#ART & CULTURE

2BOYのくりえいてぃぶ研究所 vol.2 BLUE ENCOUNT 田邊駿一

Photo:Tsutomu Ono

Illustration:GIVE ME TOMOTAKA

Edit:FREAK MAG.

クリエイティブディレクター/アートディレクター/グラフィックデザイナーとして、音楽やファッションなどさまざまな分野で活躍する2BOYが、今話したい人物を訪れる対談企画「2BOYのくりえいてぃぶ研究所」。第2回目はロックバンド・BLUE ENCOUNTのギターボーカル・田邊駿一とともに、互いの音楽とアートワークについて語り合う。

 

二人は、ともに仕事をする前からお互いの存在を知っていたという。その頃に抱いていたイメージから、2BOYが手掛けたBLUE ENCOUNTのジャケットに込められた想いや制作秘話まで、実に密度の濃い内容となった。コアファンもびっくり、今回初めて世に出るビッグなエピソードもあり!

――まずはお二人の出会いから聞かせてください。

 

2BOY:僕は以前からずっとBLUE ENCOUNTの音楽が好きでライブも観に行ってました。演奏も歌ももうまいしMCもおもしろいし、あとはよく泣くメガネだなと(笑)

 

田邊:やぶさかではない(笑)

 

2BOY:で、それとは関係なくレーベル担当のミルクさんとは飲み仲間で、ある日「ブルエンのジャケット、デザインお願いできない?」と言われたことがきっかけですね。

――それが2019年8月にリリースされたシングル「バッドパラドックス」のジャケットですね。

 

田邊:ミルクさんが「信頼できるクリエイターがいる」と。僕は2BOYさんが雑誌『CHOKi CHOKi』の読者モデルだった頃から知っていたので、びっくりしましたね。「今はデザインとかやってんだ」って。

2BOY:え、昔から知っててくれてたんだね。そういやそんな話したことなかったか。

 

田邊:ヘビー読者だったんで(笑)。たしかに、2BOYさんの経歴って聞いたことないな。アパレル業界からどうなってクリエイターに?

 

2BOY:20代は販売員で、同じ会社に10年くらいいたんだけど、30歳になるタイミングで「もう10年ここで働き続けるのか?」と考えると、イメージができなくて。その場で店長に「辞めます」と言って2週間後くらいに退社しました。

 

田邊:そこからどうやってクリエイターになるんですか?なんか門みたいなものがあるんですか?

 

2BOY:販売員やる前にデザインの専門学校には通っていたから、もう1回、今度は人生賭けてやってみようと。そこからは独学で。

田邊:え、すごい。

 

2BOY:でもギターの師匠とかいないでしょ別に。

 

田邊:憧れている人はいるけど確かに、誰かに師事して教えてもらったことはないですね。

 

2BOY:憧れのギタリストのコピーから始めるのと同じで、このデザインができるようになりたいって思った対象を模倣するところから。

 

田邊:それマジで大事ですよね。

 

2BOY:それである程度できるようになってからは、キャパシティを超えるような依頼にも「やれます!」と言ってあとから帳尻合わせてどうにかする、みたいなことを繰り返して今に至る(笑)

――「バッドパラドックス」を手掛けることになった経緯を、もう少し詳しく聞かせていただけますか?

 

2BOY:ミルクさんから「今までのブルエンのアートワークもいいんだけど、この先は一本芯みたいなものがほしい。これからのブルエンを一緒に作っていける人を探している」と言われて。

 

田邊:なるほど。確かに「バッドパラドックス」はブルエンの新章の始まりというか。それまではいわゆる2010年代のフェスシーン、暴れてなんぼ、踊ってなんぼ、みたいなところで戦っていたけど、2019年あたりって、そこにいた多くのバンドが自分たちのカラーリング、ブランディングをより大切にしなきゃいけないフェーズに入っていったような気がしていて、それはブルエンも例外じゃなかった。じゃあ自分たちは何から変えていくのか、何が今の自分たちらしさなのかを見つめなおしていた時期だったんですよね。そこにドラマ『ボイス 110緊急指令室』の話があって、書き下ろした曲です。

 

2BOY:ブルエンってタイアップ多いけど、対象のイメージに沿いながらも、ちゃんと自分たちならではの情熱やメッセージが込められている。「バッドパラドックス」もまさにそうで、それをビジュアライズする僕の立場から言うと、その二つの強い想いを表現しなければいけないから、なかなか苦労しました。そこからこの6年、なんやかんやずっとオファーもらってるけど、毎回これが最後の仕事だと思っています。一つの作品が終わって、また次のオファーがあったら、「あー、よかったぁ!」みたいな。

 

田邊:それはなぜ?当たり前のようにと言ったら語弊があるし、シビアな目も持っているうえで、僕らは2BOYさんに継続的にやってもらいたいと思っているし、ミルクさんの最初のオファーもそうだったわけで。

 

2BOY:田邊くんの言葉もブルエンのサウンドもまずそれ自体が強い。そのうえで、言葉選びにもリズムの取り方にも変化があるし、サウンドも進化してる。ちゃんとそのときのモードがあるから、アートワークも同様にしっかりアップデートしていかなければならない。だから毎回が勝負で。

――田邊さんやメンバーの皆さんが2BOYさんにアートワークのイメージを伝えて、2BOYさんが作業に入るんですか?

 

田邊:いえ、僕らは基本的に曲そのものを送るだけ。そこにぜんぶ詰まっているから。

 

2BOY:初回提案でスムーズにいくこともあれば、ラリーになることもある。いずれにしても毎回シビアで慣れ合いみたいなものはないから、うん、やっぱ毎回が勝負ですね!

――そして「バッドパラドックス」の次のシングル「ポラリス」、そこからアルバム『Q.E.D.』の流れですよね。今までとの大きな違いは、メンバーの写真がジャケットに使われています。

 

2BOY:「ポラリス」というタイトルはほかのアーティスト曲にもあるじゃないですか。田邊くんもそれをわかったうえで書いている。僕はそのことを踏まえて歌詞を読んで曲を聴いて、そのまま星をモチーフに使いたくはないなと思ったんですよね。そこで、「ブルエンならではのポラリスとは?」と考えたときに、メンバーとファンとの関係性だなと。そしてメンバーが見上げている星はファンで、ファンが見ている星はメンバーというところにたどり着いて、これでいいこうと。締切ギリギリまで粘ったんで迷惑かけましたけど(笑)

 

田邊:これはメンバー全員「おっー!」ってなりましたね。写真はアー写の撮影のときに撮ったんですよ。カメラマンに「メンバーみんな後ろ向いてくれ」と言われたんで、「何に使うんだろう?」と思っていたらこれだった。

田邊:「バッドパラドックス」はさっきも言いましたけど、ブルエン新章の始まり。そしてドラマもヒットしておかげさまでたくさんの人に届けることができました。その反面、タイアップで音楽性も変化したから、そんなつもりはなくても今までのファンを置いていくことになるんじゃないか、とも思ったんです。インディーズからメジャー、メジャーでもよりエンタメ性の強い場所へ、といった流れの中にはよくあることですよね。そしてさらにアニメ「僕のヒーローアカデミア」の主題歌の話がきて、「じゃあどうしようか」と考えて「ポラリス」ができました。この曲は、「バッドパラドックス」以前のザ・ブルエンを踏襲することに軸足を置きつつ今のスパイスも、という曲なんです。そこに、お客さんが前を向いていてメンバーが背中を見せているという、あまり思いつかなさそうな2BOYさんならではのアイデアはぴったりでした。ファンとの関係性を大切にしてきたブルエンっぽいんだけど、ちゃんと新しい要素も入っているんですよね。

2BOY:そこからの『Q.E.D』。これは我ながらよい企画になったなと。それまでメンバーが自分たちの姿をジャケットに出すことはなかったんですよね。「ポラリス」は加工してますし。それは意図的なことで「そこに意味があれば出るけど」というテンションだったことも知っていました。でも、ベースの辻村(勇太)くんが当時脱退することになったという話を聞いて、とにかくこの4人の感じを残したいと思ったんですよね。それで食卓をバンドという概念に見立てて、それを4人が囲むというアイデアが浮かびました。辻村くん以外の3人はナプキンをつけて食事中で、辻村くんは1回ナプキンを外して休憩している。辻村くんは離れるけどブルエンはこの4人なんだよっていう想いを企画書に落とし込みました。いつもは複数案出すんですけど、このときはこれ1本勝負。その結果、満場一致で嬉しかったです。結局辻村くんは脱退はしなかったんですけど、あれ?このエピソードを話すのは初めてじゃない?

田邊:写真の意図について語るのは初めてですね。辻村がニューヨークに行くから脱退することをメンバーで話し合って、アルバムは4人での最後の作品のつもりで作ったんです。そしてアルバムを出したあとに辻村の脱退を発表して、ジャケットの意味も公にする予定でした。けどコロナ禍に入って、「いろんなやり方があるよね」という話になって、「コロナ禍が収束してニューヨークに行ってもバンドは続けられるんじゃないか」という結論に至り、辻村は脱退せずに拠点を移すだけになりました。そして時を経て、今年の2月に出したアルバム『Alliance of Quintetto』では、また食卓を囲んでいる。実はふたつのアルバムのジャケットはストーリーが続いているんですよね。

 

2BOY:『Alliance of Quintetto』の写真は『Q.E.D』と比べるとラフに“飯食ってる”っていう感じ。やっぱ仲間同士、こうやって食うのがいちばん美味いよね、という気持ちを込めました。

――では最後に、今後やりたいことを聞かせてください。

 

 

2BOY:今まさに次に出す新曲のジャケットを制作しているところです。アニメ『真・侍伝  YAIBA』のオープニングテーマとしてすでにTV用のサイズは配信されている「BLADE」のCDジャケットですね。

田邊:今回はストレートに刃物をモチーフにしていて、すでにたくさんのパターンが出ていてセレクト中です。楽しみにしていてください。

 

2BOY:ツアーグッズもデザインを手掛けさせてもらってるんですけど、今後はいつものメンバーやマネジメントの意向を受けて僕が案を出すというやり方ではなく、メンバーと最初から話し合って何かを作ってみたいですね。

PROFILE

  • 2BOY(yenter)

    “1”を”100″に、”1″を”A”に。をモットーに、不自由の中で最大限の自由を楽しみながら活動中。広告、音楽、ファッションを中心に、プランニングやコピーライティングまで幅広く手掛ける。
    トレードマークはずっと変わらないブロンドヘアー。

    「1人でも2BOY」

  • 田邊駿一

    BLUE ENCOUNT(ブルーエンカウント) Vo. Gt.

    エモーショナルかつ等身大の言葉の数々を、ストレートに伝えるライブパフォーマンスには多くの共感を集める。

    デビュー以降メッセージ性の高い歌詞と、熱いバンドサウンドが話題となり、ドラマやアニメ、映画、CMなど数々のタイアップ楽曲を担当。

    アニメ「銀魂」「僕のヒーローアカデミア」「BANANA FISH」などのアニメ主題歌のみならず、ドラマ主題歌なども数多く手がける。中でも「僕のヒーローアカデミア」OPテーマ「ポラリス」は全世界総再生数1億回、日本テレビ系土曜ドラマ「ボイス110緊急指令室」主題歌「バッドパラドックス」はストリーミング総再生数4,900万回を記録している。

    2023年2月に約6年半ぶりとなる武道館でのワンマンライブを開催、その後3月からはベース・辻村勇太の活動拠点がニューヨークに移り、ロックバンドとしては類を見ない、日米二拠点での活動がスタート。
    2024年に結成20周年を迎え、5枚目となる最新フルアルバム「Alliance of Quintetto」をリモートでのレコーディングを駆使して今年2025年2月にリリース。現在は辻村が一時帰国し久しぶりのフルメンバーでのアルバムツアー「BLUE ENCOUNT tour 2025“Meet the Quintetto」を今年5月より開催中!

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