帰省のために日本へ向かう飛行機の中から書き始めてみる。ANAの航空機に乗り込んだ瞬間まだ着いてもないのに「あれ?何かもうここは日本?」と既に身体が感じていて不思議に思う。
CAも乗客も半数以上が日本人だからか、日本人独特の気遣い文化が機内にも流れていて、安心感がある。ここがロンドンだったらお財布も携帯も肌身離さずに持っていくのに、「お手洗いへ行くくらいなら置いていっても大丈夫か」と、身体が勝手に安心しきっている。(実際は絶対に持っていった方がいい・・)
慣れてきた海外生活のつもりだったけど、日常にどれだけ気を張って生活していているかに機内の中で気付かされる。
ロンドンの生活って実際安全なの?と家族や友人から聞かれてきたが、「安全ではない」が私の答えだろう。

初めて住んだお家のキッチン


今のお家の近所にあるE5ベーカリー
誰しも一度は経験する、盗難被害

テートモダンで開催されていたアートブックフェア、どんな環境でも人混みには注意が必要
ロンドンあるあるの一つと言っても過言ではないのが、携帯と自転車の盗難事件。私の盗難被害スコアも2年間で、携帯が1回に自転車の前輪が1回となかなか。
「スリには気をつけてね!」とありとあらゆる人から言われてきたのに、案外大丈夫じゃんと気を抜いていた頃にしっかり盗まれた。


被害現場、コロンビアフラワーマーケット
イーストロンドンの観光スポットのひとつであり、毎週日曜日に開催され地元民も集うコロンビアフラワーマーケットにお花を買いに行った日のこと。
支払いを済ませ、携帯をパンツのポケットにしまったはずだったのに、向いのお店で別の会計をしようと携帯を出そうとした時には時既に遅し。わずか数分のどこかで盗まれていた。
ロングコートを羽織っていて、ポケットは覆われていたはずなのに、プロには通用せず。友人から自分の番号に電話をしてもらった時には繋がらないように処理されていた。
お財布と携帯と鍵を同時に置き忘れても全てまとめて戻ってくることもあるような日本とは違って、気をつけていても日常茶飯事にモノが盗まれる国・・
日本に居た頃は2年に1度くらいの頻度でiphoneを最新モデルに買い替えていたが、新しいモデルほど狙われるので、買い替えたい欲すらも今ではもうなくなってしまった。
自転車盗難のプロ集団

訳あって前輪と後輪が異なるマイ自転車
携帯の盗難被害に負けじと多いのが、自転車の盗難被害。ロンドンへ来て1年目、ブロードウェイマーケットという人通りが多いエリアにあるうどん屋さんでアルバイトをしていて、お店の前にある駐輪場に毎回停めていた。
ガラス張りのお店だったので、店内からも確認できるし安全!と思っていた頃、退勤後に外に出たら前輪のない私の自転車が停まっていた。隣を見たら前輪しか残っていない元同僚の自転車。

盗難被害直後の私たち
仕事終わりの23時にふたりとも意気消沈。「前輪だけ残っていてもどうしようもない」と言って彼から前輪をもらったので、私の自転車は運よく元に戻ったけれど、外に停めていたら鍵が付けられていないパーツは容易に盗まれてしまう。
どんなに頑丈な鍵を付けていてもプロの手にかかれば鍵も切られ、ロンドンにある駐輪場では切られた鍵がそのままにされているのをよく見かける。
それ以降自転車は盗まれていないが、駐輪後に戻ってきては同じ場所にあるだけで「待っていてくれてありがとう〜」の気持ちになる。

レンタルバイクのライムはどこでも見つけやすいし、盗まれないので圧倒的におすすめ
番外編。エレベーター被害
思い返してみると、盗難だけでなくエレベーターに閉じ込められたこともあったなあと。
友人のお家に遊びに行く時に乗ったエレベーターで、携帯の電波もない繋がらない中ひとりぼっちで停止。
到着予定時刻から全然来ないことと、連絡が取れないことを不安に感じた友人が閉じ込められているのを見つけ出してくれたけど、気がついてくれなかったらと考えると恐ろしい。

閉じ込められて1時間後、業者さんによって開けてもらえた時
友人たちが外から声をかけ続けてくれたことと、業者さんが向かってきていることを聞いて安心して中で過ごせたけれど、1時間もエレベーターの中に閉じ込められるのは一生体験したくない経験のひとつである。

つい先ほど1ヶ月の帰省を終えてロンドンに帰ってきた。日本へ向かう時にANAの機内に乗り込んで感じた安心感とはまた違う安心感を感じていて、これもまた不思議に思う。今の生活の拠点はここにあるのだと謎の安堵に包まれる。
ロンドンで生活する上では欠かせないこの緊張感と今後もうまく向き合っていきたい。
PROFILE
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本間 加恵
1995年生まれ。東京都出身。スタジオアシスタントを経て、2020年に独立。
ファッションフォトやポートレートを軸に活動し、ファッションブランドのルックやマガジンの撮影を担当している。
2023年に拠点をロンドンに移し、活動中。