グラビアアイドル、ジェンダーフリーブランド『Bushy Park(ブッシー・パーク)』を手掛ける渡辺万美さん。海外の『PLAYBOY』のプレイメイトでもあり世界的な活動を続けている。同時にグラビアをアートとして表現する『SCRATCH GIRLS(スクラッチガールズ)』というプロジェクトをプロデュースしている。
そんな渡辺万美さんがグラビアカルチャーの個性を発信する連載“グラビア・フリーク”がスタート。第1回目のゲストは渡辺万美さんにとっての“推し”でもある、あにお天湯さん! グラビアシーンの現状について話し合う。


あにおちゃんには最初から高いアート性を感じた
-渡辺万美-
渡辺万美(以下、万美):あにおちゃんはずっと推しなんですよ。だから、この連載の第1弾は絶対にお願いしたかったので嬉しいです。ちゃんと話すのは今日が初になりますね。簡単に自己紹介してもらっていいかな?
あにお天湯(以下、あにお):今はフリーでクラビア活動をしています。媒体を絞るようなことはせず、ヌードもやるし水着もするし、という感じで活動しています。今日はよろしくお願いします。

万美:最初は私がツイッターで反応したんだよね。あにおちゃんがデビューする前にグラビアっぽい写真を発信していて、それに「かわいい」って返して。グラビアデビューしないんですか? とか質問してたと思う。
あにお:そうでしたね! たしか私が19歳くらいだったと思うんですけど、あれは本当にビックリしました! すごく希望を感じました。
万美:その後、Bushy Park(渡辺万美によるジェンダーフリーブランド、ブッシーパーク)のポップアップに来てくれて挨拶したんだよね。今日はそれ以来かな。
あにお:今日もBushy Parkの下着をしているんですよ!


万美:ありがとう! あにおちゃんのことはもともと好きだったんだけど、最初からアート性の高いことをやっていると思っていて、ある意味、日本のグラビアアイドルっぽさがないように感じたのね。エロさがありつつもそれがアートに昇華されているように感じられのはすごいなって。しかも、私が反応したツイッターの写真は自撮りの写真で、若いのに脱ぐことに抵抗がないというか、グラビアアイドルとしての強さをそこに感じたんだよね。自撮りの写真1つにしてもカッコよさが表現されていたりするけど、なんでああいうスタイルでSNSをやろうと思ったの?
あにお:物心がつく頃から絵を描いていて、自撮りもその延長線上にあった感覚なんですよね。自分で絵をイメージして撮ってSNSに載せて、ということを自然にやっていました。だから単純に谷間だけを撮るという感じではなく、カッコよさも考えて自分なりに撮影していたんです。グラビアを本格的に意識し始めたのは、自撮りをSNSにアップし始めた頃からでした。

万美:同時に独特のレトロな風合いが最初からあるよね。あの感じも自分で見つけたものなのかな。
あにお:そうですね。ノイズが乗っていたり霧がかっているような写真が多いんですけど、それは私が写真の質感をいじるのが好きだからです。より良く見せたいと思ってやっていたことなんですけど、それが昭和っぽい感じとして見る人に受け入れられていったので嬉しかったですね。
ー今年の夏には初の写真集『月刊 あにお天湯』もリリースされましたが、まさに昭和のロマンが感じられるような質感でしたね。
あにお:私が大好きなフォトグラファーの松岡一哲さんが撮影してくれているんですけど、松岡さんの質感の中に私が飛び込んだようなタッチになっていると思います。自分としてもすごく満足していますね。
万美:うんうん、あれはすごくあにおちゃんと松岡さんの相性が感じられたね。表紙カットの柔らかい表情は、すごく2人が信頼し合っている感じが伝わるし、今まであにおちゃんをチェックしていた私としては新たな顔が見れたような気がしたよ。

あにお:たしかにそうですね! 私、グラビア撮影のときってけっこうカメラを睨みつけちゃうんですよ。万美さんはいかがですか?
万美:私は自分のスタイル的に強い女でいないと、というのがあったから意識的に真顔っぽいのは多かったかもしれない。あにおちゃんの写真集にしてもそうなんだけど、グラビアって本来カッコいいものなんだよね。カッコいい女性が1人で写真に映っているっていう。でも、今はその文化がちょっと変わってきちゃっている気がしていて……。そういえば、あにおちゃんがグラビア雑誌に初めて載ったのは何歳くらいのときなの?
あにお:事務所にスカウトされたのと、雑誌に誘われたのが同時期で19歳で『週刊プレイボーイ』に掲載してもらいましたね。もう少しで20歳ってタイミングだったんですけど、絶対に10代の方がいいからってことで駆け込みで(笑)。


万美:あるよね、10代の方がいいっていうの。私も17歳でグラビアをやって最初は週プレ(『週刊プレイボーイ』)だったんだよ。だから同じだね! そうやってグラビアの撮影で大変だったことは?
あにお:髪の色は黒髪でいじらないでほしいって言われたり、まつ毛のパーマをしていったらやめてほしいって言われたりしたのは最初ビックリしましたね。グラビアアイドルと言えばこう、という固定概念があってそこに当てはめられていくような感覚があって。
万美:そういうのはあるよね。好きな髪の色やメイクがあっても我慢して撮影されなくちゃいけないっていうのは私も苦痛でしょうはなかったよ。その反動で大人になってから反抗期がやってきたんだけど(笑)。
一同:笑。

こんなにもグラビアカルチャーについて考えている人がいるなんてビックリ!
-あにお天湯-
万美:あにおちゃんに聞きたいことがあるんだけど、脇毛を見せているでしょ? 私の時代にも矢吹シャルロッテさんっていう脇毛グラビアアイドルはいたんだけど。
あにお:え、そうなんですね!
万美:そう! 私は脇毛って好きなんだけど、日本では脇毛を見せるものではなくて、みんな処理するじゃないですか。そこであえて生やして見せようとしているのはなんでなの?
あにお:私の場合、体質的に脇の剃り跡が気になっちゃうっていうのもあって、事務所を退所したタイミングで『生やしてみるか!』と好奇心で思ったんですよね。伸ばし始めて知ったんですけど、脇毛って眉毛とかと同様に長さに上限があって、伸びきった状態のときに、夏になったら染めてもいいかも、と思い立ったんですよ。そういう感じで染めてみたら、もうこれが可愛くって。トイプードルが住んでいるような感覚になって、すっかり生き物のように感じられるようになったんです。
万美:ペット感覚なんだ(笑)。
あにお:はい。黒だとアレなんですけどピンクに染めたりしたら、もう手放すわけにはいかないなって気持ちになって。


万美:なるほどね、素敵だと思います。そういうところもあにおちゃんのカッコいいところだよね。じゃあ、グラビア仕事がきて剃ってくださいってなったらどうする?
あにお:う~ん、どうするんだろう。悩んできました。剃るかもしれないんですけど、事務所に所属してグラビアの仕事をやっていたとき、毎回ギャラをいただいたことがなくて。表紙になってもギャラ0円で、それが業界的に当たり前だって言われてきたんですよね。そのときから、型にはめられて仕事をしてギャラももらえないのってどうなんだろう? って疑問に思っているんですよ。脇毛を剃ってグラビアに出てもギャラなしっていうんだったら、ちょっと考えちゃいますね。
万美:ほらほら、こういうところなんですよ。第0回でも話しましたけどグラビアアイドルの子たち、お金をもらってないんですよ。


ーえ? 表紙にまでなってギャラ0円なんですか? そんなことあるんですか?
あにお:0円なんですよ。だから生活にならないですよね。仕事には不満はないんですけど、お金がないのは普通に困ってしまうから。
万美:普通の10代や20代前半の女の子が人前で身体を見せる行為ってすごく勇気がいることだし、そういう仕事なのにそれに対して報酬がないっていうのは問題だよね。しかも個性を抑えつけられるっていうんであればなおさらおかしいかなって。私はそういう現状をちょっとずつ変えていけたらいいなって思って連載をやろうと思ったんだよね。
あにお:意外とスタッフさんにも知られていないですよね。フォトグラファーの人にギャラ出ないんですよって話しても「そうなの?」って驚かれることが多いし、圧倒的に知られていないと思います。


万美:そうよね、うん。そんな中でグラビアのカルチャーを伝えていきたいと思ってやっているのが『SCRATCH GIRLS(スクラッチガールズ)』で、アート表現としてグラビアアイドルと一緒に活動していきたいと思っていて。日本独自の文化だしね、グラビアって。だから、良かったらあにおちゃんにも参加してほしいんですよ。
あにお:もう絶対にやりたいです、めっちゃ嬉しい。『SCRATCH GIRLS』を知ったときはすごくカッコいい! と思いました。これは希望ですよ。この活動もそうですけど、万美さんのメッセージを読んだときに、こんなにグラビアカルチャーについてしっかり考えている当事者の人がいるんだって思って。その心意気に感動したんです。作品も可愛いですしギミックやコンセプトもいいですよね。
万美:ありがとうございます。是非参加してほしい! そうやって、まずはグラビアアイドルという存在を日本にも世界にも知ってもらって。若い人にカルチャーとして広めていきたいと思っていますね。そして、いずれはグラビア写真自体が、そのアイドルの個性を活かしたエロスをファッショナブルに表現したものになっていったらいいなって。
あにお:飾っておけるくらいお洒落なものに。
万美:そうそう。それこそプレイメイトのお姉さんたちが表現しているようなものだったり。
あにお:本当にそうあるべきですよね。作品を作るんだったら、まだ見たことのないものを作りたいって思います。


万美:そうだよね。じゃあ、あにおちゃん的に表紙から巻頭まで撮影しようってなったら何をしてみたいと思う?
あにお:豪華ですね! そうですね、長めのネイルとカラフルなヘアスタイルは必須ですね。私、初表紙がヌードだったんですよね。文字で隠れていますけど。それはそれですごく可愛かったんですけど、表紙で取り返したいと思いますね。格好としては、1個1個見ているだけで楽しくなるようなアイテムを身に付けたいです。なんなら下着や水着じゃなくて葉っぱや石とかホイップクリームだけで可愛く撮影したいですね。何なら洋服じゃなくて葉っぱや石でずっと生活したいっていう願望があるんで。
万美:面白い(笑)。いいじゃないですか、いつかやりましょうよ、ホイップクリームとかで。
あにお:願望だだ漏れですいません(汗)。よろしくお願いします!

PROFILE
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あにお天湯
2000年生まれ、岐阜県出身。ツイッターにアップした自撮り1カットが注目を浴び、『週刊プレイボーイ』で初グラビアを実現。2023年6月に初の写真集『月刊 あにお天湯』を発表。現在フリーランスで活動中。連絡はinfo.aniotayu@gmail.comまで。
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渡辺万美
ジェンダーフリーブランド『Bushy Park(ブッシー・パーク)』ディレクター。
『SCRATCH GIRLS(スクラッチガールズ)』プロデューサー。ジュエリーブランド『Muff(マフ)』デザイナー。
グラビアを軸にファッションやアートと幅広く活動中。