すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がクラウドの心を一つにする。前情報のない無名のアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブがフロアを大いに盛り上げる。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターが、“オルタナティブ”をテーマに、タイムリーなアーティストやおすすめのニューリリースをテキストとプレイリストで紹介します。
Mandy, Indiana『URGH』
マンチェスターとベルリンの2拠点で活動するMandy, Indianaが2ndアルバムをリリース。悪魔によってすべてが鉄にされてしまった世界。生き残った人間たちは、ここがいずれ錆びて滅ぶことがわかっていながら、それでも必死に抗おうとする。というのはアルバムのコンセプトではなく私のイメージ。
何が言いたいのかというと、これは怒りと絶望のなかでしか得られない強さと想像力によって生まれた、モンスター級のアルバムだということ。インダストリアルな火花を散らしながら、パンク、テクノにヒップホップ、ヘビーメタルといったさまざまなジャンルをクロスさせる。反復の中毒性と予期せぬ展開によるスリルの乱打。先の見えない世界を破壊して再生する音が鳴っている。私たちは武器を持たなくても音楽とダンスで戦える。極限状態の肉体性をここまで鮮烈に表現した作品は稀有だ。
Puma Blue『Croak Dream』
サウスロンドン出身のシンガーソングライター/プロデューサー/マルチインストゥルメンタリストのJacob AllenことPuma Blueのニューアルバム。UK音楽独特の陰鬱に満ちたトリップホップ、IDM、オルタナティブロックやポストパンクなどの系譜とジャズやソウルが溶け合い描かれる、ジャケットさながらの深い青と黒のグラデーションが美しい。
そのルーツを紐解こうとしたときにまず浮かぶのはRadioheadやPortisheadの影。しかしそこにあるソウルやジャズの要素はPuma Blueそのもの。文脈や血肉をてらうことなく表面化させ融合していく実験。それによって生まれた斬新さは、Radioheadにもっとも接近したであろう「Croak Dream」を聴けばわかる。徹底的にダークで不穏なミニマリズムにこだわりながらも、彼のシグネチャーの一つである抜けのいいクローズリムショットを最も際立たせた「Mister Lost」での発想も実に興味深い。聴けば聴くほど見えてくるそのレイヤーにリピートが止まらない。
RIP Magic「5words」
ロンドンを拠点にするSorryのメンバーであるMarco Piniがフロントマンを務めるRIP Magicの2ndシングルは、LCD SoundsystemのJames Murphyがプロデュース。Jamesが他バンドのプロデュースを手掛けるのは10年以上ぶりだそう。リリースも彼が創設者の一人であるDFAからということで、期待に胸が膨らむ。
チープで奇妙なトランス感のあるシンセ、リズム隊とボーカルの脱力感。抜けてるんだけど踊れる。このレトロなダンスパンクはまさに想像とドンピシャ+α。そしてこの感じをひたすら5分繰り返すのかと思ったら、2分45秒あたりのシンセのキメが細かく音色も煌びやかになっていくところから、曲の骨格はそのままに、クラップが入り、音数が増え、ハットは4から8、16になり、シャウトが飛び出し狂っていく。これは馬鹿になれる。午前4時あたりのダンスフロアで浴びて泥になりたい。最高です。
インディー/オルタナティブロックやパンクをベースにした多様なダンスビート。今月はいつもよりいっそう、私たちSUPERFUZZのパーティ現場らしいリストになりました。気になったらぜひ遊びに来てください。次回は3月27日、渋谷Club Malcolmにて、23時30分からのオールナイトです。ときどき「デイタイムで開催してほしい」という声もいただくのですが、そこはまだオールナイトにこだわりたい。終電を越えた深夜だからこそ得られる快楽や多幸感に勝るものを、まだデイでは味わったことがないので。
そしてSUPERFUZZより前の3月7日は、都内とUKの2拠点での活動が始まったバンド、bedが渋谷clubasiaと組んで開催しているパーティ『bedroom』でDJします。私がSUPERFUZZとともにオーガナイズメンバーを務めるパーティ『DUST』のDJ3人での出演。『bedroom』は3周年、clubasiaは30周年。めでたい。bedは日本でのライブがレアになってきているので必見です。お待ちしています。
INFORMATION
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bed × clubasia『bedroom』 bedroom 3rd anniversary × clubasia 30th anniversary
日程:2026年3月6日金曜日
時間:23時~オールナイト
入場料 :4000yen
出演:
bed
電気菩薩 (TEITEI, Licht)
Snake Chicken Soup (South Korea)
JPBS (Thailand)
mileZ (FULLHOUSE)
Natsuki Fujimoto
Frankie $
eitaro sato (indigo la End)
MUNÉO
拳
DUST
anne
juli (Hype Sync Records)
酒呑童子
VOX (LOSS)
PROFILE
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TAISHI IWAMI
10代の半ば、ファッションに対する自我が芽生えるとともに、ロックンロールやパンク/ポストパンク、インディーロックといったロックミュージックのディグに明け暮れるように。そして街で手にした1枚のフライヤーがきっかけで、そういった音楽の流れるクラブへ。おしゃれでカッコいい人たちがダンスに興じるフロアに魅せられ、DJを始める。2019年にオルタナティブミュージックパーティ『SUPERFUZZ』を立ち上げた。毎月渋谷Club Malcolmで開催しているレギュラーパーティだけでなく、Sextile、Automatic、Black Asteroid、VITALINE、Isolation Berlinら、海外アーティストも積極的に招聘している。





