Memories ¥0
誰もが「自分」という入れ物の中で生きている。全ては自分というフィルターを通して知覚される。それぞれ目の色が違うのだから、そこにあるものに色がついたり、歪んだり、美化されたりすることもあるだろう。それがゴミかどうか、その分水嶺もまた、人間それぞれの基準で引かれるものだ。このゴミ/写真を拾った時のことを、加賀美さんはこう話す。
「サンフランシスコのミッション地区で拾いました。気の合うお友達と遊びに行ったんです。2週間くらい家を借りて滞在しました。古着屋やフリマを巡ったりするんですけど、朝散歩しながらゴミを拾うのも日課になるんですよね。サンフランシスコにはゴミがたくさん落ちていて、ベッドとかおもちゃとか、おもしろいものも多い。そこで、段ボールに詰まった家族写真を見つけたんです。知らない人の写真が大量に落ちていることって、なかなかないじゃないですか。想像しちゃうんですよね。どうしてここに捨てられているんだろう、って。ゴミって呼ぶのもちょっと悪いな、とか。でも確かに捨てられていて。そういうことを考えながら、ひとかたまりだけ、中身を見ずに拾ってきたんです。なぜか全部ボクシングの写真でした。」
ホセ・メンドーサは、メキシコシティから電車で40分ほどの街に生まれ、タコスのストリートベンダーを営む母の元で育った。生物学上の父親の顔は知らない。兄二人、妹二人に挟まれ、兄弟のちょうど真ん中として、日々の食べ物にも事欠く、されど不幸ではない生活を送っていた。ホセが10歳の時、転機が訪れる。母の作るタコス(店名は、MOM’S TACOS)がひょんなことから評判を呼び、行列が絶えなくなったのだ。6畳一間で家族とともに寝起きする生活から一転、少しだけ広い家に引っ越したと思ったのも束の間、大手資本がMOM’S TACOSに目をつけ、屋台ではなく実店舗を構えることが決まった。場所はなんと、サンフランシスコだ。数年の間にホセの生活は激変した。三つ年上のカーロス・リベラと出会ったのは、そんな頃だった。カーロスはこう言った。「坊っちゃんにはわからないよ。俺は生きるために拳を握り、優しくあるために拳を振るうんだ。」ホセがボクシングへとのめり込むきっかけとなったのは、紛れもなくその言葉だった。(続く)
これらは全て、私の歪んだフィルターを通してこの写真/ゴミを眺めた妄想です。
拾った人:加賀美健
拾った場所:サンフランシスコ
素材:紙、インク
※FREAK MAG.はゴミ拾いを推奨しています。
PROFILE
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加賀美 健
現代美術作家。1974年、東京都生まれ。
社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的発想に変換し、彫刻、絵画、ドローイング、映像、パフォーマンスなど、メディアを横断して発表している。
2010年に代官山にオリジナル商品などを扱う自身のお店(それ自体が作品)ストレンジストアをオープン。
日課の朝のウォーキングの際に面白いゴミが落ちていないか目を光らせながら歩いてる。





