“A FREAK CHANGES THE WORLD(変わり者が世界を変える)”。なんともキャッチーで、ズバリと心の真ん中を貫いてくる言葉。
毎日欠かさずオリジナルのモンスターを描き続け、ゆくゆくこれまで生み出した命を数えてみれば、計8,000以上にも及ぶという。そんな “FREAK(変わり者)” こそが、モンスター作家・TOMASON氏である。
そんな同氏が、FREAK’S STORE 渋谷店に併設されたギャラリー・キュレーションスペース『OPEN STUDIO』にて、ポップアップイベント『A FREAK CHANGES THE WORLD』を開催中。気になる “変わり者” の催しを、レポート・インタビュー形式でお届けする。
なんとも賑々しく愉快な様子で『OPEN STUDIO』のガラスを飾るのは、これまでにTOMASON氏が描き続けてきたモンスターたち。
写真1枚目・左下には、今回のエキシビジョンによって生まれた「ヤーマンネイチャー(左、怪しげな草の形)」と「セプテンバーボーイ(右、ピンクのマスク)」が。“We bring you happiness(あなたに幸せをあげる)” といったハピネス感あふれるセリフも、とってもキュート。さぁ、中へ。
扉越しに見える、グッズの数々。見どころが満載で、どうにも目移りしてしまう。ここはひとつ、冷静に眺めていくとしよう。
トーキング機能付きで、手を押すと”ヤーマンネイチャー”が話しかけてくる。
足裏には、ポジティブなメッセージをプリント。気分を上げてくれること間違いなし。
魑魅魍魎、実に数多の “モンスター” たちを配したグッズがずらり。「魑魅魍魎」と言ってしまえば、なんだかゾッとしてしまうような印象を覚えてしまいがちだけれど、TOMASON氏が描くモンスターたちはどこか気が抜けているようなムードで、僕らを愉快にお出迎えしてくれるような気がする。正直、全然怖くないのだ。愛らしいのだ。
ニコニコ眺めていると、作者のTOMASON氏が、直接今回の見どころや想いについて、穏やかな表情で教えてくれた。
TOMASON:今回のエキシビジョンのテーマである『A FREAK CHANGES THE WORLD』は、「変わり者が世界を変える」という意味なのですが、まさしく『FREAK’S STORE』の名前と重なる部分があるなぁと思っていて。もともとそれは、サブタイトル的につけていたものなのですが、FREAK’S STOREとピッタリだよな、と思ったんですよね。
そもそも僕が開催するエキシビジョンには「TOMASON 〜〜〜」といったような形のタイトルを付けることが多いんです。ただ、せっかくFREAK’S STOREにて開催するということもあり、今回は文章の形で『A FREAK CHANGES THE WORLD』としました。
TOMASON:作品の中に描かれたモンスターたちは、同じ時間を生きているんです。同じ瞬間に、同じ星の上で、それぞれ違うことを話している。よく見ていただけるとわかるのですが、この世界には、太陽がないんです。だから、全部、背景が青色になっていて。夜の世界なんですよ。
太陽がなくなってしまった世界に、明るさを取り戻そうとするモンスターたち。いわばその姿こそが『A FREAK CHANGES THE WORLD(変わり者が世界を変える)』なんですよね。今回のエキシビジョンにて展示・販売している原画たちは、そんなイメージで制作しました。なんだか、彼ら(モンスターたち)を描いていくうちにだんだん腑に落ちていった、と言う方が正しいかもしれませんね。パズルのピースが合っていった、というか。
TOMASON:また、原画だけでなく、しゃべるぬいぐるみを作れたのが、今回特にうれしかった点ですね。これまで、Tシャツや絵本、図鑑、その他のマーチャンダイズは一通り作ってきたような感覚があって。でも、ぬいぐるみは、一度もなかった。キャラクターを描く人たちにとって、ぬいぐるみやフィギュアって、夢なんですよ。憧れであり、目標でもある。
TOMASON:僕、昭和あたりに作られていたような、怪獣のフィギュアが大好きで。いわゆる “ソフビ” ってやつです。アニメや特撮に登場する怪獣たちが象られたものなのですが、正直、原作の姿から遥かに遠ざかるような形でデフォルメされているんですよね。「色も形も全然違うじゃん……」って(笑)。製作者のごく個人的な意図がものすごく反映されていて、それがすごく好きなんです。偶然的に生まれた造形が、なんだか愛らしく思えてくるから。
今回作ったぬいぐるみも、そうでした。ファーストサンプルを見て「ちょっと違うけど可愛いな……」と思ったのも、正直なところ。その時の感情としては、全然ネガティブじゃなかったんです。ただ、言葉こそ矛盾してしまうけれど、4,5回のマイナーチェンジを経て完成した最終形は、やっぱり抜群に可愛かったんですよね。それを販売することができるのは、本当に幸せなことだなぁ、って。2011年から毎日描いているモンスターが、ぬいぐるみとなって世に出てきてくれるんですから。とっても感慨深いです。
TOMASON:少々唐突ながら、自分自身の話になってしまうのですが、僕、地方出身なんです。身の回りにクリエイティブなことをやっている人は、かなり少なかった。「絵で食っていくなんて無理でしょ!」って感じでした。正直。
ただ、そんな地元にも、僕のやっていることに興味を持ってくれたり賛同してくれたりする人が、事実として、いるんですよ。同級生がカレー屋さんをオープンした際に「TOMASONが看板を描いてよ!」と言ってくれたり。
TOMASON:自分の身の回りにて、少ないながらも横並びで「面白いことをやろう!」と言っていたような人たちが、今30歳ぐらいになって徐々に芽を出してきている。まさしく、世界が少しずつ、変わりつつあるんです。モンスターを描くことをずっとずっと止めなかったからこそ、きっと、こんなにも素敵な機会に巡り会うことができたんだ、と思いますし。
TOMASON:日々の暮らしにおいて生まれる思いのアウトプット手段として、僕には「モンスターを描くこと」がある。それは間違いありません。今回はじめて発表した「セプテンバーボーイ」なんかがそうなのですが、出会った人に対して感じたことが、モンスターの形になってアウトプットされることもあるんですよ。彼のモデルとなったのは、今回作ったビデオ(会場にて常に放映中)に出演してくれた友人。「フリーク」の概念に足が生えたような、そんな人ですね。とっても好きな友人です。
TOMASON:良いことを言おう、じゃないけれど、やっぱり何よりも「続けていて良かった」と感じるばかりですね。こうして素敵な機会に巡り会えたこと。そもそも、FREAK’S STOREのハシモトくん(写真右)が、僕の作品に熱烈な愛情を向けてくれたこと。たくさんの “FREAK” たちが肩を組んで、こんなエキシビジョンを開催してくれたこと。その全てが、きっと「やめずに続けてきたこと」から来るものなのだ、と感じます。
TOMASON:海外の方、子供たち、男性も女性も、あらゆる方々に楽しんでいただけたらいいなぁと思っています。幼き頃に触れてきた海外のカルチャーに影響された部分も、僕自身、とてもあって。うん、子供たちに楽しんでもらえたらすごくうれしいな。加えて、日本だけでなく、海外の方々にも楽しんでいただきたい。いろんな方々の心の中に “CHANGE(変化)” が生まれたら、それはすごく光栄なことです。『A FREAK CHANGES THE WORLD』の体現になるのかな、と。
INFORMATION
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TOMASON POPUP EXHIBITION
“A FREAK CHANGES THE WORLD”9.2 sat – 9.10 sun
at OPEN STUDIO