セックス・ピストルズ、カート・コバーンにはじまり、現代ではカニエ・ウエストやリアーナ、ブラック・ピンク、日本ではドラゴンアッシュのKJやKing Gnuなど。その時代を象徴する偉大なミュージシャンは、みんなファッションアイコンだ。
本連載では、この理論に基づき現代のファッションアイコン、そして次世代のファッションアイコンとなるミュージシャンを発掘し、彼らのファッション的ルーツを掘り下げていく。
第9回目は日本から世界の音楽シーンを沸かせる次世代ラウドロックバンド、Paleduskのボーカル、Kaitoが登場。何かっぽいということではなく自分らしいスタイルをファッションにおいて実践し続けているアーティストだ。自らもブランドをディレクションしているわけだが、そのルーツにはどういう考え方があるのか。

地元・福岡のショップSQUASHでファッションと音楽の両方を教わった
ー本日はファッション観についてのインタビューになるんですが、そもそもファッションはお好きですか?
Kaito:洋服は昔から好きですね。地元の福岡には音楽とファッションが隣り合わせになっているスポットがあって、ハードコアバンドをやっている人がショップをやっていたりするんですよ。なので、自分がハードコアを好きになったタイミングで同時にファッションカルチャーも好きになっていきましたね。まだコピーバンドをやっている10代の頃からライブをするときは、その音楽性に見合ったカッコいい格好でステージに立ちたいって思いがありました。
ー福岡で通っていたショップなどはありましたか?
Kaito:大名にSQUASHというお店があって、STARTERというバンドのボーカル、YOUTH-Kさんが運営しているショップなんですけど、そこに通っていました。そこへ通うようになってから、僕のハードコアライフが始まったと思います。それが中学3年生の頃でした。


ーそれが今のKaitoさんに繋がるファッションの根底にあるものだと思うのですが、さらにその前にあるファッションへの目覚めというと、何がありますか?
Kaito:誰しもそうだと思うんですけど、最初は好きなバンドのメンバーが着ている洋服やスタイルを追いかけたりしていましたよ。例えば、ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Bring Me The Horizon)が好きだったのでDROP DEAD(DROP DEAD Clothing ※)とか。当時、福岡では扱っているお店がほとんどなかったのでお小遣いをためて海外から通販したりして。そうこうしているうちに、スケートをやる友達が出てきて、スケートブランドやストリートカルチャーもひと通り追いかけて、という流れでしたね。でも、やっぱりさっきお話したSQUASHからの影響が1番大きいと思います。SQUASHには、MANAGE*DESTROYというお店のエクスクルーシブアイテムもあって、いろんなアーティストともコラボレーションしていたので、そこからグラフィティの文化やインディーズのアートを知ったりもしたんですよ。ブランドからファッションをとらえるというより、カルチャーから入るという感じでした。
※Drop Dead Clothing………ブリング・ミー・ザ・ホライズンのボーカル、オリヴァー・サイクス(Oliver Sykes)によるブランド。同バンドのファンだけではなく、ラウドやエモ好きには欠かせないブランドでもある

ーSQUASHがKaitoさんのファッション観を作ったというわけですね。
Kaito:まさにそうです。今となっては友達付き合いというか。ショップ主催で『天神ボミン』、『琉球ボミン』といったイベントをやっているんですけど、僕が20歳のときには、その『琉球ボミン』にPaleduskを呼んでくれたり、自分らのことを昔から可愛がってくれているんです。今日の服装はそんなルーツも踏まえて、SQUASHで買った福岡らしいものや、友達が作った洋服をメインにコーディネートを考えました。

ー今日のKaitoさんの服装を見れば、どういうルーツや考え方なのかが伝わってくるというわけですね。そこでいくと、パンツはどういうものなんですか?
Kaito:これはemaяyというブランドをやっている友人が僕のために作ってくれたもので、2着のデザインが異なる迷彩パンツを切り合わせているんですよ。重たいんですけどレイヤードしているようでカッコいいですよね。この間、急遽やることにしたワンマンライブで穿くように作ってもらったものです。
ーちなみにファッションの情報をどこから仕入れていますか?
Kaito:最近ではトレンドを無理に追いかけるということはやっていなくて、友達がやっているブランドをチェックするというのがメインですね。あとは、今日も着ているんですけどHLVTCというブランドの洋服は単純に好みです。着方がユニークでギミックが効いているので楽しいです。

バンドのマーチャンダイズやアートワークからもカルチャーを発信したい
ーブランドという意味ではKaitoさん自身も洋服を作っていますよね?
Kaito:はい、ACCESS PEACEですね。サッカーが好きでサッカーシャツを作りたいというところから始まったブランドです。福岡時代の先輩であり友人のデザイナーと一緒にやっているんですけど、その彼(ブランドのデザイナー)が、とある日にインスタのストーリーで『架空のサッカーチームのユニフォームをデザインしてみようかな』って挙げていて、僕から「俺もサッカーシャツを作りたいんだけど一緒にやらない?」って連絡したのがキッカケでスタートしましたね。

ーACCESS PEACEのデザインにはどのようなこだわりがあるんですか?
Kaito:シルエットやベースとなる部分はヴィンテージのサッカーシャツをベースにしていて、そこに現代らしいデザインを施している感じです。サッカーのカルチャーが存分に感じられつつ、自分のデザイン的な好みも反映させています。ただ、まだまだ自分のやりたいことを100%できている状況ではないですね。頭の中にはまだアイディアがたくさんあるので、もっとバリエーションに富んだ内容を提案していきたい気持ちがあります。
ーそういったサッカーのように、自分のスタイルへ影響を与えているものは他にありますか?
Kaito:例えば、今日着ているTシャツは映画『トランスフォーマー』のTシャツなんですけど、ムービーTシャツだったり、SFやアニメの洋服はすきですね。日本人のアイデンティティを感じられるので海外ツアーのときに着用したりしています。
ーアニメのTシャツと言えば、Paleduskのマーチャンダイズ(以下、マーチ)にもそういうデザインのものがありますよね。
Kaito:そうですね。バンドのマーチに関してはまさに日本の文化を出そうというところがありますね。海外のデザインでカタカナや漢字っぽいタイポグラフィがデザインされたTシャツってあるじゃないですか。あれを日本人が日本人の文化の良さを最大限に発揮させて作ったようなイメージですね。イラストやデザインも知らない人でもなく、地元の若いグラフィックデザイナーや友達に継続してお願いすることが多いです。最近ようやくアニメっぽいデザインのマーチもPaleduskっぽいよねって言ってもらえるようになったと思います。同時に、僕らのマーチからデザイナーやアーティストを知って、自分でグラフィックや写真を始めようと、下の世代が考えてくれたら嬉しいなと思いますね。自分がSQUASHにしてもらったように、カッコいいカルチャーを音楽やアートワークなどを通じて発信していきたい気持ちがあります。

ーありがとうございます。最後にPaleduskの活動について少し教えてください。
Kaito:バンドとしては、ようやくニューEP「PALEHELL」をリリースすることができました。今作がどんな反応があるのかが楽しみです。昨年は海外ツアーも多く、アメリカやヨーロッパに初めて行ったんですけど、今年は日本での活動にもフォーカスしていきたいんですよ。何か日本でもより多くの人に届けられそうな気配を感じていて、しっかりと自分たちの音楽を届けていきたいと考えています。これから続々と夏フェスへの出演も発表されていくと思うので楽しみにしていてください。今年の夏はしっかりと国内のオーディエンスを沸かせます!

PROFILE
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Kaito
1997年生まれ。福岡県発のラウドロックバンド、Paleduskのボーカル。ブランド、ACCESS PEACEのディレクター。Paleduskは2024年2月21日にニューEP「PALEHELL」をリリース。4月22日から全国ツアー「LOVE YOUR PALEHELL JAPAN TOUR」を開催する。