREAK MAG.:今回「神社」っていうお題が入ってきた時、内面とかアウトプットに関して変化はあった?
TAPPEI:ありましたね。 普段はよりハードな表現をするタイミングもあるんですけど、それはもちろんしないでおこうと思ったし、「タトゥー」彫っていて、「天使」のキャラクターを使う中で、人を馬鹿にするような表現は一切やめようって気をつけてやりました。今までのコラボレーションよりも、すごく緊張はしましたね(笑)。どう見られるかなとか。
FREAK MAG.:今までのコラボレーションでのデザイン的な制限と、今回自分に課した「精神的な枷」みたいなものがあった企画って過去にあった?
TAPPEI:精神的な枷は今までなかったんで、すごく難しかったし、ライブペイントにしても何描こうかとすごく考えて。普段事前にあんまり決めないんですけど、ここでしか描けない絵が描けるんやろうなっていうのはありました。 制限があるのは、むしろ新しいことができるのかなって。
歴史ある場所でのプレッシャー
FREAK MAG.:1200年以上の歴史がある神社、地域に根ざした場所。ぶっちゃけプレッシャーはあった?
TAPPEI:結構ありましたね。来た人どう思うんやろうなとか。でも、宮司の櫻井さんと話してたのは、「TAPPEIさんがその日にいます」よりも「絵を描いてます」の方が、来た人も「あ、この人は見た目すごい変わってるけど、絵描きの人なんだ」って思ってくださるし、その方がいいって言ってくださって。それなら全力でやろうって。 神社特有の、「大いなる力」みたいなものはありましたね。 参拝もさせてもらって、気が引き締まりました。
FREAK MAG.:その「大いなる力」ってTAPPEIの言葉で言うとなんだったのかな?
TAPPEI:プレッシャーよりも、終わった時に「頑張れよ」って背中を押してくれてるような気持ちになりました。 「尊敬するオトン」みたいな(笑)、自分を生み出した何かというか、自分をバックアップしてくれるような力を感じましたね。
「奉納ライブペインティング」と絵馬のデザイン
FREAK MAG.:今回、ライブペインティングを「奉納」と謳っているけど、TAPPEIの考える「奉納」の意味を聞かせてくれる?
TAPPEI:お祓いを受けてから描かせてもらったんで、お客さんに見られてるっていうのはもちろん、神様に見られてるっていうのを意識して描き上げた作品を納めることが「奉納」ですかね。
FREAK MAG.:デザインしたプロダクトについても聞きたくて。今回象徴的なのは「絵馬」だと思っていて、参拝者の方が願いを託すものを作るのに込めたメッセージってある?
TAPPEI:まずは何を願う絵馬にしようと考えましたが、願い事は見る人に委ねることにしました(笑)。 僕、ストリートでずっとやってきて、まさか神社で絵馬作らせてもらうなんて考えもしなかったので。和風全開にするのも違うなと思って、普段のデザイン感を残しつつ、絵馬としても気持ちを込められる表現を意識しました。
伝統とストリートのクロスオーバー
FREAK MAG.:最後に、日本の伝統的な信仰の概念と、ストリートアートのクロスオーバーについて聞きたいんだけど、終わってみての感想はどう?
TAPPEI:僕はタトゥーに関してもそうなんですけど、無闇に話題が広がってほしいっていう気持ちが全く無いんですよ。
「これやったらオモロなるで」って、ノリでやるのは良くないと思うんです。 「こんな形でもできるんだ、ありがたいな」っていう気持ちでできるなら良いんですけど、馬鹿にする気持ちが絶対出ちゃダメだと思うんです。
長い期間、僕らが生まれるよりずっと前から大事にしてる人がいる場所に、失礼になっちゃいかんなって。今回は、ビジネスライクじゃなくて、「やったら良さそうですね、楽しくできそうですね」って感覚で始まったから、それがありがたかったですね。
FREAK MAG.:クラブで「ワッツアップ!」してやろうぜっていうノリとはちょっと違うってことだね。
TAPPEI:そうですね。リスペクトを込めて考える思いもありつつ、根底にあるフィーリングも両立したら、こういうことはいいんじゃないかなって思ってます。





