セックス・ピストルズやカート・コバーンにはじまり、現代ではカニエ・ウェストやリアーナ、ブラック・ピンク、日本ではドラゴン・アッシュのKjやKing Gnuなど。その時代を象徴する偉大なミュージシャンは、みんなファッションアイコンだ。
本連載では、この理論に基づき現代のファッションアイコン、そして次世代のファッションアイコンとなるミュージシャンを発掘し、彼らのファッション的ルーツを掘り下げていく。
第12回目は、LAMP IN TERRENを経て現在はEnfantsのフロントマンとして活躍するアーティスト、松本大さん。制作している音楽とファッションスタイルが繋がるという松本さんに、自分だけのファッション哲学を聞く。

その洋服が異国でどう作られたのかに思いを馳せるのが好き
ー本日は松本さんのファッションスタイルや、そこにまつわるルーツをお伺いしたいと思っています。スタイルを語るうえでバイクも欠かせないものだと思うのですが乗ってらっしゃるバイクは何ですか?
松本大(以下、松本):ハーレーダビッドソンですね。去年の秋にふと思い立ったんです。バイクにでも乗ってみようかなって。そこから教習所に通って1ヶ月半で初の免許を取得して買いました。どうせ乗るなら同い年のバイクがいいなと思ったので、1992年生まれのハーレーなんですよ。すごく気に入っています。

ー今日のファッションと相まって松本さんらしさが出ていると思うのですが、そもそもどんな格好が好きですか?
松本:基本的には気楽な格好が好きですね。そのうえで、自分がその1日に掲げるテーマに合わせることが多いです。あとは作っている音楽にすごく影響されている気がします。レコーディングのときはこういう格好でいこう。今日のライブはこんな雰囲気だから、それに合わせたファッションをしようだとか。その日の気分とスタイルを直結させて考えていますね。
ーそうしたファッション選びの中で、最近の個人的なムードな好みの変遷などはありますか?
松本:最近はアメカジ独特のパワーが好きで、そういう洋服を選ぶことが多いかもしれないですね。ちょっと前までは凛とした気分でいたいからフランスのものを選んだり。その洋服が生まれた国に対する印象と自分が着る意識が近いように思います。実際に大差なかったとしても、とある国で生きている人がどんなテンションで、どういう経験を経て、この洋服を作ったのかってことに思いを馳せたりするのが好きなんですよ。そんな洋服選びをしています。

ーファッションに対して思いを巡らせるようになったのは何かきっかけがあったんですか?
松本:僕、本当に最初の頃はジャージーでライブをしたりしていたんですよ。で、とあるフェスにその格好で出たら、レコード会社の社長さんに「もっとマシな格好はできないのか」と(笑)。袖が擦り切れているようなジャージだったんで『そっか、洋服にお金をかけなくちゃいけないのか』と思って、最初に行ったお店がサンローランだったりしたもので、そこら辺からちょっとおかしくなっちゃったんですね。その後にドカンとロゴが乗っているようなものを着てみたりもしたんですが何か違うなと。じゃあ何が好きなんだろうと考えていった結果、製法や歴史、作られた国や洋服自体の歴史や構造といったところに目を向けるようになっていったんです。

ー構造や製法にこだわるというのは、音楽制作にも近しい部分があると思うのですがいかがでしょう?
松本:自分の場合は、どういう気持ちで曲を作るのか、というのは根源的にありますけど、そこで、なぜこのメロディやベースライン、リズムにするのかってことを考えながら曲を作ったりするのが好きで、構造に対してどう共鳴、調和していくのかを意識しているので、たしかに洋服の好みにも近いものがあるかもしれないです。

鏡に映る自分の印象が音楽になりファッションスタイルに繋がる
ーでは、今日の洋服についても教えてもらっていいですか?
松本:今日は上下とも白を軸にしたセレクトで、ごりごりのアメカジではないですけど、ちょっと炭鉱夫っぽい感じがあるというか(笑)。このTシャツはPaly Hollywoodというブランドのものなんですけどデザインが好きですね。こういう遊び心が感じられるのが好きです。子供でいたいのかもしれないですね。レザーシューズだけど、上物はちょっとダウナーなのがミックスされていて、最近の精神状態がよく出ているのでは。

ーちょっとヤレ感ある感じがたまらないですね。何か映画やドラマ、本などからファッションの影響を受けることはありますか?
松本:ありますよ。僕はクリストファー・ノーラン監督の作品が好きなんですけど。それこそタトゥーが好きになったのも映画『メメント』からの影響だったりしますし、『インターステラー』のマシュー・マコノヒー扮するクーパーがスタイリングが好きで似たようなジャケットを買ったりしましたね。


ー序盤に、作っている音楽にファッションが左右されるというお話がありましたが、もう少し詳しく教えてもらってもいいですか?
松本:最近は自分の中でこれ! というものを決めて、それを軸にもの作りをしている感じがあって。言ってしまうのであればベッドルームミュージックなのかな。価値観的な話で世間的に言われているものではなく、自分だけのベッドルームミュージックってことで、閉塞感がある曲を作ろうとしているんですけど。
ー本来のジャンル分けするときに使うベッドルームミュージックではなく、松本さんが作る音楽としてのベッドルームミュージックという意味ですね。
松本:はい。書いている歌詞が全曲、家の中から出ないんですよ。そういう意味でのダウナー加減と、部屋の中で自分を保つために、一応お洒落するという行為をやっていて、最近はずっとそういうファッションをしている気がしますね。服の色は異なれど手触りは全部一緒の感じだったり。

ー部屋着だけどそうでもない、という狭間のファッションですか?
松本:そうですね。このまま寝れるけど外にも行けるような中途半端な感じがすごく好きですね。結局、鏡を見たときの自分の印象みたいなものが、そのまま曲作りに作用している感じがするので、もうずっとそんな感じです。だから、ツナギ(オーバーオールなど)もよく着ていますよ。調子いいです。

ーそのようにして制作される音楽が非常に楽しみです。Enfantsの活動についていかがでしょう?
松本:詳細はお話できないんですけど、制作中で作品をリリースできたらと思ってやっています。でも、できるかわからないというか。そういう曲の作り方をしちゃっているので、発表を待っていただけたら嬉しいです。


PROFILE
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松本大
アーティスト。現Enfants、ex.LAMP IN TERRENのフロントマンとして活動。Enfantsは2024年1月に2nd EP「E.」を発表。現在は制作中。