セックス・ピストルズやカート・コバーンにはじまり、現代ではカニエ・ウェストやリアーナ、ブラック・ピンク、日本ではドラゴン・アッシュのKjやKing Gnuなど。その時代を象徴する偉大なミュージシャンは、みんなファッションアイコンだ。
本連載では、この理論に基づき現代のファッションアイコン、そして次世代のファッションアイコンとなるミュージシャンを発掘し、彼らのファッション的ルーツを掘り下げていく。
第10回目は、結成25年目を迎えたメロコア生まれ・メロコア育ちのTOTALFATにフォーカス。3月に4年ぶりとなる11枚目のアルバム『PURE 40』をリリースし、全国をライブ行脚中の彼らはどのようなルーツとこだわりを持つのか。3人に直撃する。
バンドカルチャーとの出会いから学んだ音楽とファッションの魅力
ーまずはみなさんのファッションの原体験になっていることから聞かせてください。ファッションに興味を持つようになったきっかけはなんでしょうか。
Shun:vol.08に出ていたSPARK!!SOUND!!SHOW!!と被ってしまうんですけど、10代の頃に観ていた『HANG-OUT』というテレビ番組ですね。特にBOUNTY HUNTERのヒカルさんと『warp MAGAZINE JAPAN』の編集長の大野さんが紹介していたバンドカルチャーにまつわる情報はくまなくチェックしていました。その吸収した情報を身にまとうと周りの人とはまったく違った雰囲気になれたので、パンクのかっこよさや魅力にどんどんのめり込んでいきました。
Jose:俺は同時期にShunからすべて教わった感じですかね。2人と出会う前はギターメーカーのTシャツばかりを着てましたから(笑)。だから入りとしては紹介してもらったパンクミュージックでファッションにも興味を持つようになりました。それで個人的にファッションも含めて「うわ! この人みたいになりたい!」と思ったのは、グット・シャーロット(Good Charlotte)の2ndアルバム『The Young and the Hopeless』を聴いてから。彼らのライブ写真や映像を何度もチェックして、ファッションをまねしたりしました。思い出深いのは、グット・シャーロットのベンジー(ギター、ヴォーカル)とジョエル(ヴォーカル)の兄弟は、ファッションブランド「MADE」を手がけていたんですけど、それをどうにかして海外通販したことです。それからどんどんファッションが好きになっていきました。
Bunta:出会った頃の写真がこれです(iPhone)。まだまだ青かった高校時代ですね。
Jose:うわ! Shunはバウンティー着てるじゃん! 俺は(楽器メーカーの)フェンダー着てるし、懐かしい!
TOTALFAT結成まもない頃の3人。
Bunta:当時の俺のファッションは、好きなバンドから影響を受けてまねすることから始まったかな。だから白のハイソックスに、デカめのDickiesのショーツを合わせていたこともありましたね。これはブリンク 182(blink-182)のドラマーのトラヴィス・バーカーの影響で。あとよく覚えているのは、みんなでロストプロフェッツ(Lostprophets)ってバンドが好きになったことがあって、その時はメンバー全員、TシャツのサイズがXSになったことかな(笑)。
Shun:たしかに! DIESELのレディースのデニムにタイトなTシャツを合わせてた(笑)!
Bunta:そうそう。そうやって好きなバンドの影響で、音楽もファッションもいろいろとつながっていきましたね。
ー時代を感じますね。ちなみに3人の出会いとバンド結成はいつごろですか?
Shun:Buntaとは高校が一緒で知り合って、それからBuntaのクラスメートに、違う高校に通っていたJoseを紹介してもらいました。そしてTOTALFATはちょうどそのタイミングで結成したので、今年で25年目になります。
ー高校時代からバンド活動をしていたんですね! そのTOTALFATが結成された頃といえば、ストリートファッション誌の表紙をバンドマンが飾っていたほど、バンドカルチャーとファッションは密接にリンクしていましたね。
Bunta:ホントカッコよかったし、今でもデカい存在ですね。
ー当時はAIR JAM世代と呼ばれるバンドがとても人気でした。
Shun:言わずともやっぱりハイスタ(=Hi-STANDARD)は圧倒的でしたね。あとはバックドロップ(=BACK DROP BOMB)とスキャフル(=SCAFULL KING)、ハスキン(=HUSKING BEE)は、当時すごくライブに行きました。
Bunta:ファッションの観点でいえば、そのAIR JAM世代の中でアパレルブランドをやっていた人もいたので、すごくオシャレに見えたよね。バンドもそうだけどすべてを自分達でやっていて、その姿にも憧れて。
Shun:うんうん。あの世代が圧倒的なレベルでカッコいい音楽をやってオシャレだったから、俺らは幸運だったのかも。だってTOTALFATを結成した時には、バンドをやる人=オシャレであるという方程式ができた状態だったから。だから常にカッコいい服を着ていたいというマインドが根底にあったなというのが、今振り返るとありました。
ーなるほど。では当時のカルチャーから影響を受けたことはありますか?
Shun:影響はもちろん受けているんですけど、なによりずっと追いかけてきた印象です。当時はもっと知りたい、あんな風になりたいって枯渇していたというか。
Bunta:そう、追いかけてきたよね。俺はカルチャーというものに関しては別に作ろうとしてこなかったけど、気づいたら近くにあった印象で。それこそ一緒にいるバンド仲間やファッションやっている人とかって、バンド活動をしていたら自然と集まってきたんです。それが大きくなってきたらカルチャーになるんだと思う。
Jose:自分達がいる居心地がいい場所がいつのまにかいろんな人を巻き込んで、結果として新しいカルチャーになっていたらいいですよね。
まだまだ夢中になれるTOTALFATのバンド活動
ーカルチャーは作るものではなく、自然と生まれてくるものかもしれませんね。先ほどもお話しされていたようにTOTALFATは25年目を迎えました。ファッションに変化は感じますか? 今回のファッションと合わせて聞かせてください。
Shun:なんだか1周回って戻ってきたかな。ハイソックスにデカめのDickiesのショーツじゃないけど、パンツはDickiesをまた穿いているし、好きなバンドのTシャツを着るようになったしと、根っこは変わってないですね。なので今日は人生で初めて行ったライブであり、好きなアーティストのグリーン・デイ(Green Day)のTシャツに、『FREAK’S STORE』で選ばせてもらったNAUTICAのデニムワークパンツを合わせてみました。
Jose:着ているブランドは変わったりした部分もありますけど、結局は仲がいいといいうか、顔を知っていて作るものに気持ちを込めている人の服を着ることは変わってないですね。そこで今回は着慣れた洋服に新しい出会いがあればいいなと、取り入れたことのないブランドをミックスしてみました。
Bunta:俺はもうずっと変わってないかも。ある時からドラマーというか、バンドマンという生活スタイルを選んで20年以上やってきたので、考える基準がすべてバンドで。だから靴ならフラットソールのほうがライブはやりやすいし、パンツはショーツがいいし。そういう意味ではどんどん合理的になっていますかね。いかに自分の生活が過ごしやすくなるのかって、機能性を求めたりしています。だから今日は気になっていた素材、パーテックスファブリックを使ったベストを選ばせてもらいました。
ー巡り巡って原点に返ってきたんですね。バンド活動はいかがですか?
Shun:2022年に所属していたレーベルから独立してバンド活動のすべてをD.I.Y.でやっているんですけど、今年の3月に11枚目のアルバム『PURE 40』をリリースしました! アルバムは4年ぶりなんですけど、最高に会心の1枚で、今はそのアルバムツアー中です。
Jose:バンドキャリア初の自主制作アルバムです。これを作るためにバンド活動の資金をがんばってプールしてきました。
ーすべてにおいてD.I.Y.で活動しているんですね!?
Shun:そうです。今回のアルバムはグッズ販売やライブの収益と、ファンの人達に支えてもらったお金でできた1枚。今までもそうではあるんですけど、全部を自分達でやっている分、その重みをすごく感じています。まさに俺らにとってのメモリアルな作品になっています。
Bunta:タイトルは俺らが今年40歳というところからもきていて、3人で何個も候補出しながら決めましたね。
Shun:そう、この作品は前メンバーで年上だったKubotyが脱退してからのアルバムでもあって、さらに40という節目でもあるし、俺らは同い年でずっと一緒にやってきたので、そんな強みを生かしたまじりっけなしの40歳3人組の高濃度な1枚です。ぜひ聴いてみてください。
ーありがとうございます! では最後にフルアルバムをリリースし現在はツアー中とのことですが、バンド活動を通じてどんなことを伝えていきたいですか?
Jose:俺は伝えたいこととは少しニュアンスは違いますけど、24年間同じメンバーで曲を作ってはライブをしてと、繰り返しではないにせよバンドを続けてきました。それが今もまだ飽きないないんですよね。俺らはバンド活動でしたが、ずっと夢中になれるものに高校時代に出会えて本当に幸せだなって感じています。むしろ年々、幸せだなって思う気持ちは強くなってくらいです。だからこの幸せな気持ちを含めて、多くの人に力を与えることができたら嬉しいです。
Bunta:俺も近い気持ちかな。やっぱり20年以上もバンドを続けてくると、時代の流れが変わったりもして、良くも悪くもいろいろなことがあるんですよね。その中で俺らの音楽が誰かの生きる糧にすごくなっていたりもして、とてもやりがいを感じるんです。売れている売れていないとか別にどうでもいいし、バンドカルチャーを好きになってただがむしゃらに追いかけてきただけなんだけど、それが世界の誰かの力になってるなら、まだまだやれることはあるはず。今は戦争や自然災害と暗くなるようなニュースもありますけど、俺らの音楽で勇気づけられるのならもっとやってやろうって思ってます。
Shun:Buntaが話したことはコロナ禍にもよく話し合っていたから俺も似ているんですけど、パンクだけじゃなく、ヒップホップやレゲエといったレベルミュージックと呼ばれるものは、日本に限らず世界的に求められてきていると感じているんですよね。この予感が当たらなくても、そう考えると自分達の存在意義を感じることができるし、モチベーションも上がってきて、もっとやってやろうって野心も出てくる。これって生きていくうえですごく大事なこと。モチベーションが高い時って幸福を感じるものだし、楽しいですよね。そうやって俺らが楽しんでいる様を、俺らの音楽やライブに触れる人に感じてほしいです。そして25周年に向けてもっとギアを上げてさらにヤバいアルバムを作って、みんなのところに行きたいですね。





