UPDATE : 2024.08.16

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#ART & CULTURE

町田ヒロチカが地元青森での暮らしの中で見つけた、ルーツの探究と今手がけるイラストレーション。

Edit:FREAK MAG.

今回、五所川原立佞武多プロジェクトのTシャツデザインを手掛けた町田ヒロチカ。これまでにもフリークス ストアのオリジナルショーツのアートワークなどたくさんの接点があり、デザインを担当してきた背景がある。音楽アーティストや地元青森を代表するお店たちなどのコラボレーションデザインも数多く行う町田さんに表現のルーツについて聞いた。

ーフリークス ストアとの繋がりについて教えていただけますか。

 

今年2024年の夏にフリークス ストアさんからの夏のオリジナルショートパンツ「ENDLESS SUMMER SHORTS」の描き下ろしタグデザインのお仕事を貰ってからのお付き合いになります。そして今回、地元青森に戻ったタイミングということもあり、五所川原立佞武多のTシャツデザインのお仕事のご依頼を頂きました。

 

ー地元の青森に戻ったということでそこから感じられるイラストレーションにおける仕事のルーツや影響はあったりしますか。

 

結構、青森の人から影響やルーツを貰っていることを多く感じています。青森の人たちの昔からずっと続いている雰囲気や伝統を守ろうっていう気持ちだったり、まず身内を大事にしつつ、そこから周りに還元できるようにしようっていうポリシーや心意義を感じています。安心していつでも帰って来れるような。青森の皆さんの根底には、そんな郷土愛的なものを感じていて、自分も青森で生まれ育ったのでそこの部分はとても多く影響を感じて日々学ばせて貰っています。

ー青森での暮らしが始まってイラストレーターとしての仕事に向かう姿勢などに変化はありましたか。

 

イラストの仕事だけじゃなくて、机に向かうだけではなく、もっとこう青森の生活や暮らしの色んな部分からたくさんの影響を受けて取り入れるようにしています。

青森での普段の暮らしの中での気付き収集というか。インスピレーション収集を行なっていて。自身、THEアーティストみたいな。THEイラストレーターみたいな肩書きがちょっとあんまり目指す方向ではなくて。もっとこう気楽に日々の生活や暮らしの中から色んなものを取り入れて、自分の人生的なものを生きていけば、自分自身が自然体になれるようになるのかなというところを感じて日々イラストの仕事をしています。

ー普段、風景や景色などのイラストを描くことが多い町田ヒロチカ氏ですが、青森での暮らしの中で、具体的にはどのようなインスピレーション収集がありましたか。

 

そうですね。例えば、青森だとほぼ人っこひとりいない巨大な自然公園があってそういう場所によく行きます。その中で、植物だったり木々だったりそういうところに視点が行って観察して集中したりします。そうすると一個一個の植物が生き生きして見えてくる。春夏秋冬で顔が違ったり、日によっても気分が違ったり。そこからのインスピレーションだったり、こういう風に動くんだとか、人がいなかったらこういうふうに風が植物を巻き上げるんだとかを感じたりします。ある日、霧が出ていて誰もいない橋の上から見下ろす森だったりとか、白神山地の橋から見える景色とか、そういう巨大な自然を見ていると自分がちっぽけになるというか。そういう部分に囲まれてみると、ひとつの狭い視点だけにならなくていい感じがします。メンタル的な部分でも寛容さが上がっていくので、そういうのが好きで自分も景色を描いているところがありますね。

ー青森での最近の町田ヒロチカ氏の仕事やアートワークを拝見させて頂いて、 そういったルーツを感じるものが多くあるように感じます。最近やっていた津軽塗りをテーマにしたものとか。上京した東京時代、海沿いの街の逗子時代と町田ヒロチカ氏のアートワークを年代別に並べたら見ている人たちもその変化を一緒に楽しめるなと思っています。

 

そうですね。割とこう、その土地々や人たちと温度感一緒で仕事していきたいというのがあります。一緒にやる人たちもこの人たちとだったらこういうタッチが合うだろうなとか。そういう意味でも自分は絞るっていうことをしていなくて。こういう人たちとだったらこういうペイントっぽいのが合うだろうなとか、主線が合うだろうなとか。そういう部分である程度絞った方がいいと思うんですけど、それはシリーズでやっていけばいいかなって思っています。そこで親和性を生んで新しいものをつくる感覚というか。自分を押し通すのもいいけど、そこで生まれる化学反応が面白いって思います。そういう意味での自由さっていうのも何でもありだなっていうところで出していけたらなって思います。自然の大きい部分のニュアンスとかインスピレーションをもらってやってるつもりではあるので。そういう部分で自由にやれたらいいなって思っていますね。

ーその他、青森での暮らしの中で感じるインスピレーション収集はありましたか。

 

青森に帰ってきて尚更わかったのが、日の出と共に起きて、日暮れと共に寝るっていう。そういうのも大事だって思いました。生活のリズムが大事なポイントだなっていう。子供が起きて起こされてとか、鳥が鳴いていて起きるとか、虫の音で寝るとか、そういうのがあって生活が豊かになる。余裕が生まれるのかなって思いますね。自然で言えば、朝起きて寝ての生活リズムの中で、自然の猛威は半端じゃないです。冬もそうだし、夏の草の生え方がすごい。1週間経ったら自分の背を越えているくらい伸びているんですよ。その感覚って都市部にはなかった。その自然の猛威で、冬は雪を放置していたら屋根の上まで積もってしまうし、家が潰れちゃうので雪掻きをしなくちゃいけない。自然と闘いながら、イレギュラーの中で、自分の予定を組んだ上で仕事や暮らしを進めるっていうのが苦労しました。そういう意味でも、普段から心の余裕をつくらないといけないなっていう感覚を強く持ちました。

また、隣の畑をやっているおばあちゃん宅の草刈りをしてあげてその代わり野菜をいっぱい貰うとか。町内会とか早朝のラジオ体操をやったり、子供たちや大人も一緒に接するっていうのもすごくいい経験だなって思います。子供たちに対しても接していって次の世代に遺せるものを、自分が親世代とかお兄ちゃんたち世代から貰ったものをちゃんと還していきたいです。そういう意味ではイラストレーターだけにこだわらず、理想の生活もしっかりしつつ、自分の人生をつくっていきたいなと思っています。

青森のお祭り文化について。五所川原立佞武多について。

青森には大きく「ねぶた」と言われるものが3つあって、「五所川原立佞武多」、「弘前ねぷた」、「青森ねぶた」があります。その他の地域でもそれぞれの個性が溢れる「ねぶた」が存在しています。

それぞれのねぶたで掛け声も違って、五所川原立佞武多の掛け声はヤッテマレー、弘前はヤーヤドー、青森はラッセラーだったりして、その地域の合言葉スローガン的な精神を持っていたりします。また、踊り方やねぶたの形式形状も様々です。そういう意味では五所川原立佞武多は縦にねぷたが伸びていて20mとインパクトがあります。それは本当に「ヤッテマレー」=「やっちまえー」の精神になっているなって思います。

今回のTシャツのデザインについて。考慮したこと。力を入れたこと。

ーねぶた絵師へのリスペクトについて。立佞武多絵師・忠太さんの今年のテーマ「閻魔」の作品がある中で、自分自身のイラストレーションに落とし込むときに、どういったところに配慮やリスペクト、どういうことを感じながら、実際の制作に向かったのか教えていただけますか。

 

立佞武多絵師・忠太さんの絵をまず据えて、そこを崩さずにリスペクトを持って、自分のイラストを描かせてもらってがまず主軸でした。ある意味、自分の要素も入れてはいるんですけど、混ぜたという感じですかね。どちらかっていうと、俺の絵だっていうよりかは、みんなのねぷたですよっていう部分を出したかったのが強いですね。

ー普段のキャラクターたちが出てくるんですけど、あれもすごく楽しそうにねぶたを曳いててそこも入るのは自然だったって感じですか。

 

盛り上げたいという気持ちで、五所川原立佞武多をみんなで楽しんでるよ!という絵の表現をしたくて描きました。

 

ーあの塩梅がすごく良かったです。「閻魔」絵のリスペクトもあって、胸ロゴにしっかりとイラストをあしらっていたりなど。

その部分の自分の立ち位置的にも自分も参加する一人として盛り上げようっていう部分が大きかったので。自分の表現ももちろん入れてますが、それがまず最初じゃないっていうか。立佞武多そのもの忠太さんの今年の一番の見どころの「閻魔」のブースト役になればという気持ちでした。自分のアートワークはその派生エッセンスとしてっていうか。みんなでねぷたはつくるものなのでという想いが強かったです。

それこそ今回、初めて参加したって方がすごく多かったように思います。こういったTシャツを買って参加するってやり方もあるんだとか。打ち上げの際に五所川原立佞武多の主催の方たちもすごく喜んでいました。今年実現できたことや来年できることを新しく増やしていったりとか、そうやって自然体で伝統が育まれていったり紡がれていくのがすごく良いなって思いました。

ーイラストを描く背景やディティールの部分でこだわった点はありますか。

 

結構、絵って見た感じで感じろって部分もあるじゃないですか。立佞武多もその部分でとても楽しめるけど、意外とバックボーンや物語を知って見たら更に楽しめると思っています。割とその歴史や史実だったりとか古事記とかスサノオだったりとか、そういう部分の物語のピックアップもあるから、そういう意味では日本の物語のルーツを知るきっかけにもなるかなというのを感じました。絵のタッチも立体且つ五所川原の立佞武多は人形ねぷたなので、筆のタッチだったりとか主線でハッキリしていたりとかそういう部分もとても面白くて意識したところではありました。

ー最後に五所川原立佞武多のお祭りに参加してくれた人たちの様子を見てどうだったですか。実際にお祭りの皆さんがTシャツを着ているのを見て。

 

フリークス ストア五所川原店のスタッフ人たちもすごく活気があって盛り上げ方とかお祭りにすごく慣れていてすごく良かったです。お客さんたち、子供連れのファミリーとか、高校生のバレー部の子達とか活きが良くて最高でしたね。

ー普段の常連さんたちそれぞれの色んなカルチャーがある中で、それぞれの盛り上がり方をしていてとても良かったですよね。

 

 

それが良いですよね。間口の広さやみんなを受け入れている感じがとても良かったです。

 

 

ー今回の白と黒の2種類のTシャツのイラストを見ながら、閻魔の立佞武多を見る光景が本当に素晴らしくてとても感動しました。

 

 

家族連れや地元のお客さんたちとか子供たちがそれを見ている光景を見れてとても嬉しかったですよね。

ーそんな光景がそのまま絵の額縁に入っているような、夏の最高の思い出になりました。忘れられないですね。また来年もいい意味で皆でレベルアップしつつ、また来年だからこそできることもやっていきたいですよね。

 

来年は、五所川原立佞武多の伝統の衣装も色々着たり、踊ったり、祭り囃子をしたりとか、津軽の紋様とか祭り衣装とか青森の風土に馴染むようなものづくりを更にしていきたいですね。

INFORMATION

  • 立佞武多フリークス ストア限定Tシャツ販売中!

PROFILE

  • 町田ヒロチカ(HIROCHIKA MACHIDA)

    イラストレーター、作家。1992年生まれ、青森県弘前市出身。

    オーストラリア、東京、逗子を経て、現在は故郷の弘前を主な拠点とする。海や山、動物や自然、自身の旅から得たインスピレーションをもとに、様々なタッチで自由に自身の世界観を表現することをモットーとしている。インディー、メジャーミュージシャンのジャケットアートワーク、グッズ、書籍の挿絵、漫画を手がけたり、自身の活動としてぼうやとその仲間たちが活躍するキャラクター漫画「LET’S GO DOWNTOWN」がある。

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