UPDATE : 2025.02.06

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#ART & CULTURE

SUPERFUZZ MUSIC vol.03

Text:Taishi Iwami

すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がクラウドの心を一つにする。前情報のない無名のアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブがフロアを大いに盛り上げる。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターが、タイムリーなアーティストやおすすめのニューリリースをテキストとプレイリストで紹介します。

Sextile 『Push』

LAを拠点に活動するSextileの初来日が決まりました。黒いベールを纏い、1970年代パンクの荒々しさや鋭さをシンセに乗せる。1980年代のポストスパンク/インダストリアル/EBM直系のサウンドを鳴らしていたデビュー期。そこからダンスにフォーカスを絞った2018年のEP『3』にハートを撃たれた。収録曲の「Disco」はDJ毎レベルでかけている。

しかし『3』のリリース後にメンバーのEddieが逝去。バンドは活動休止に。2022年に新たな編成で再スタートし、2023年にリリースしたアルバムがこの『Push』。 

パンクと1990年代やコロナ禍~ポストコロナの間に起こったレイヴカルチャーの躍進をクロスオーバーさせ、トリップ感満点のサウンドを鳴らす。テクノ、トランス、ドラムンベースといったダンスミュージックとパンクを、パーティというワードで繋ぐようなアルバム。Sextileの初来日ライブは4月3日、CIRCUS Tokyoにて。詳しくはSUPERFUZZのホームページをご覧ください。

Decius『Decius Vol. Ⅱ』

サウスロンドンポストパンクとアシッドハウスが地下の古びたダンスフロアで共鳴する。Fat White FamilyのLias、Trashmouth RecordsのLukeとLiam、Paranoid LondonやWarmduscherのQuinn Whalleyによる、アンダーグラウンドのスーパーグループ、Deciusがセカンドアルバムをリリース。

正常を刺激するシンセの歪み、奇妙でいて耽美的なメロディやサウンドスケープ、妙に煽ってくるパーカッションやハイハット。それらのマッチングがクセになる。酩酊して視界がゆがんでいる人には、逆にまっすぐに見えていそうなダンスミュージック。溶けるまで踊りましょう。

Viagra Boys 「Man Made of Meat」

「筋肉つけたいんやったらプロテインちゃう。酒やで酒」と言ったとか言ってないとか(言ってません)。スウェーデン発、史上最高レベルのパワフルでクレイジーなパンクバンド、Vuagra Boysが4月25日に約3年ぶりとなるアルバムのリリースを発表。先行シングル「Man Made of Meat」のミュージックビデオを公開しました。

同国の先輩、The Hivesとのプロレスばりのディスり合いプロモーションも記憶に新しいが、そんなスウェーデンパンクとエンタテインメント性の文脈のど真ん中を貫くような曲に元気をもらった。社会のせい。他責の怠惰。もうどうしようもない。でも生きていかなきゃいけない。そんな最悪な自分でも、踊れば少しは前に進める。

というわけで今月のプレイリストのテーマはパンク/ポストパンク。ではそもそもパンクとは?という話になってくるのですが、簡単に言えば、既存の商業ベースには乗らない、DIYを起点とするシンプルなサウンドや独自のスタイルを追求する姿勢を持った音楽。オリジナルは60年代後半のアートロックやガレージロック、70年代のNYパンクやその後のUKパンクなど。2010年代後半あたりには、UKを中心にまた新たな盛り上がりを見せていたのですが、近年は飽和した印象も。と見せかけて、今いちばんすごいかも。

 

そのシンボル的存在だったブリストルのIdlesはグラミー賞にノミネートされ、新風の真ん中で輝きを放っていたアイルランドはダブリン発のFontaines D.C.は、名実ともにUKを代表するトップロックバンドへと躍進した。そして同じくダブリンで結成されたThe Muder Capitalもまた、そのエッジや生々しさがより広いレンジに届きそうなスケールアップを果たす。Fontaines D.C.は2月21日に大阪、2月23日に東京、The Murder Capitalは3月27日に東京でライブを行います。

 

そして拓けた新たな地平。前提が強いあまり、もっとも鋭かったはずの音楽は様式化してしまった感があった。しかしここにきて、本当の意味で独自性を追い求め自由に飛び回るアーティストたちが増えたのか、見つけやすくなったのか、ここから始まる何かが楽しみで仕方がない。そして日本にもbedのような、世界からも注目を集め始めているバンドが。彼らの言葉を借りるなら、〈世代とは年齢のことではない。退屈や停滞を拒むすべての人たちへ〉。マイジェネレーションの始まりの一端を味わってみてください。

INFORMATION

  • SUPERFUZZ Presents『Sextile in Japan』

    日程:2025年4月3日(木)

    会場:CIRCUS Tokyo

    開場:19時

    料金:前売り 5,500円(+ 1ドリンク代700円)

     

    Live:Sextile / bed

    DJ:SUPERFUZZ DJs

     

    <チケット情報/問い合わせ先>

    https://superfuzz2019.com/

PROFILE

  • TAISHI IWAMI

    10代の半ば、ファッションに対する自我が芽生えるとともに、ロックンロールやパンク/ポストパンク、インディーロックといったロックミュージックのディグに明け暮れるように。そして街で手にした1枚のフライヤーがきっかけで、そういった音楽の流れるクラブへ。お洒落でカッコいい人たちがダンスに興じるフロアに魅せられ、自身もDJを始める。現在は主にDJ、ライター、イベントのオーガナイザーとして活動。オルタナティブミュージックパーティ「SUPERFUZZ」の代表を務めている。

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