セックス・ピストルズ、カート・コバーンにはじまり、現代ではカニエ・ウエストやリアーナ、ブラック・ピンク、日本ではドラゴンアッシュのKJやKing Gnuなど。その時代を象徴する偉大なミュージシャンは、みんなファッションアイコンだ。
本連載では、この理論に基づき現代のファッションアイコン、そして次世代のファッションアイコンとなるミュージシャンを発掘し、彼らのファッション的ルーツを掘り下げていく。
第7回目となる今回は、SuchmosのHSU(小杉隼太)との共同制作したデビュー作「Swimmer」でデビューを飾ったシンガーソングライターのHaruy。現在はサポートメンバーに市川仁也(B / D.A.N.)、TAIHEI(Key / Suchmos、賽)、澤村一平(Dr / SANABAGUN.)を迎えて、精力的に活動中。
そんな彼女のファッションはSNSを通じて垣間見ることができるのだが、どれも個性的でキュートだ。どのようなルーツを持ち、どのようなスタイルやアイテムを好むのか。ファッションの変化が楽しいこの季節、今の気分と合わせて聞いた。

レインコートをワンピース風にアレンジ
ー今日のスタイルのポイントから聞かせてください。
Haruy:ポイントはSUBUのシューズです。これは今年から始まったフェス「EPOCHS」に出演した時にいただいたものなんですが、スタイルのアクセントになるかなと選んでみました。
ー確かにシルバーのカラーがインパクトありますね。さらに合わせたルーズソックスも似合っています。よく履かれるのですか?
Haruy:ルーズソックスはたまに履くんですけど、今日のは109で買いました。109なら絶対にあるだろうなって(笑)。


ーではワンピースはどちらのでしょうか?
Haruy:これは古着なんですけど、実はワンピースではなくレインコートなんですよ。それに友達がモールで作ってくれた人形をポイントで着けてみました。
ーレインコートなんですね!?
Haruy:そうなんですよ。以前、ポンチョのレインコートを雨の日に着たらめちゃ楽ちんだったんです。しかも大きい分暖かくて。それでいいのないかなと探していたところ、古着で見つけました。今日はレインコートとしてではなくワンピース風にしてみました。
ーその発想は考えたことがなかったので新鮮です。
Haruy:しかもこのレインコートは、ボタンのところが取り外しができるんですよね。そういった仕様もおもしろくてかわいいなって感じています。私服は古着が多いですね。


ー古着が好きなのですね。どこに見に行ったりしているのでしょうか?
Haruy:主にネットですね。ネットでなければ渋谷にあるitimiという古着屋さんに見に行っています。
ーHaruyさんのSNSを見ていると個性的なアイテムを選んでいるなと感じますが、好きなウェアやつい買ってしまうものはありますか?
Haruy:アームウォーマーかもしれないですね。かわいいのを見つけたらつい買っちゃいますね。バッグにコンパクトに入れておけるし便利なんですよ。例えば映画館に行って肌寒い時ってあるじゃないですか? そういう時にさっと出して着けることができますし、洋服は小さいバッグには入れておけないですからね。あとは色がかわいいものも気になります。私はあまり白黒系の洋服は買わなくて、今日みたいな淡い色が好きです。原色だと色が強すぎて顔が消されてしまう気がして……(笑)。

ーちなみに洋服を買うタイミングってどんな時ですか。
Haruy:常にチェックしているというよりは、ほしいウェアがあったらネットで探していますね。
ーでは音楽を作るタイミングはどんな時でしょう。
Haruy:音楽に関しては、常日頃からメロディや歌詞が思いついたらスマホのボイスメモに残しています。それを新しいものを作ろうとなった時に改めてチェックしながら作っています。なので欲しくなったら探す洋服と一緒で作る気持ちになった時に自分と向かい合っています。

フランス映画のファッションや色使いが好き
ーではHaruyさんのファッションのルーツについて聞かせていただきたいのですが、参考にしているものや影響を受けたもはありますか?
Haruy:大学で映画の勉強をしていたこともあって、映画が好きで。特にフランス映画が好きでファッションもそうですけど、色使いだったりも影響を受けています。
ーそのフランス映画で具体的な作品はありますか?
Haruy:ジャック・タチやフランソワ・オゾンが監督した作品ですかね。あとはアニエス・ヴァルダの作品は、色彩感覚やファッションがすごく好きです。中でもジェーン・バーキンが出演している『カンフー・マスター!』は、今観てもかっこいいなと思います。フランソワ・オゾンだと『焼け石に水』は、ファッションもかわいいですし、出てくる部屋もオシャレなんですよ。
ー『焼け石に水』はジャケットも素敵ですね。そういったフランス映画は、ファッションや色味に注目してしまうんですね。
Haruy:もちろん、ストーリーも好きですよ。特にアニエス・ヴァルダの作品は、女性や母であったりとひとりの人間として、アニエス・ヴァルダ自身の半分ドキュメンタリーな要素も入っているのですごくおもしろくておすすめです。

ーありがとうございます。では音楽のルーツはいかがですか。
Haruy:母が音楽好きだったので、R&Bやジャズがルーツになりますかね。主にアメリカの音楽だと思います。
ーではファッションが好きなミュージシャンはいますか?
Haruy:クルアンビンのベーシスト、ローラ・リーのファッションは好きです。ベーシストとしても好きですし、ステージファッションが全部かわいいんですよね。あとはフランスのアーティストでリンペラトリーチェというディスコバンドがいるんですけど、その人達のファッションは好きですね。ライブもおもしろくて素敵なんですよ。

心地良さと遊び心を大事に
ーファッションの話に戻りますが、季節によってスタイルは変わったりしますか。
Haruy:あまり変わらないですね。常にラフでいたいといいますか、身軽な服装が好きです。でも今年の冬はモコモコのブーツを履きたくて、毛がふわふわしたのがついているような、見るからに暖かそうなものが欲しいですね。
ー先ほどのアームウォーマーもそうですけど、ふわふわしたものに惹かれるんですね。ではファッションや音楽は自己表現のひとつだと思いますが、両方に共通していることはありますか?
Haruy:ともに心地良いというのは大事にしています。それでいてちょっとした遊び心じゃないですけど、かわいさもあることですかね。例えば今日のファッションだったらリングがそうなんですけど、これはガチャガチャでゲットしたピュレグミのリングなんです。こういった遊びが好きですね。あと共通していることといえば、両方とも体験したことや思い出が詰まっているということでしょうか。音楽は自分が体験したことや思い出に残っていることが曲に表れていますし、洋服だったらどれも思い出がある。シューズは出させていただいたフェスでの思い出、リングなら友達と一緒にやったガチャガチャであったりと、すべてが紐づいているんです。音と自分の記憶、洋服と自分の記憶というふうに。

ー思い出はいつまでも大切にしたいものですね。では音楽活動でいえばライブ衣装はどのように選んでいるのでしょうか。
Haruy:これも思い出のある話につながるのですが、衣装も友達や周りにいる方が作ったものをお借りすることが多いです。基本的に知っている方のものを思いも含めて大切に着させていただいていますね。
ー私服とライブ衣装は使い分けていますか?
Haruy:普段はなかなか着る機会がなさそうなものは衣装で着ていますし、シャカシャカした生地はライブでは着られないので普段着ていたりしてと使い分けはしていますね。



ーなるほど。最後に音楽活動の近況についても聞かせてください。
Haruy:今年は2ndEP『1414』を出せてもらってツアーも回らせていただきました。今は新しい作品を作っているところなので楽しみにしていてください。あと最近はDJとしても声をかけていただいていて、1年前くらいからいろいろな場所でプレイしています。今は1970年代や1980年代のディスコにハマっていて、そこに好きなアーティストのニュージーンズのリミックスを混ぜたりしています。SNSで告知しているので近く行く時は、遊びに来てくれたらうれしいです。

PROFILE
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Haruy
SuchmosのHSU(小杉隼太)との共同制作したデビュー作「Swimmer」でデビューを飾ったシンガーソングライター。現在はサポートメンバーに市川仁也(B / D.A.N.)、TAIHEI(Key / Suchmos、賽)、澤村一平(Dr / SANABAGUN.)を迎えて、2ndEP『1414』を7月にリリース。最近ではDJとしても幅広く活動を展開している。