唯一無比。つまり、誰にも似ていない表現性やセンスをまとっている音楽家の装い。そのファッションスタイルには、どんなバックグラウンドとストーリー、譲れないこだわりがあるのかを、フォトセッションとインタビューで紐解く連載。
前回に続き高岩遼が登場。舞台は3Fのおもちゃ屋から、4Fのジャズバーへ移動。この日のために着下したというセットアップに身を包んだ高岩が、フランク・シナトラへの憧憬と自らが貫くべき矜持を語ってくれた。


このセットアップは今日の撮影のために着下ろしたドン小西のオリジナルブランド、FICCEのデッドストックです。「Brother」の常連のお姉さまがプレゼントしてくれたんです。スーツへの憧れを覚えたのは高校2年のときにフランク・シナトラに出会ってからですね。

当時の俺は黒人への憧れが強すぎていつか自分も黒人になるもんだと思っていたくらいなんですね(笑)。地元のTSUTAYAによくある『男性ジャズボーカル100』みたいなコンピレーションが990円で売っていて。ナット・キング・コールとかルイ・アームストロングなどに並んでシナトラの曲が入っていたんです。

最初にシナトラの曲を聴いたときも「こんなに上手くてカッコいいボーカリストは黒人に決まってんだろ」と思ってピクチャーを見たらイタリア系アメリカ人で。「こんなにクールな白人のボーカリストがアメリカにいたんだ……」って自分の中での常識が覆った瞬間でした。
シナトラはアイドル的な人気を誇る一方で、マフィアとの関係などダークな噂がついて回る人でもあって。当時、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』や『ゴッドファーザー』、『グッドフェローズ』などのギャングモノの映画をすげぇ観ていた自分にはそういう面も刺激的でしたね。


やっぱり自分が憧れるアーティスト像として、不良性はすごく大事にしているポイントですね。
でも、そのへんのチンピラみたいなカジュアルな不良には興味なくて。なんていうか、組織のトップはドラッグの売人にはならないじゃないですか?だから、俺はべつにドラッグをやってるやつを否定はしないけど、自分は一切興味がないです。いいお酒、いい女、いい葉巻に囲まれている組織のトップが一番カッコいいとずっと思ってる。とにかく自分が一番カッコよくセクシーな生き方をしたいから。ジャズバーのオーナーって響きがカッコいいと思うから「Brother」もオープンしたし。でも、そこにひと笑いほしいからおもちゃ屋もやっているのが高岩遼って感じですかね(笑)。そういう意味でもずっとキッズなのかもしれないです。

俺は上京する前から「俺はスターになる」ってどれだけ人にバカにされても言い続けて生きてきて。最近は「このままではただのビッグマウスで終わるんじゃねぇか?」って冷静になる自分も出てきたんです。でも、「Brother」をオープンしてこの場所や様々な活動でいろんな人と関わっていく中で「おまえは大丈夫だよ」ってみんな言ってくれるから。今はもう一度あらためて「俺はスターになる」って声を大にして言える自分がいます。
PROFILE
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高岩遼
歌手、エンターテイナー。 1990年8月27日生まれ、岩手県宮古市出身。
自身のルーツであるジャズからロック、ヒップホップまで、時代もジャンルもミックスさせたクリエイティブな音楽を表現する「ニュークラシックシンガー」。特徴であるディープボイスを武器に「ロマンティックストリート」な世界を魅せる。
18歳からジャズボーカリストとしてキャリアをスタートし、SANABAGUN.、THE THROTTLE、SWINGERZとして活動。2013年から2016年までの約3年間に行った路上ライブは4000回を超える。2018年ソロデビューアルバム『10』をリリースし、ソロ活動が本格化。 自叙伝『30』、玩具店『good junk store Brother』、ウイスキーバー『Brother』をオープンするなど、音楽だけにとどまらず、多岐に渡り活動の場を広げている。
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Brother / good junk store Brother
12月に2周年を迎えるジャズバー『Brother』と2月にオープンした『good junk store Brother』。両店ともに高岩がオーナーを務める。
東京都世田谷区太子堂3-15-5 バナナビル3F/4F