UPDATE : 2023.11.22

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#ART & CULTURE

My Roots is…
-ミュージシャンたちのスタイルのルーツを紐解く- vol.06 NAGAN SERVER

Photo/Text:Takao_okb

セックス・ピストルズ、カート・コバーンにはじまり、現代ではカニエ・ウエストやリアーナ、ブラック・ピンク、日本ではドラゴンアッシュのKJやKing Gnuなど。その時代を象徴する偉大なミュージシャンは、みんなファッションアイコンだ。

 

本連載では、この理論に基づき現代のファッションアイコン、そして次世代のファッションアイコンとなるミュージシャンを発掘し、彼らのファッション的ルーツを掘り下げていく。

 

第6回目は、ウッドベースを片手にラップを奏でる異色のミュージシャン NAGAN SERVER。その音楽スタイルもさることながら、ファッションシーンでも一目置かれる存在の彼に聞くスタイルの話をお届け。音楽もファッションもオリジナリティある彼が、どのように今のスタイルを形成したのか掘り下げていく。

洋服も音楽もルーツや時代背景までディグって
自分のスタイルへと昇華している

ーNAGAN SERVERさんのファッションスタイルについて掘り下げて行きたいのですが、コーディネートを考える時、どのようなことを意識していますか?

 

NAGAN SERVER:意識していることは、現行のものと古着を混ぜるっていうこと。新しいデザインでも、古いデザインでも良いものは良いと思うんですよ。自分が新しい、面白いと思えるアイテムやカラーには、率先して挑戦してる。その時代にしか生まれないものは必ずあるので、何者にも囚われず、その瞬間を楽しみたい。

 

ー今回のコーデについても教えてください。

 

NAGAN SERVER:今日は『Children of the discordance』のパンツに、50’sのギャバジャン など古着を組み合わせました。現行物ならではのシルエットに、ネイティブ柄が気に入ってます。あとは、個人的に普段は革靴が多いんだけど、今回は久々にadidasをチョイス。

ー先ほど、古着屋によく行くと言ってしましたが、どこの古着屋に行くことが多いんですか?

 

NAGAN SERVER:渋谷「GERALD」、奥渋「Awase」、裏原「PITTZZ」、学芸大「endress」、八王子「MARKET」など。まだまだ紹介したい場所あるけど、この辺りは以前からよくお世話になってます。最近、豪徳寺にオープンした「horos」も注目。買い付けもそれぞれヨーロッパ、アメリカなど全く違いますが、1着1着のストーリーを話してくれたり、どこも個性があって好きです。芯のあるショップは歴史も学べるし、更に服を好きになれる。ネットで買うこともあるし便利だけど、やっぱり足を運んで店員さんとコミュニケーションを取って購入し、情報を得ることがリアルだって思いますね。そこで知った情報から、さらに自分で時代背景をディグって!そういうところに面白さがありますよね。

 

ーちなみに現行の洋服だと、どんなブランドを着ることが多いですか?

 

NAGAN SERVER:日頃一番身に付けているのはREVERBERATEにT-MICHAELですかね。あとは、昔から一緒に動いて来た Tightbooth® も自身の音楽とファッションのルーツです。カッコイイ仲間が作ってるカッコイイ服に惹かれます。

ーNAGAN SERVERさんといえば、いわゆるラッパーっぽい格好じゃないことが多いですよね。そもそもファッションに興味を持ったキッカケはなんだったんですか?

 

NAGAN SERVER:小学生の時バスケをやっていて、その流れでジョーダンとか、バッシュに興味を持ったことがキッカケかな。それと同時に、ファッション雑誌が好きで、裏原のファッションとかよく見ていました。当時から、古着にモードを合わせるスタイルとかが好きで、今もその当時に好きだったスタイルがベースになっているんだと思います。

 

ー当時、買ったもので思い入れのあるアイテムとかってありますか?

 

NAGAN SERVER:小学4年生の頃に買ったラスタカラーのガチャベルト。その頃ってやっぱり自分では洋服が買えなくて、親に買ってもらったんですが、ファッションの芽生えだったかもしれないですね。

ーいわゆるラッパーらしい、Bボーイのファッションとかしなかったんですか?

 

NAGAN SERVER:高校の頃はずっとB-BOYファッションでしたよ。坊主にバスケシャツ着て、FUBUやPelle Pelle、FILAのベロアのセットアップ着てました。やっぱりバスケから入ったので、ヒップホップ・ブラックカルチャーに憧れはありましたし、今でも変わらずそこのリスペクトは大きいです。ラッパーで言えば何よりもNASのスタイルに憧れましたね。ファッションのターニングポイントは広島から大阪に引っ越してから、アメ村に集まるスケーターにもろ影響を受けました。同じスケーターでも、当時みんなスタイルが違う印象だったし、特定の誰かっていうわけでないないのですが、ストリートにいる人たちからの影響は大きかったです。

 

ーとはいえ、スケーターのファッションをしていたわけではないんですよね?

 

NAGAN SERVER:そうですね。大阪のスケーターがいろんな格好をしているように、ヒップホップをやっているから、B-BOYの格好をしないといけないという概念はなかったです。ただ、自分のスタイルが明確になったのはこの辺りからですかね。単純に洋服が当時から好きだったから、好きな洋服を着ていましたね。AC/DCのヴィンテージ の7部丈Teeを着て、ピンク・フロイドのビートをエディットしてラップしたりしていたので、当時から癖はあったんじゃないですか。「あいつは、ああいう奴だよね」って不思議なヤツって思われていたと思います。

ウッドベースとラップのスタイルを
構築したことが一つのターニングポイント

ー他と違うところといえば、やっぱりウッドベースを弾きながらラップをするライブスタイルですよね。ラップが先だったんですか? それともウッドベースが先だったんですか?

 

NAGAN SERVER:ラップが先ですね。音楽的なルーツで言えば、先ほども言った通りバスケをキッカケに知ったヒップホップ。バスケで使われていたサウンドだったんです。特にNASを筆頭に90年代のヒップホップの影響は大きいですね。当時は、まだ地元の広島にいて、周りではミクスチャーが流行っている中、自分はヒップホップばかりディグっていたんです。CommonとかA Tribe Called Quest、Raekwon いろんなヒップホップを聴いていたんですけど、ある時ベーシストRon Carterと、フランスのラッパーMC Solaar2人が、ウッドベースとラップを掛け合わせてライブをしている映像を見たんです。そのスタイルに衝撃を受けて、調べていううちにジャズにハマっていったんです。

ーヒップホップから、ジャズに行き着いた訳ですね。

 

NAGAN SERVER:はい。ジャズにハマってからは、毎日ジャズレコード屋、今なき(roundish music store)に通い詰めたんです。店長 神谷さんとも仲良くなって、いろんなことを教えてもらいつつ、サンプリングネタを探したりしながら、とにかくジャズにのめり込んでいったんです。でも、それだけじゃ足りなくて、やっぱりジャズを知れば知るほどウッドベースに魅了されて。どうしてもウッドベースを弾いてみたくて買ったんです。

 

ーそこからすぐにラップとウッドベースの二刀流に?

 

NAGAN SERVER:いえ、それは実は全然あとなんです。買ってから10年ぐらいあとですね。一回諦めて、長年ラップだけをやっていました。やっぱり、ベースも弾いたことがないやつが、いきなりフレットレスのベースを弾ける訳ないんですよ(笑)。習ったりもしたこともありましたけど、やっぱり難しくて。

ーもう一回やろうと思ったキッカケはなんだったんですか?

 

NAGAN SERVER:諦めてから友人がやってみたいとかで、貸したりもしていたんですが、その人たちもやっぱり弾けないって言って、結局自分の元に帰ってくるんです。それで、俺が弾いてあげないとなってなったんです。そこからは覚悟して練習し、とにかく1年後に1曲ステージで弾いてみようって決め、有言実行しました。

 

ーその結果が今のスタイルを作ったんですね。

 

NAGAN SERVER:はい。ラップとウッドベースなんて、脳みそが2つ3つないとできないんじゃないかな、本当は。だから時間もかかったし、苦労もしたけど、今のスタイルが生まれたのはよかったかな。オリジネーターは自分だって言えるので。

NAGAN SERVER:最初は、「何、はじめたの?」とか、「どこ向かってるの?」とかたくさん言われましたね。でも、俺からしたら、ヒップホップとジャズってファミリーだし、同じ血が通った音楽だから、逆になんでみんなわからないんだろうって思ってました。笑

まあ、新しい事なので理解や認識には少し時間掛かりました。今後もバックボーンあり気でこのスタイルを表現していきたいです。全然今からって感じですかね。

ー自分のスタイルを崩さずに続けた結果ですね。

 

NAGAN SERVER:そうですね。何をやるにでも、結局自分のメンタルが今どこにいるかによって変化するものだと思うから、人のせいもしないし、土地のせいにもしない。今はソロの活動もあれば、バンドの活動もある、HIMIとのHIMI TRIOの活動もある。どこで音を流しても、自分の音が出るし、自分の言葉が出るだけだから。どんな状況でも、自分のメンタルをコントロールできていれば、例えお客さんが少なくて盛り上がってなくても、良いライブだったって思える。何かのせいにすることはないし、全てをプラスに捉えて自分を変化させていけると思うんです。だから、今の自分のスタイルがあるのかなって思いますね。

ーでは、最後に今後の活動についても教えてください。

 

NAGAN SERVER:来年は音源リリースも沢山あります。 そして、今年UKジャズシーンに関わる重要なミュージシャン達とたくさん対バン、セッションしたので、来年ヨーロッパツアーをしたいです。これが今見据えているリアルな来年のチャレンジです。

PROFILE

  • NAGAN SERVER

    ヒップホップとジャズにルーツを持ち、ラッパー兼ウッドベーシストという異色の肩書き・キャリアを持つ音楽家。これまでに3枚のオリジナル・アルバムをリリースしているほか、精力的にライブ活動を展開。現在は、ソロ活動の他にフロントマンを務めるバンド『NAGAN SERVER and DANCEMBLE』、HIMIとのバンド『HIMI TRIO』の一員としても活躍。最近では、どんぐりずとのコラボシングル『a little question Shōtaro Aoyama Remix』をリリースし、『FUJI ROCK FESTIVAL’22』どんぐりずのステージ RED MARQUEEにて披露し大きな話題を呼んだ。他、日本が世界に誇るスケートボードプロダクション『TIGHTBOOTH』が制作するスケートビデオ『LENZ II & LENZ III』、 資生堂『マキアージュ』CM 、PARCO CM などへの楽曲提供。 FRED PERRYが企画する「ブリティッシュ・サブカルチャー」で特集、adidas Originalsが発信する「TOKYO CREATOR’S INSPIRATION Vol. 1」 に取り上げられている。22年3月に開催されたBillboard Live Osaka プレミアム公演で成功を収めた。

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