UPDATE : 2024.07.01

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#ART & CULTURE

ゴミ:11 ウインカー

Gomihiroi:Ken Kagami

Photo:Shinsuke Sato
Text:Taiyo Nagashima
Edit:Taiyo Nagashima,Fumika Ogura

It was car. ¥0

個人の時代が来たと言われて久しい。誰もが自由に選び、考え、生きて、自分の人生を謳歌する。素晴らしい。でも地球は大きな乗り物で、人は社会的な動物で、この世界はあらゆる他者との共生によって回転している。人は一人では生きられない。"一人じゃないからキミが私を守るから強くなれる もう何も恐くないヨ….”とは、シンガーソングライター・AIのアンセム『STORY』の歌詞だ。赤いウインカーはまさにそんな歌詞を象徴するようなゴミと言える。まず前半、"一人じゃないからキミが私を守るから強くなれる “これはまさにウインカーのことだ。ウインカーは車の両サイドに対で装着されていて、それは惹かれ合う恋人の暗示だし、”キミが私を守るから”は、ウインカー(キミ)へ寄せたドライバー(私)の信頼を表現した言葉だろう。”強くなれる”は、車に乗ることで気が大きくなる感覚を表現している。

 

そして後半、”もう何も恐くないヨ…”は、文字通りウインカーが存在することにより運転時の安全性が上がり、恐怖から解放されることを意味している。最後の”ヨ”はどことなくウインカーに形が似ているので、そういうことだろう。

そして最も重要なのが、現実のこのゴミはすでに一人になってしまった後だということだ。これは作者の意図的なミスリードで、一人になってしまったウインカーが見る夢、失われた美しい記憶の中で漂う悲しい亡霊の歌だということがわかる。かつてそこにあった信頼、幸せな人とそれを見守る車、はしゃぐ恋人達、そして家族の団欒……。

ここまで全て筆者の誤った妄想だが、様々な解釈ができる歌は素晴らしい。路傍のゴミにも一つ一つSTORYがある。

PROFILE

  • 加賀美 健

    現代美術作家。1974年、東京都生まれ。 

    社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的発想に変換し、彫刻、絵画、ドローイング、映像、パフォーマンスなど、メディアを横断して発表している。 

    2010年に代官山にオリジナル商品などを扱う自身のお店(それ自体が作品)ストレンジストアをオープン。 

    日課の朝のウォーキングの際に面白いゴミが落ちていないか目を光らせながら歩いてる。

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