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#ART & CULTURE

CYKのKotsuがデザインしてきたフライヤーを巡る個展“Residue!”の意義

Photo & Edit:Takao_okb

Text:Ryo Tajima

DJコレクティブCYKのKotsuと言えばグラフィックデザイナーとしての活躍も目覚ましく、特にフライヤーにおけるアートワークが特徴的。膨大な分量のフライヤーデザインを手掛けてきた。SNSなどでKotsuのアートワークが流れてくると、一発でそれを誰が手掛けているのがわかるし、個性的でカッコいい。Kotsuらしさが確かにフライヤーの上に表現されているのだから、実にすごいと思わされる。

 

このインタビューでは、1月28日(日)まで目黒のギャラリー月極で開催されている個展“Residue!”を巡って、Kotsuのルーツやメッセージ性について探っていきたいと思う。

キービジュアルが出来て
ようやく個展に向き合うことができた

ー今回の展示『Residue!』は2023年の夏に京都で開催した『Residue』の拡張展だそうですね。Residue=残留物、残滓といった意味合いですが、展示のコンセプトから教えていただけますか?

 

Kotsu:僕はフライヤーワークをメインにやってきたんですけど、フライヤーの存在理由って、イベントの情報を伝達することじゃないですか。告知することを役割としたメディアなので、そこに記載されたイベントが終了してしまったら本来の意味をなさないものになってしまうわけです、当たり前のことですけど。そのうえで、僕はフライヤーアートが持つ、アートとは少し離れたカジュアルな雰囲気が好きなんですよね。印刷されたフライヤーやポスターを家で見ると、その日の思い出や、当日の様子だとかがビジュアルイメージに保存されている感覚があるんです。だからこそ展示されたフライヤーの前で、来てくれた人が思い出を語り合ったりすることで、残された価値がフライヤーアートから浮き出てくるんですよね。それを『Residue』というステートメント的な言葉で表現することにしたんです。

ー京都の展示では『Residue』ですが、今回の拡張展では『Residue!』で、“!”が付いていますよね。これには何か理由はありますか?

 

Kotsu:これは階乗(数学における整数の積)を示す記号が“!”だからですね。例えば、4!=4×3×2×1=24になるんですけど、1つずつ小さい数字を掛け合わせていって最終的に大きな数字になっていくというわけなんですけど、その階乗の意味が好きで。それを展示に照らしわせると、過去を振り返って話し合い、その結果前進していくような気がするんです。だから、階乗の数式を展示のキービジュアルの左端に記載しているんですよ。

ーなるほど! また、展示のメイングラフィックには図形が描かれていますが、これは何ですか?

 

Kotsu:このボックスは、まさに『Residue!』の意図を示しているものなんです。キービジュアルをどうするか考えているときに友人宅で、ミカンを食べていたんですよね。そのときに友人はチラシを折り畳んでミカンの皮を入れるゴミ箱を折り紙で作ったんですよ。

 

ーよく、ご年配の方が作ってくれるような折り紙のボックスですね。

 

Kotsu:そうです。それを見た瞬間に『コレだ!』と閃いたんです。情報を伝えるという役割を終えたチラシが形を変えることで生まれ変わって新たな意味を持つというのは、僕のフライヤーワークとリンクすると感じてキービジュアルに採用することにしたんです。

ーそういうボックスだったんですね。その骨格がキービジュアルに昇華されたと。

 

Kotsu:はい。その思考で自分の心が整理できたような気がしますね。フライヤーは個人的に完全にはアート作品ではないし、自分の中ではカジュアルでライトなものだったから、それを展示物とするのはおこがましいんじゃないかって気持ちは実際にあって。でも、そのチラシのボックスは、視点を変えることで新たな形を得て前に進むことができるということを表しているわけで、それをキービジュアルに掲げることによって、ようやく展示することができたという感じです。完全に自分の心の持ちようの話なんですけど。『Residue!』では展示用に描き下ろしたグラフィックもありますが、このキービジュアルができたことによって、今まで以上にもっと先を見据えてやろうって気持ちにもなれましたね。

ーでは、これは展示の本質にもなってくると思うのですが、京都での展示も含めて、来場者とはどんな会話やコミュニケーションが生まれていますか?

 

Kotsu:「このときのイベント、最高だったよね」とか。グラフィックのディテールをほめてくれる人も多いですね。そこでデザインの意味を話したりするんですけど、本当に他愛もない会話が会場に生まれていて面白い限りです。展示した甲斐があると感じています。

自分のグラフィックはフライヤーという
プラットフォームがあってこそ

ーここからはKotsuさんの自身のことやアート性についても教えていただきたいです。デザインは何をきっかけに始めたんですか?

 

Kotsu:僕がDJを始めたのが10年ほど前で、自分が出演するイベントのフライヤーを好きな世界観のデザインにしたくて独学で始めたんです。以降、CYK(Kotsuが所属する4人組のDJコレクティブ)のパーティだったりアートワーク、ビジュアル関連は全部自分でやっています。

 

ーでは、人からデザインをオファーされるようになっていったのはいつ頃からだったんですか?

 

Kotsu:いつのまにか、でしたね。CYKのイベントもコロナ禍以前までは毎月のようにやっていたので、自分たちのグラフィックに加えて友人のイベントのものも作って、とにかく数多くデザインをこなしていました。そこで一気にスキルアップしていった感覚があります。

ーフライヤーのアートワークをつくるうえで何かこだわりはありますか?

 

Kotsu:やはりカジュアルでいい意味でライトなのがフライヤーの良さでもあるとも思うので、ガチガチでディテールの細部までこだわって作り込んでいくという感じではなく楽しみながらやっていますね。デザインは1日で仕上げてしまうことが多いです。Photoshopで作っているんですけど、その効果を試しながら、意外な色味になったら採用したりと、アプリとセッションするような感覚でやっているところはあるかもしれません。

 

ーけっこう短期間で完成まで持っていくんですね。

 

Kotsu:そうですね。あと、フライヤーのグラフィックなので、イベントタイトルはもちろん、演者や開催日付などの文字情報もグラフィックの要素と考えてレイアウト全体を決めていきます。だから、自分らしいグラフィックというのはフライヤーというプラットフォームありきなのかもしれないなっていうのは、今回の展示をやってみて感じたことですね。

ーKotsuさん自身の好みがデザインに反映されていると思うのですが、どういったカルチャーやデザイナーから影響を受けてきたんですか?

 

Kotsu:90年代に開催されたライブのフライヤーやハウスミュージックのカルチャーからの影響はありますね。2色刷りのフライヤーでアナログな感じがカッコいいというか、シルクスクリーンで刷るのも合いそうなのが好きです。絵と文字が一体になって1つの絵のように表現されているものが好きです。

ーグラフィックのモチーフとして90年代や00年代初期のモバイルやCDなどを使われたりもされていますが、その年代からの影響は大きいですか?

 

Kotsu:この辺りから音楽からの影響が大きくて。ダンスミュージックを好きになってDJを始めた2015、6年頃にローファイな感じのものがトレンドだったりしたんです。映像もVHSっぽい感じだったりノスタルジックでエモーショナルなものがダンスミュージックと紐づけられている部分もあり、自ずと自分が好きなモチーフもそういったものになっていったんです。当時、ジュリアン・クリンスウィックスがゴーシャ(Gosha Rubchinskiy)でVHSを使ったビデオをリリースしたりしていたんですが、そこからの影響も大きいですね。

ーフォント使いなども独特ですよね。当時の裏原カルチャーからのインスパイアもあったりしますか?

 

Kotsu:やはりスケシンさん(SKATE THING)をはじめ、C.Eの存在はめちゃくちゃ大きいですね。テクノの領域ですがダンスミュージック×カッコいいビジュアルという提案で心躍らせてくれた存在です。

ーこうしてグラフィックが並ぶと、これまでに影響を受けたきたカルチャーや音楽、ものなどの存在が垣間見れるような気がしますね。今回の展示を経て、今後はどういうことをやっていきたいと思いますか?

 

Kotsu:残っていくフィジカルのデザインをもっとやっていきたいというか、そこへの願望は展示用の作品を作っていく中で芽生えてきましたね。今後も続けていくうちに思考が変わっていくとは思うのですが、今はそこにすごく興味があります。パブリック・ポセッション(ドイツのレーベル、Public Possession)というめちゃくちゃ好きなレーベルがあるんですけど、立体を作って会場を装飾して、そこでパーティをやってみんなで踊ったりするんですよね。それが僕の理想というか。そういうことができたら、さぞ気持ちがいいだろうなと思います。

PROFILE

  • Kotsu

    DJ、グラフィックデザイナー。ハウス・ミュージック・コレクティブ、CYKのメンバーとして、国内の大型フェスにDJとして出演する傍ら、イベントのビジュアルやデザイン、アーティストがリリースするアートワークなども手掛ける。

INFORMATION

  • Kotsu Graphic Exhibition『Residue!』

    会期:2024年1月13日(土) – 1月28日(日) ※月火水休廊

    開場時間:16:00 – 22:00(木/金/土)   13:00 – 22:00(日)

    入場:無料

    会場:月極 & メグロネオン

    住所:〒152-0001 東京都目黒区中央町1丁目3-2 B1

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