UPDATE : 2024.11.08

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#ART & CULTURE

-Culture Freak- vol.3 TAPPEI 『From:space』

Photo:Takao_okb

Text:Ryo Tajima (DMRT)

 

“Culture Freak(カルチャー・フリーク)”。それは、アートや身体表現、ゲームや音楽、「〜道」など、さまざまなカルチャーに精通する人たち。時に熱狂的なまでに、その “道” を極めようと努める、“フリーク” な人々のこと。

 

本シリーズ連載では、そんな “Culture Freak” たちが心に抱く熱い想いや哲学を、インタビュー形式でお届け。

 

タトゥーアーティスト、TAPPEIの4度目となる個展『From:space』がギャラリー月極で開催された。開期は9月29日(日)から10月27日(日)、1ヶ月という長い開期にも関わらず連日多くの人が会場を訪れ展示は大盛況。しかも初日のオープン前は長蛇の列ができ、グッズは即座に売り切れ、受注販売に切り替えるなどその人気っぷりはすさまじい。

このインタビューでは、個展の内容を踏まえTAPPEI自身のルーツについてインタビュー。どのような遍歴を経て、今回の展示に至ったのかを聞く。

 

なんで絵だけは綺麗に描こうとしていたのだろう?

ー4回目の個展『From:space』ですが、エイリアンたちに向けて開催した展示の巡回展がコンセプトになっているとのこと。なぜ、こういう内容になったんですか?

 

TAPPEI:このテーマは作品を作っていく過程で思いついたんです。ある日、キャンバスに『なんか違うかも……』と思いつつ綺麗に絵を描いていたら、ちょっとした拍子に絵が汚れちゃったことがあって、なんか良さそうだなって思ったんですよ。そこからいろんな画材を使って意図的に絵を汚していったら、すごくいい感じになって、“1度展示した後の作品”だなって思ったんです。そこで、宇宙で展示した後の巡回展にしたいと思ったんです。

ーなるほど、汚れを説明するために、1度展示を行ったというテーマを設け、その場所に宇宙を選んだというのは、実にTAPPEIさんらしいですね。

 

TAPPEI:SF映画が好きですし、作品のことを考えているときにも映画が流れていたので、そういうコンセプトを思いつきました。今回の展示では、ダンボールに直接、絵を描いたものを作品として販売しているんですけど、梱包せず、あのまま発送するんです。中身は空っぽで、その空間(スペース)を売るという提示をしていて、箱が配送業者を経て、汚れた状態で届くことで、作品として完成するという感じにしたんです。そんな風に、一連のストーリー性を持たせた表現を展示全体に落とし込みました。洋服は古着だったり、使い込んだ感のものが好きなのに、なんで絵は綺麗に描こうとしていたんだろう? なんてことも思いましたね。

ー宇宙での開催を経て、作品が地球に送られて、自分の手元に届くという。時間の流れを内在させたユニークなインスタレーションです。他にも目が瞬きするムービーの展示もありますが、何か宇宙と関係がありますか?

 

TAPPEI:はい、宇宙では外に出ていたエリアインなんですけど、地球に来たら凶暴だったので箱の中に閉じ込めている、というバックストーリーがあります。あとはキャンバスから逃げ出しちゃった様子を描いた作品もありますね。「開催前日まではいてくれてたのに、初日にギャラリーに来てみたらいなくなっちゃってたんですよ。宇宙でやったときはいたんですけど」なんて説明をお客さんにしています(笑)。

本来キャンバスにいた天使が逃げてしまった作品『escape』。

キャンバスから逃げ出した天使が隠れている様子。

ー会場中央の銅像もちょっとダメージ感あるのは、そういったコンセプトに基づくものですか?

 

TAPPEI:そうですね。もともとは、あの状態から綺麗にして塗装して完成するイメージだったんです。作ってくれたのはJUJIROくんというアーティストなんですけど、彼から途中段階の写真が送られてきて、それが今の状態だったんです。これが、今回のスタイルに合っているなと思って、ここで作業を止めてもらって、そのまま展示することにしました。

作品を買う感覚でタトゥーを入れるのが理想だった

ーどの作品も実に魅力的で、観ているだけで楽しいです。ここからはTAPPEIさんのルーツのお話も教えていただきたいと思います。自分がアーティストになったと自覚した瞬間はいつでしたか?

TAPPEI:僕がタトゥーを彫り始めたのは18歳のときだったんです。当時は大阪にいましたけど、スタイル自体は今とほぼ一緒でした。いわゆる、タトゥーっぽい絵柄というより、イラストを肌に入れているような感じですね。当然ですけど、その頃は自分の好きなように彫れるわけでもなかったですし、むしろ、自分から『彫らせてください』ってお願いする感じで、お客さんからオーダーされるデザインを彫っていました。それが、ここ数年になって、僕の絵を彫りたいって言ってくれる人がほとんどになったんです。個展で絵を買うのと同じ感覚で、『これを肌に入れたい』って言ってくれるようになったので、そういう意味で、アーティストになったと言えるのは、ここ数年な気もしますね。

 

ーキャンバス作品を買う感覚でタトゥースタジオに来る人も多いと。

 

TAPPEI:そうなってきていると感じます。僕が理想としていた形がそれだったんですよ。友達や知り合いに『ねぇ、これ見て』って感覚で自分が好きなTシャツを着て出かけるのと同じように、自分の好きな絵を肌に入れるという。しかも、僕のお客さんは、タトゥーカルチャーにどっぷりな人というよりも、僕のタトゥーを好きで興味を持って来てくれる人が多いので、まさに作品を買う感覚というか。そんな感じで来てくれるのが嬉しいです。

ーTAPPEIさんと言えばの“天使のキャラクター”を入れてほしいという人も多いと思うのですが、このキャクターはどのように出来たんですか?

 

TAPPEI:5年ほど前、まだお客さんからのオーダーに沿ったタトゥーを彫っていた頃、自分のデザインを気に入ってくれる人も出てき始めて、『天使を入れたい』っていう要望をよくもらったんです。それで、天使のデザインとして描いていくうちに生まれたのが、このキャラクターです。タトゥーから生まれたものなので、名前も付けないようにしていますね。名前がないというのもミステリアスで可愛いですし。

ーTAPPEIさんのタトゥースタイルは最初から変わらないということなのですが、影響を受けたタトゥーアーティストは誰ですか?

 

TAPPEI:最初に、『こういうのもありなんや』って衝撃を受けたのは、Sean From Texasさんというアーティストです。18歳くらいの頃、まだインスタが普及し始めた時期にSNSで見つけたんです。イラストっぽいタトゥーを入れていて、こういうことをやってもいいんだ? ってびっくりしたんです。自分が好きな絵は、今のスタイルの絵なんですけど、こういうスタイルでも全然OKなんだって思わせれてくれた人で、すごく影響を受けましたね。

 

ーでは、場所的なルーツの話を教えてください。もともとナカメネオンでタトゥーを彫ったりしていて、そのオーナーによるギャラリー月極で開催したのが『From:space』ですよね。この辺りの繋がりについて教えていただけますか?

 

TAPPEI:上京して21歳くらいの頃、平本ジョニーさん出会い、仲良くさせていただけるようになったのが始まりですね。ジョニーさんにナカメネオンに飲みに連れていってもらうようになって、いろんな人と出会いました。ジョニーさんと仲良くさせていただくようになって、CANNABISでスタッフとして働くようになったんです。

ーセレクトショップ、CANNABIS時代、この時期もTAPPEIさんのルーツになりますか?

 

TAPPEI:もう、めちゃくちゃ自分のルーツですね。僕がタトゥーをやっているって言ったら、みんなが「じゃあ、彫ってよ」って感じになって。営業終わりに、みんなでタトゥーを彫って、その後にお店で軽く飲んだりして。そういうこうしているうちに、営業後であれば、お店を使ってお客さんに彫ってもいいよって言ってくれて。場所を使わせてくれたこともありがたかったんですけど、それだけじゃないものがあったんですよね。

 

ーそれだけじゃないものというと?

 

TAPPEI:当時(2014年頃)、まだ僕のようなスタイルのタトゥーは良しとされない風潮があったんです。だけど、僕がスタッフとしてCANNABISというカッコいいお店に立っていたので、お客さんが、CANNABISという場所も引っくるめて自分のタトゥーを認知してくれて「カッコいいから入れたい」って言ってくれることもあったんですよね。そういった意味で、自分には欠かせないルーツだと思っています。

 

ーありがとうございます。最後に、今後の活動について教えてください。

 

TAPPEI:決まっていることだと、2025年夏頃を目処に、友達の漫画家と2人で展示を行う予定です。場所は渋谷パルコです。今まで、個展しかやってこなかったので、誰かと一緒に展示をするのは初なんですよ。それが今から楽しみです。

PROFILE

  • TAPPEI

    アーティスト、タトゥーアーティスト, グラフィックデザイナー1993年生まれ、大阪府出身。幼少期より絵と刺青に興味をもち、絵を描き続ける。神戸芸術工科大学アート・クラフト学科を中退し、肌もキャンバスの一部と考えタトゥーアーティストとして活動を開始。2014年からは東京を拠点に、原宿のアパレルセレクトショップスタッフを経て、グラフィックデザイナーとしても活動。その後、中目黒にタトゥースタジオ兼オフィス「TAPPEI ROOM」を設立。2022年にはNIKEやUNDERCOVER、BEAMSなどとのコラボレーションも発表。2023年には初の海外でのタトゥーゲストワークや、カルチャー雑誌『EYESCREAM』での4コマ漫画連載もスタート。キャンバスや自分自身の体、人の肌、誌面、服など、全てを自身の表現の場と捉えて活動を続ける。

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