UPDATE : 2025.05.19

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#BEAUTY & HEALTH

枝優花の「心と体に効くモノ」vol.9 連載チーム勢揃い前編「自分の中で“納得感”をどうやってつくっていくか」

Interview / text:Yoko Hasada

Photo:Manaya Sakaguchi(TABUN)

Edit:Kei Kawaura、Taiyo Nagashima

自分で自分の気持ちを上げるために、好きなもののなかに身を置いたり、自然の力に癒されたり、美味しいものを食べたり、現実から一度距離を置いてモノ・コトの力に頼る。自分を救う“おまじない”は、お金で買えることもある。そんな「あなたにとって“心と体に効くモノ”は?」――映画監督 / 写真家の枝優花さんがホストになり、やさしい人々を訪ね歩く対談連載。最終回は、連載に携わってきたメンバー5人それぞれの、心と体に効くモノについて。長時間のインタビューを前後編で掲載!

編集者・川浦のお守りアイテム:陶芸

枝優花(以下、枝):さっそく、それぞれの「心と体に効くモノ」について教えてください。

 

川浦慧(以下、川浦):私が持ってきたのは、陶器。最近行けてないんですけど、陶芸教室に通っているんですよ。

 

枝:へえ〜!

 

川浦:そこで作ったものです。

羽佐田瑶子(以下、羽佐田):自分で、デザインもイチから考えてる?

 

川浦:そう、自由に作らせてもらえるのが楽しい陶芸教室で。これはお茶碗に見えるけれど、植木鉢です。焼くと、一回り小さくなっちゃうんですよね。そこを加味するのを忘れていて、設計をミスっちゃったんですけど、どんな植物を入れようかなって考えてます。

 

玉村敬太(以下、玉村):あれはどう?ちっちゃいサボテンとか。

 

川浦:ああ、いいね。多肉植物とかもいいかもしれない。もうひとつが、ワイングラス的なものを陶器で作ってみたらどうだろうと思って試してみたんです。実際にクリスマスは、このワイングラスでワインを飲んでみました。

 

羽佐田:どうして陶芸をやろうと思ったの?

 

川浦:なんだろう……自分の手で、実用的なものを作りたいと思ったからかなあ。あとは、土を触っている時間ってめちゃくちゃ楽しくて。

 

枝:わかります。粘土遊びとか、小さい頃無心でやってました。

 

長嶋太陽(以下、長嶋):やってた、やってた。

 

川浦:でも、大人になると、土に触ることってほぼないじゃないですか。で、職業柄、イチから立体のモノを作るっていう行為もない。こねていると何かが出来上がっていく様子はおもしろいし、最終的に自分で作ったものが“実用的である”っていうのも、すごく魅力的で。

長嶋:ああ〜……わかる!

 

川浦:編集の仕事って、モノ作りではあるけど実際に使えるようなものではないから。

 

長嶋:道具ではないからね。

 

川浦:そうそう。だけど、陶芸をしていると、生活の中に自分が作ったものが入ってくるっていう感覚を味わえるのが結構おもしろくて。目標は、自分の家の食器棚のお皿を、全部自分で作ったものにすることです。

 

玉村:最高じゃん!

 

長嶋:たしかに、ねちょねちょした泥を触る、みたいなことってさ、どんどんなくなっていくよね。不思議な行為だけど、そこに命の実感みたいなものがある。

 

玉村:その話を聞いてて思い出したのが、ちょっと話がずれるかもしれないんだけど、吉本ばななさんが「生活を忘れないためにも、人間の根源的なものに触れてなきゃいけない」みたいなことを言ってて。それは、排泄物も含めてだって話がいいなと思って。

 

俺は結婚して、子どもが3人いて、今のところね。人生わかんないから今のところそうなんだけど、一人で生きていく人もふたりで生きる人もいて、人生のスタイルがそれぞれあるでしょ。そこに共通点があるのかなって考えたときに、他人の異排泄物に限らず、犬でも畑の肥料でも、他者の排泄物に触れることの大切さをめっちゃ実感してて。生活の根源的なものに触れるのは大事だと思う。

 

長嶋:土を触るって、その根源的なものに含まれてる気がする。

 

枝:小さい頃は、泥団子を毎日のようにつくって職人みたいになってたのに、大人になると地面との距離が離れていくじゃないですか。

 

長嶋:池の淀みとか、石をひっくり返したらダンゴムシがいてうれしい、みたいな感覚、忘れちゃうよね。

 

枝:そうそう。アリを見なくなったな、と思ってたらそうじゃなくて、アリはいるんだけど私がしゃがんで見てないんだってことに気がついて。この間、ドラマの現場にお子さんを連れてきているスタッフがいたんです。みんな、親のような気持ちでその子を面倒見ていて、その子がまあ自由に走り回って、虫や花をたくさん見つけてくるんです。下に落ちてるものばっかりで。

 

羽佐田:だいたい子どもはしゃがんでますよね。

枝:私とその子は同じ空間にいるのに、私たちは天気のことばっか気にして上を見ているけれどその子はずっと下を見ているんだなと思って、こういう感覚忘れてたなって思い出しました。

 

長嶋:この話、どこまでも広がっていくな(笑)。

 

羽佐田:ごめんなさい、まだ広げちゃうけど気になってて、慧ちゃん紙粘土で「妖怪」作ってなかった?慧ちゃんといえば、妖怪が大好きなので。

 

川浦:紙粘土で作ってはないけど、実はこの陶器も「妖怪に捧げる」っていうのが裏テーマ。

 

長嶋:裏テーマ!

 

枝:最高ですね(笑)。

 

川浦:陶芸をするときに、ただ実用的なものを作るんじゃなくて、裏テーマを決めようって思って。それで、私は妖怪が好きで、なかでも河童が大好きなんです。

 

たとえば、河童が“いたとして”、河童のためになるものを作るとしたらどんなものだろうなって考えたんです。そしたら、河童って頭の上にお皿が乗ってるじゃないですか。

 

長嶋:乗ってるね。

 

川浦:あのお皿の中には水が入っていて、水がなくなっちゃうと死んじゃうから、そこに蓋をつけてあげたら溢れないんじゃないかと思って、薄いお皿とセットの蓋を作ってる。

 

玉村:なるほど!

 

枝:なるほどなのか?(笑)

 

川浦:こういうのが作りたいんですって先生に図を見せるんだけど、先生も深入りしてこないから、何のために作っているんだろうとは思っているはず。

 

羽佐田:まさか、河童のためとは……。

 

川浦:いつか、河童に出会ったときにプレゼントしたい。

 

玉村:……なんか、きれいな話になっちゃうけど、知らないものに対する思いやりがめちゃくちゃ育ってるね。

 

川浦:得体のしれないものへの思いやりって、いいですね。

 

長嶋:俺たちも人間のフリをしているけど、正直わかんないじゃん。

 

玉村:第一回に登場した、スターシードだ。

 

長嶋:得体のしれない者同士だっていう自覚って、相当持ちづらいと思うけど、河童くらい離れている人に思いやるっていうのは、すごくいいトレーニングというか、心が育ちそうだなって思う。

カメラマン・玉村のお守りアイテム:写真館

玉村:今、不定期で「きまぐれ写真館 プンクトゥム」っていう移動式の写真館をやってるんだけど、あえて“仕事”って言うけど、この仕事を始めたときはプライドの持ち方がちょっとわかんない時期があって。

羽佐田:写真館という仕事について?

 

玉村:とくにコロナ禍や大きな地震があったときに、命がけで人命救助している消防士さんや自衛隊の人たち、お医者さん、あとは炊き出しをしたり野菜を作ってたりする人は、いちばん大事な命につながる仕事なんだなって思った。対して、写真を撮るって一体なんの役に立っているんだろうって思った時期があって。

 

長嶋:こういう仕事をしていると感じるよね、本当に誰かを救えているのだろうか?みたいな。

 

玉村:そう。それでも続けなきゃ答えはわかんないと思って続けてて。移動式だから、道具もセットも持ち込みで、何もないところに自分が持ってきた家族写真を並べるところから作業が始まるんだけど、何度も繰り返してたら「俺はとんでもないことをやっているのかもしれない」と思ったの。もし、地震が起こったら、写真を抱えて逃げる人もいるかもしれないなって。だから、この額装した写真を並べていると、自分のプライドの持ち方を自覚できるんです。

長嶋:命の現場にいる人たちに対して「俺は何してんだっけ」みたいな気持ちになる瞬間は、ある。でも、病気を治して助けるのも大事だけど、感情や心の領域を守ることも大事な仕事だなとも思う。

 

羽佐田:額装っていうのも、大事なんですか?

 

玉村:データで写真を渡してもあまり見返してもらえないんだけど、額装してるとみんな家に飾ってくれんの。別に飾らなくてもいいし、捨てたくなったら捨ててもいいって写真を渡すときに伝えるんだけど、それって結構なエネルギーを使うじゃん。

 

枝:捨てられなくても、写真が恥ずかしくてタンスにしまっちゃう人とかいそう。

 

玉村:たとえば20年後に父ちゃんが死んで、形見分けをしているときに写真立てがパッと出てきて、小さいときの自分を見る。そういう瞬間まで想像して、モノにしてるんだと思う。

 

長嶋:スマホが普及して、写真を撮る回数はきっとめちゃくちゃ増えてるじゃん。大げさに言えば、100万倍くらい。

 

枝:ほんと、そうですよね。

 

長嶋:だけど、どれだけその写真が心に残っているかみたいなところでいうと、アナログ回帰みたいな話になっちゃうけど、形に残すことで身体に感じるものがあると思う。

 

枝:だから、逆に形にするのが怖いっていう感覚もあります。たとえば、付き合っている人の写真を現像するのとか、私は絶対嫌。

 

羽佐田:わかります、写真以外のいろんなものが残る感じがある。

 

枝:時間とか、いろんなものが写真と一緒に残りますよね。だから、あえて形にするって、実はすごく勇気がいることだと思う。家族写真として、形に残す仕事をするって相当ハードルが高いなって思います。

 

玉村:だから、この額装した写真を並べるのは戒めというかメディテーションなの。これから俺は、とんでもないことをやってやるんだぞって、気合いが入る。

編集・長嶋のお守りアイテム:水泳グッズ

長嶋:ここ3年くらいかな。子どもが生まれて、仕事のやり方が変わり、ある意味で修羅の道だったわけです。

枝:太陽さんは、バラバラになってました(笑)。

 

長嶋:振り返ってみると、もともとの自分のことがよくわからなくなるくらい変化が大きくて、体調も崩しまくってたしギリギリの暮らしをしてて。元来の自分も生きやすい乗り物じゃないから、それをなんとか起動して、うまく生きやすいように見せてたんだけど、やっぱりちょっと限界だと。

 

枝:そうだったんですね……

 

長嶋:それで気づいたのが当たり前のことなんだけど、食うことと寝ることと身体を動かすことは、健康の三原則だと思うんですよ、基本的に。

 

玉村:そうだね。

 

長嶋:この三原則のうちの、食うことと寝ることは24時間やらなかったらきついから、絶対にやるでしょ。だけど、運動だけは1ヶ月やらないでもいられる。

 

枝:ああ〜、そうですね。

 

川浦:やってないかも、わたし。

 

長嶋:それで思ったのが、食うことと寝ることがなんかうまくいかない時に、トリガーとして、身体を動かすスイッチをまず最初に押してみるということ。それで全てがうまく回っていくのではないかと思って。その検証として、今はとにかく時間ができたら泳ぐようにしてる。そのための道具です。

枝:仕事の合間にも泳いでいるんですか?

 

長嶋:2時間空いたら泳ぐ! という鉄の掟を作っています(笑)。通っていた産婦人科の近くに区民プールがあったんですけどコロナの影響で健診に立ち会えなかったから、妻を送って、待っている間にプールに行ったりもしてた。今は国立競技場の近くの東京体育館のプールに、週1〜2くらい通ってるかな。

 

枝:けっこう行ってますね。

 

長嶋:もちろん体調崩したり、忙しくて行けなかったりもするけど、運動が全てを好転させていくっていう仮説は、結構正しいと思う。

 

羽佐田:運動してないときは、さらに体調が悪くなったり?

 

長嶋:体調崩して行けなくなると、よりダウナーになる感じはあって、習慣的に行っているときのほうが心の調子が上がってる感じはしますね。

 

玉村:太陽くんはフィンスイミングの日本代表だったじゃん。泳ぐときの自分のルーティンみたいなものはあるの?

 

長嶋:そうそう、高校生の時にフィンスイミングの世界選手権に出たんですよ。なんとなくの流れは決めていて、大体1000メートルちょっと泳いでる。でも何より大事なのは、車に常に水泳道具を置いておいて、いつでも行けるようにすること。東京体育館はフィンを履いて泳げる珍しいプールだから、そこもお気に入り。

 

枝:運動健康説ってあるじゃないですか。

運動をしている人って、心が健康なんです。すごく。体温が上がっていくと陽気になるから、物事を暗く捉えなくなるとも言われていて。でも、ものづくりをしている人からするとそれが善ではなくて、暗さから生まれる音楽とかってあるじゃないですか。

 

長嶋:あるね。

 

枝:自分もメンタルを整えることも必要な仕事だけど、整え過ぎちゃうと繊細なことが考えられなくなるんで、塩梅が難しいなって思ってて。

長嶋:それで言うと、水泳って、孤独なスポーツだと思うんですよ。人間のまわりを水が覆っている状態で、ある意味瞑想みたいな感覚で。

 

枝:そっか。

 

長嶋:自分の輪郭を自覚する。頭と身体の内側でぐるぐるしながら考えるってことを、子どもの頃から死ぬほどやってきたし、自分の場合は明るくなる感覚はあんまりなかったかも(笑)。

 

玉村:太陽くんは、今どんなことをよく考えてるの?

 

長嶋:なんか、創作と運動、体の関係性みたいなことはよく考えてる。なんていうんだろう……感受性の残し方というか。

村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』を最近読み返しているんだけど、走ることって他者と比べてどうこうでは全くなくって、自分の中で納得感をどう作るか、みたいなことだって書いてあるんですよ。

 

羽佐田:トライアスロンも、フルマラソンもやっている、村上春樹が。

 

長嶋:自分で決めた目標を達成して、自分の中で納得感を蓄積していく。そういうことが“自分”を保つうえですごく大事だと。

 

枝:ほんとにそうですね。

 

長嶋:村上春樹と川上未映子の対談で、小説家は各年齢で味わった感受性や思い出を自分の中の大きな引き出しにしまっておいて、それを適切に取り出せる人間である、みたいなことを喋ってて。それって、けっこう訓練が必要というか、教鞭な精神と肉体がいることだと思う。

 

自分は、心身ともに強靭なタイプではないし、運動はそこそこできるけど身体は弱いなって感じることもあって。だからこそ、身体を動かしながら心を強くしなやかに保っておく、そのやり方みたいなものは永遠のテーマだと思う。

枝:このチームのみなさんと接していて特殊なお仕事だなって感じるのは、私は直接的にモノを作るじゃないですか。映画とか、ドラマとか。で、みなさんは私みたいな人間を扱う人たちだから、こっちの気持ちもわかりつつ社会性を私よりも持ってなきゃいけなくて、バランスが難しいですよね。

 

偏っちゃうとうまくいかないし、共依存的になっちゃいけないし、社会性を持ちすぎると受け入れられないし。作る人の変態さもわかってあげながら、コントロールしていて、いつも「バランス……!」って思ってます。

 

長嶋:その辺りのバランスって、川浦は、どうやって取ってますか?

 

川浦:どうやってるんだろう……。

 

玉村:共感が強すぎたら、まとまらないのかなとも思った。でも、共感しながら話を聞いているし……それぞれのスタイルってこと?

 

川浦:すごく寄り添うタイプの人もいるし、ビジネスライクというか、どういうものを作りたいのかしっかりとイメージがあって、決めてやっているタイプもいるし、その場の熱量や爆発力を大事にしたい人もいるし……私はどうなんだろう。

 

玉村:俺がこの連載を一歩引いたところから見てきて思うのは、けっこう野放しにするんだなーってこと(笑)。

 

枝:ほんとに(笑)。

 

川浦:私はおしゃべりしながらその場で生まれるものを大事にする方が、好きなのかもしれない。読み手としても、そういうムードがあるものに惹かれるかなあ。太陽くんはどうですか?

 

長嶋:かつての自分は、完全に寄り添い系で、相手に対して個人的に「それわかる」っていうのを強く持っていたし、そこによろこびがあった。誰かと、重要な感覚や考えを分かち合えることに、重きを置いてきたと思うんだよね。

 

枝:そうですよね。

 

長嶋:だけど、今はちょっと変わってきていて、プレイヤーとして目の前の人としっかり向き合う、ということがだいぶ減ってきたし、もうちょっと色んな責任が増えてきたなっていう感覚で、それが自分としては混乱しているところですね……。

 

羽佐田:子どもの存在も大きいですか?

 

長嶋:そうですね。感情的にオーバーワークというか。自分の精神的なリソースが子どもに持っていかれまくるので、他のことに目を向けられていないのかもしれない。本もなかなか読めないし、展示も見に行けないし、必然的に土日の予定は埋まるし。平日の仕事はなんか色んなことに追われていて……。

 

枝:休んで!(笑)

 

長嶋:今年は余白を持って、自分個人の人生を楽しむということをもっとやりたい!!!羽佐田さんは?

 

羽佐田:私は、もう完全に寄り添いタイプです。なんだろう……私の場合は、気づけば社会性を持ってしまって、上の命令に従って列に並んじゃう真面目人間で、そういう自分がすごく嫌いなんですよ。変な人が大好きだし、自分も変でありたい。だから、なるべくおもしろい人たちの近くにいて、その人たちの“なんでもあり”に巻き込まれて、一緒に踊ってたいって気持ちが強くて。

玉村:そうなんだ。なんか、いつも現場がやさしいじゃん。それは、自分から「そっちに行きます!」って決めてるんだね。

 

羽佐田:そう、一緒に行くって決めてるし、巻き込まれたいし、楽しみたい。

 

枝:どうして、列に並んじゃう自分が嫌いなんですか?

 

羽佐田:うーん……優等生でありたいみたいな気持ちが、小さい頃はすごく強くて、たとえば小学校の図書館で10冊くらい本を借りて、わざわざ手に抱えながら下校して、親や近所の人に褒められようとしてたの(笑)。周りがわりとやさぐれていて、ヤンキーに囲まれて育ったんで、こんな不真面目な奴らと私は違うって、真面目であることが私のアイデンティティだったんだと思う。

 

長嶋:めっちゃわかる、似たような場所で育ってる。

 

羽佐田:その優等生アイデンティティが育ちすぎて、高校生で地元を出たときに面食らって。私、めちゃくちゃつまんない人間じゃんって。

 

枝:ヤンキーになりたくなくて優等生になったのに、優等生にも幻滅して。

 

羽佐田:大人が敷いたレールの上を歩いてるだけって「ダサあああ!」って。どうにかしてそっちの道を避けたい、もっとおもしろい人間になりたいって思ったときに、私が思うおもしろい人たちに巻き込まれてみようと。作ることもためしてみたけれど、もともと本が好きだし、人に興味があるから、今の仕事にたどり着いたんだと思います。

 

玉村:俺も優等生なんだ。

 

全員:…………。

 

玉村:だまんないで(笑)。俺ね、ばあちゃんに言われてすげえ覚えてるのが、「いつでも親の顔色を伺ってなさい」って言葉なの。

 

枝:すごい言葉ですね。

 

玉村:今考えるとおかしいなって思うけど、当時は思わなかった。だから、母さんの機嫌が悪かったら一生懸命お手伝いをするし、なるべく顔色を伺って、それを窮屈には感じてなかったのね。でも、気づいたときに、嫌だなって。それからは、社会の中でどうやったら自分が伸び伸びできるか、一方でハグレモノにならないように、どうやったら社会と接続できるか考えて、ここにたどり着いた。

 

羽佐田:その感覚はすごく近い。

 

長嶋:そう思うと、このチームはけっこうみんなタイプが近いのかもしれない。ベースがちゃんとしてて。

 

羽佐田:ベースはしっかり者なんだけど、そこが根深いコンプレックスでもあって……。

 

玉村:だからさ、子どもが好き勝手やってるの見ると「かっこいい〜〜!」って思うよね。

 

羽佐田:わかる! どんどんぐちゃぐちゃにしてって思う。

 

玉村:ちゃんとしなきゃいけない場面で「うおー」って叫んでたりすると、最高だなって思う。

 

(後編につづきます)

PROFILE

  • 枝 優花

    1994年生まれ。群馬県出身。

    23歳にして制作した初の長編映画『少女邂逅』はインディーズ映画ながら異例のロングランヒット。また写真家として、様々なアーティスト写真や広告写真を担当している。マイブームは、スキンケア研究。

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