サブスクが主流になり、外でも家でも大量のコンテンツを消費できる時代だからこそ、何を観たらいいのか分からない!という人も多いのでは?「シネマフリーク!!」では、映画館で上映中の話題作から、ちょっとニッチなミニシアター作品、おうちで観ることのできる配信作品など数多ある映像作品の中からライターの独断と偏見で、いま観てほしい一本を深掘りします。
今回は、私的2023年のマイベスト映画『バービー』をピックアップ。ピンクで彩られたドリーミーな世界だけが延々と繰り広げられると侮るなかれ。ユーモアたっぷりに老若男女に共通する普遍的な人生のテーマを描いたパワフルなエンパワーメントムービーをご堪能あれ!
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
タイトル:『バービー』
監督:グレタ・ガーウィグ
脚本:グレタ・ガーウィグ、ノア・バームバック
出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、シム・リウ、デュア・リパ、ヘレン・ミレン
配給:ワーナー・ブラザース映画
2023年製作/114分/アメリカ
8月11日(金)全国ロードショー
<あらすじ>
どんな自分にでもなれる完璧で<夢>のような毎日が続く“バービーランド”で暮らすバービーとボーイフレンド(?)のケン。ある日突然身体に異変を感じたバービーは、原因を探るためケンと共に〈悩みのつきない〉人間の世界へ!そこでの出会いを通して気づいた、“完璧”より大切なものとは?そして、バービーの最後の選択とはー?
子供の頃のお気に入りはお人形遊び。タカラトミーのリカちゃんとバービー人形を持っていたわたしは、どこに行くにもその2体とのごっこ遊びが日課でした。いつも可愛くていろんな洋服を着こなす人形たちにオリジナルのストーリーを作り、想像できる限りの楽しくて完璧な毎日を来る日も来る日も一緒に過ごしたあの頃……。
そんなわたしと同じような幼少期を送った世界中の女の子たちがかつて頭の中で思い描いた着せ替え人形(バービー)の世界がハリウッドで実写化するというニュースを知った日から、楽しみにし続けてきた映画『バービー』が遂に日本でも公開されました!ハリウッドきってのスター俳優であるマーゴット・ロビーとライアン・ゴズリング演じるアイコニックなバービー&ケンのハッピー感MAXなポスターヴィジュアルや予告動画に感化され、劇場にはピンクをカラーコードに思い思いのおしゃれをして参戦するお客さんの姿も。
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ピンクに染まったワーナー・ブラザーズのロゴに始まり、人類(少女)とバービー人形の歴史の交わりがキューブリックへのオマージュたっぷりに描かれたプロローグののちに、色鮮やかなピンクの世界が幕を開けます。マーゴット・ロビー演じるバービー(以下定番バービー)が目を覚ますと、そこはバービーランド。ここは昨日も今日も明日も明後日も完璧な日が続く世界で、街にはたくさんのバービーとケンたちが笑顔で暮らしています。
1959年にアメリカで誕生して以降、時代の移り変わりとともに「You Can Be Anything(なりたいものになれる)」というキーワードを体現し続けてきたバービー。肌の色や体型、職業もさまざまなバービーがいるというのは映画の中でも再現されていて、医者やノーベル賞受賞者、最高裁判事に大統領までもがバービーだらけ!なかには、持ち主の子供に脚を最大限に広げられたり、髪を切られたり、落書きされた変テコバービー(我が家のバービーはこれです)も。バービーランドには、バービーの妹のスキッパーやケンの友達のアラン、おもちゃとしてはやりすぎということで廃盤になった妊婦のミッジなどレアなキャラクターもいますが、あくまでバービーの完璧な世界を彩るバイプレーヤーとして存在しています。
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とにかくニコニコ、キラキラ、ハッピーバイブス全開なバービーたちの姿につられて口角をあげつつ、おやおやと思うのがライアン・ゴズリング演じるケン(以下、金髪ケン)の存在。「ビーチ(海の人)」という謎の肩書きだけで仕事も車も家もなく、バービーの視線に入ろうといつも一生懸命なケンは、ことあるごとにバービーにアタックしては、無意識にないがしろにされるのがお決まり。だってここはバービーランドなんだから、バービーが主人公で当たり前。バービーはいつだって女の子の理想を体現したパーフェクトな存在というバービー至上主義の世界のなかで、ナイスな見た目しか取り柄のないケンは自分の存在意義を見出せずにいます。
ある日、定番バービーがふと“死”について考えた瞬間から均等のとれていた完璧なバービーランドは崩れ出し、朝起きると口臭が気になったり、セルライトができていたりとバービーにはあってはならない劣化が進んでいきます。どうにかしてすべてを元に戻すべく、人間界へと旅立った定番バービーと金髪ケン。ふたりが辿り着いた現実世界のロサンゼルスはバービーランドとジェンダーバランスや価値観が真逆の世界。バービーを作ったマテル社の重役は100%男性で、男性が女性を見下すのは当たり前。そんな男性優位な世界に異なる目線で衝撃を受けた定番バービーと金髪ケンは、それぞれの直感を信じてここから別々に行動してゆきます。
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『レディバード』『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』の気鋭女性監督グレタ・ガーウィグが脚本・監督を務め、私生活のパートナーでもある映画監督ノア・バームバックが共同脚本として参加している本作。ファンタジーなフェミニズム映画と思われがちな第一印象とは裏腹に、現実世界に二人が足を踏み出してからテーマはよりリアルに、普遍的なものへと変わっていきます。
女らしさや男らしさ、母親らしさに社長らしさ。だれかの決めた〇〇らしさのために、頑張ったり我慢をしたり、閉塞感やアンビバレントな感情を抱えて生きていくことを、「みんながしているから、仕方がない」と思ってしまうことはあるかもしれないけれど、本当にそれが正しいのか。誇張されたバービーランドと人間界の違いが複雑に絡み合うことで、自分の中の固定概念がぐるぐると掻き回されて、同性としてバービーに共感していたはずが、常に引き立て役にしかなれないケンに感情移入したり、はたまた現実世界で子育てや仕事のストレスを抱えるマテル社の社員グロリアの爆発した本心に自然と涙が溢れたり……。
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バービーの不安の種として描かれてきた老いという名の成長や人間ならではの複雑な感情は、生きていくうえで厄介になることはあるけれど、その一つひとつを乗り越えていくたびに自分らしさへと昇華して、人生を謳歌するための糧になる。映画のなかでさまざまな価値観を提示することで、異なる境遇の鑑賞者を置いてけぼりにすることなく肯定してくれる本作。劇中ではアメリカ映画ならではの皮肉たっぷりのジョークも満載なので人によっては刺激に感じることもあるかもしれませんが、根底には自分らしく、みんなで手を取り合ってより良い世界を作っていくためのポジティブなメッセージに溢れていました。
最後にビリー・アイリッシュやLizzo、バービー役として出演しているデュア・リパなどが参加した最高すぎるサウンドトラックも必聴。わたしはこの夏のアンセムソングスとしてヘビーローテーション中の日々です。ぜひ映画と合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか?
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