「作って終わり、どこかに展示して終わり」という従来の産学連携とは異なり、デザイン~PR~販売までを通して、次世代のファッション&カルチャーシーンを担うクリエイティブな学生たちの「熱量」を形にすべくFREAK’S STOREと文化学園大学が、新たに立ち上げたコラボレーションプロジェクト。
その第一弾として誕生した『Femarl』は、視覚障害の方がオシャレを楽しむためにデザインされた企画プロジェクト 。視力に不自由があっても、色彩に不自由があっても、リボンや刺繍など触って楽しめる装飾や、パールやストーンなどで点字を入れデザインされた洋服たちには、どんな人でもファッションを通して、自分自身らしさを表現し、自信を持って欲しいという思いが込められている。
今回は、そんな熱い想いが込められたプロジェクトのモデルを務めた『水曜日のカンパネラ』2代目主演/歌唱担当、詩羽のインタビューをお届け。『Femarl』を着こなした写真とともに、その唯一無二のセンスを武器に「自分らしく」表現し続ける彼女の根源を掘り下げる。

ー今回は、FREAK’S STORE×文化学園大学で取り組む新プロジェクトのモデルを務めて頂きありがとうございました。まずは、本プロジェクトで誕生したブランド『Femarl』の洋服を実際に着て頂いた感想を聞かせてください。
詩羽:目が見えなくても、色がわからなくても、リボンやレースなどの装飾やデザインで楽しむことができる洋服というのが、すごく伝わってきました。パールやストーンを使って点字を洋服のデザインとして落とし込んでいることが斬新かつ新鮮でした。また普段は、ガーリーな洋服ってあまり着ないので、実際に着てみて洋服の展開が広がったことも嬉しかったです。

ー『Femarl』は、「オシャレを楽しむことが健常者も視覚障害者も関係なく自分らしさを表現し、自信に繋がるもの」と捉え洋服作りをしているチームです。詩羽さんが「オシャレ」をする理由を教えてください。
詩羽:私にとってオシャレをすることは、自分を守るため、自分を強くするための「武装」なんです。その考えと同じだと思うので、すごく共感できるコンセプトでした。いろんな服を着て、いろんな自分になれる。オシャレは、それを実感させてくれるんです。
ー「オシャレすること=武装をすること」。そう考えるようになったキッカケは何だったんですか?
詩羽:中学生の頃から高校に入った頃ぐらいまで、いろんなことが上手くいかず悩んでいた時期があったんです。それで、そんな自分を何とかするために、見た目を変えてみたんです。髪型を刈り上げて、自分に似合う洋服を探すようになって、自分らしさと向き合うようになったことがキッカケでした。何度も先生に呼び出されこともありましたが、「ずっと自分らしくいる」と決めて、自分のファッションを変えませんでした。

ー自分らしいコーディネートを組む上で心掛けていることはありますか?
詩羽:様々な身長の人や体型の人、そして特徴がある中で、隠したい部分は隠していいし、逆にその部分を好きになるために出すファッションをしても良いと思うんです。体の好きなところも嫌いなところも、自分の好きなように扱えるのがファッションの楽しみのひとつなので、私は自分のコンプレックスを出したり、隠したり、その時々によって変えるように心掛けています。

ー音楽の活動についても聞かせてください。『水曜日のカンパネラ』2代目主演/歌唱担当として活動するようになって約1年が経ちました。心境や環境など、ご自身で変わったなと思うことはありますか?
詩羽:加入当初と同じ気持ち、同じテンションで続けられています。そしたら応援してくれる人も増え、気が付いたら、あんなことやこんなことになっていたっていうことが多いです。
ー『TikTokの流行語大賞2022』のミュージック部門賞に『エジソン』が選ばれたことも大きな話題を集めましたね。
詩羽:本当に何が起こるかわからないですよね。リリースしたのが2022年の2月で、バズったのが5月。メンバーの誰もが意図していない、予想外のバズりで驚きました。

ー詩羽さんはTikTokを中心としたスマホで見る縦型ショート動画の世代かと思いますが、やはり制作する上で同世代を意識しているのでしょうか?
詩羽:私自身もともとTikTokをやっていなく、仕事としてやり始めたぐらいだったので、意識はしていないです。でも、私が高校生の頃にTikTokerが生まれた世代ではあって、みんなで撮って、踊ってという感じで、同世代の中心はTikTokだったことは間違いないです。曲作りに関しては、私が作っていないのですが、どこを切り取っても耳に残る楽曲にしようと意識はしています。
ー耳に残るでいうとコムアイさんの頃に比べ、楽曲も耳に残りやすいのタイトルが多いですよね。それは意図的なのでしょうか?
詩羽:コムアイさん時代の『水曜日のカンパネラ』は、サブカル要素が強かったかもしれないですね。分かりやす過ぎるとダサいみたいな感じはあったと思います。それが『水曜日のカンパネラ』らしさを生んでいたとも思うのですが、やっぱり私が歌うなら、私が知ってるモチーフの方がよいと考えています。それに私のキャラクターやファッションにも、ポップだったりキャッチーな方が相性が良いとは思うので、それを意識してケンモチさんが楽曲制作してくれているんだと思います。

ー自分らしさを大切にしている詩羽さんですが、『水曜日のカンパネラ』の詩羽さんとモデルの詩羽さんでは、自分の中で違いはありますか?
詩羽:MCやモデルの時は素の私、歌っている時は詩羽、『赤ずきん』の時は赤ずきんのキャラクター、『エジソン』の時はエジソンのキャラクターになっています。それが詩羽であり、私らしさだと思います。
ーそれは『水曜日のカンパネラ』の詩羽として活動していく中で、そうなっていったのでしょうか?
詩羽:もともと昔から絵を描いたりと想像力がある方ではあったので、無意識のうちに演じるっていう形で歌い分けて表現していたんだと思います。
ー4月に最新EPもリリース予定と聞きました。どんな内容になっていますか?
詩羽:『RABBIT STAR ★』というタイトルの星と兎がテーマの作品です。いろんな物の消費されるスピードが早い情報社会の中で、誰よりも早く進んで行きたいなという想いを込めて名付けました。また陰陽五行説という中国の思想で、2023年が水を意味する「癸(みずのと)」、うさぎを意味する「卯(う)」が重なった「癸卯(みずのとう)」の年なんです。2023年は『水曜日のカンパネラ』の勝負の年なんです。

ーもしも『水曜日のカンパネラ』に入っていなかったら、大学卒業後はどんなことをしていたと思いますか?
詩羽:モデル活動を続けるか、就職するか悩んでいたので、そのどちらかになっていたかと思います。でも実際にそうなっていたら、フリーランスのまま活動するより、就職していたような気がします。
ーちなみにどんな仕事に就く予定でした?
詩羽:デザイン学科に通っていたので、デザイン事務所か撮影スタジオのデザイン部みたいなところに就職しようかなと思っていました。『水曜日のカンパネラ』に誘われる前は、インターンに行こうとしていました。

ー学生時代と今の自分では変わったなと思うところはありますか?
詩羽:生活が変わったので、変わったところはあるかもしれないですが、「自分のことを愛していこうぜ」みたいな思想や、意志が強いところ、思い立ったらすぐ行動するところは変わってないですね。
ーそれでは最後に、夢を持って活動している学生の皆さんに「自分らしく」いるためのアドバイスをお願いします。
詩羽:私がそうだったように、まず行動してほしいですね。学生のうちにできることってたくさんあると思うし、学生だからこそ失敗しても許されることも多い。私のライブでは、学生が作った衣装を借りることもたくさんあるんです。でもそれはSNSを通して、私たちに届いているからなんです。何かを作ってもアップしない、自分の中で満足できていないからアップしない、という学生の話しをよく耳にするのですが、それだとチャンスの「チャ」の字もない。ということを強く言いたいです。良くも悪くもSNSがメインメディアである時代なので、とりあえず作品や、自分の想いをアップしてみてほしいです。まずは行動してみてください。

PROFILE
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詩羽
2001年生まれ、東京都出身。2012年に結成した音楽ユニット『水曜日のカンパネラ』の2代目主演/歌唱担当。パッツン前髪に両サイドを刈り上げた三つ編みツインテール、口元の2つのピアス、色鮮やかなファッションと、唯一無二の独自なセンスでモデルとしても活躍。2022年に配信リリースされた『エジソン』は『TikTokの流行語大賞2022』のミュージック部門賞を受賞。2023年1月には、ABEMAの恋愛番組『隣の恋は青く見える4』主題歌『赤ずきん』が配信。4月には新作EP『RABBIT STAR ★』が4月26日(水)にデジタルリリース、5月3日(祝・水)CDリリース予定。