自分で自分の気持ちを上げるために、すきなもののなかに身を置いたり、自然の力に癒されたり、美味しいものを食べたり、現実から一度距離を置いてモノ・コトの力に頼る。自分を救う“おまじない”は、お金で買えることもある。そんな「あなたにとって“心と体に効くモノ”は?」――映画監督 / 写真家の枝優花さんがホストになり、やさしい人々を訪ね歩く対談連載。第4回はTHE2 の古舘佑太郎さんです。
宇宙的なつながりを感じる人
───古舘さんと枝さんは、2020年に放送されたテレビドラマ『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京)でご一緒されたんですよね。
古舘:個人的に思い入れのあるドラマです。というのも、その時期はしばらく役者の仕事はお断りしていてバンドに集中していたんです。お話をいただいて正直迷ったんですけど、出演者やスタッフさんが魅力的だなと思って、飛び込んだんですね。それが、めちゃくちゃ楽しかった。20歳で初めて映画に出たときの、自由でがむしゃらな感じを味わえました。
枝:よかった……!
古舘:だけど、枝ちゃんとは現場でほぼ話さなかったんです。個人的には感極まってたんで「ありがとうございましたー!」とハイタッチくらいしたかったのに、「おつかれさまでしたー」ってサラッと終わって。
枝:いやいやいや! そんな感じ全然なかったですよ?
古舘:ふたりともシャイなのが、致命的だった(笑)。
枝:たしかに(笑)。
古舘:だけど、僕は枝ちゃんの“人間力”の凄さを感じていて、ものすごく話してみたかったんですよ。なので、共通の友人yonigeの牛丸ありさにセッティングをお願いして、最近ですね。よく連絡を取るようになったのは。
枝:私が思い悩むことがあって、まだ会って2回ほどなのに、なぜか古舘さんに連絡を取ったんです。「相談したいことがある」って。そのときの感じが心に残っています。私の友人のなかで、もっとも宇宙的なつながりを感じる人です!
古舘:僕は枝ちゃんのことを“導き人”って呼んでいて、僕は“腿(もも)上げ人”なんですけど。
───……もうすこしくわしく教えてもらってもいいですか?(笑)
古舘:あの、夢を山頂だとすると、枝ちゃんはそこまで自分の足で歩いていけるんです。ときに転びながらも、立ち上がったり汗をかいたりしながら着実に登っていく。
僕もめちゃくちゃ筋トレして汗もかいているんですけど、ずっと山の麓で腿上げをしているだけ。頑張っている人を励まして、送り出してばかりいるんです。
枝:相手の本質を引き出して、悩んでいることを整理するのがすごく上手ですよね。相談をしても、相手にあれこれ言われるのが嫌なことってあるじゃないですか。古舘さんの場合は、いろんな角度から考えて、絡まった悩みの根源を紐解いて、選択肢を整理してくれる。そうして「最終的な判断は自分ですべきだよ」というスタンスなんです。混沌としたいろんな出来事を乗り越えてきた人だから言葉に力があるし、相談相手として心強いです。
古舘:だけど、自分のことになると途端に客観視できなくなるんです。
枝:5時間くらい話を聞いてても、全然解けない。
古舘:この間前世をみてもらったら、「前世以前に、今世の感情が消滅しています。16歳の初恋以後、何もないです」と言われて、言い返せなかった。
枝:ええ〜!
古舘:たしかに、その出来事がビッグバンだったから感情を使い切ったのかもしれなくて。それで、人の相談を超フラットな目線で聞けるんだと思う。
枝:スタンスが似ているなと思うのは、私も相手の感情に乗っかりきれないんですよ。友だちだから親身になって話は聞くし、相手も感謝してくれるけれど、熱くなれない罪悪感があります。だから、恋愛って苦手。感情を乗せ合うものだから、足りないって思われて、スキンシップは硬直して。「私は人のことを愛せない人間なんだ」って落ち込んでいたんです。
古舘:うん、わかる。
枝:ひさしぶりに連絡したときも、「こんな重たい話をして申し訳ないな」って思いながら相談しました。
計算では導けない、突拍子もないほうを選ぶ
古舘:枝ちゃんが相談してくれたとき、ルーティンを抜け出そうとしているんだなと思いました。僕もルーティンじゃない、つまり計算じゃ導けないような判断と行動を選ぶことを大事にしていて。
枝:あえてやるってこと?
古舘:そうそう。たとえば超くだらないことだと、歩いていてちょっと高めの街路樹をみつけたら、意味ないけど「飛び越えてみよう」って思って飛び越えたりしてた。
枝:なんだそれ!(笑)
古舘:最初は通り過ぎるんだけど「いや、やっぱ飛び越えなきゃ」とか思い立つと、わざわざ走って戻って、飛び越える。それで怪我したりすんの。そうやって、いつも通りではない方を選びたくて、たまにそういうことをしています。計算上では導き出せない行動をすると絶対何かが生まれると思うんですよ。だから、袋小路になっている人は、勇気を出して突拍子もない行動をするといいと思います。
枝:世の中の大半の人は安心する場所を見つけたくてしょうがないんだなって思うけど、頭では「絶対ない」とわかっていても選ぶって、めちゃくちゃいいですね。
古舘:意味ないことを全力でやりたくなっちゃうんですよね。
枝:反動じゃない? すごくせっかちで、無駄のない生活をしている反動。
古舘:僕は病的なせっかちで、一日が巻いて終わるんですよ。仕事が終わったと当時に、予定がなくてもすぐに着替えて、駅まで全速力で走って、電車降りたら走って家まで戻って、急いでご飯食べて、シャワー浴びて、ベッドの上で「やることない」ってなるんですよ。朝も、起きたと同時に動くんで、二度寝とかしたことない。
全員:(笑)。
古舘:せっかちをやめたくて……。
枝:それ聞いて思うのは、意味あることばかりを集めちゃう性分だから、どこかでそれがつまらないとわかっていて、意味のわからない行動を取るのかもしれないですね。
古舘:これだけ効率を重視しているのに、バンドってほんとに一番効率が悪い仕事だと思う。
枝:ああー、たしかに。
古舘:初恋も振り向いてもらえなかったし、バンドみたいなことも本当は苦手だからこんなにのめり込んでいるような気がして。効率を考えたら。もっと自分に合う得意競技があるはずなのに、なぜかバンドを選んでしまうのはそういう性分だからかもしれない。簡単には生きたくない、ジタバタしたい。
枝:私も映画を選んだのは、似たような理由な気がします。できない、と思うものを見つけたのが嬉しかった。
古舘:枝ちゃんが思い悩んでいたとき、俺はちょっとうらやましかった。
枝:うらやましい?
古舘:だって、そういう寂しさとか情けなさがものをつくる原動力になるでしょ。去年、20代のときに付き合っていた彼女にたまたま友だちの結婚式で会って、散々自分のダメさを語られたんですよ。それでかなり打ちのめされたんだけど、翌日のライブでメンバーに話したら、みんな俺の情けなさに笑いながら、すごいテンション高くいいライブをしてくれて。
枝:情けなさ、悲しさ、寂しさは原動力になって、その頃の自分を救いたいって気持ちになりますよね。
古舘:そうかもしれない。その時の自分はすごく辛くて、情けなさに落ち込むけど、ものづくりの意味では原動力になっていると思う。
お守りアイテム①サウナのフィギュア
───そんな古舘さんの“情けなさ”や“寂しさ”を癒すモノ、気になります。
古舘:僕は物を収集するタイプとは真逆で、使えるものしか部屋に置かないんです。唯一、「これは欲しい」と思って去年集めたのがサウナのフィギュア。サウナが大好きってこともあって、欲しかったんですよね。お風呂に炭酸水を入れたり、自分のグッズをあわせたり、眺めて楽しんでいます。サウナに行けない日とか、これでサウナ気分を味わって。
枝:私も小さい頃は、こういうものにまったく興味がなくて、ここ2年でフィギュアとかぬいぐるみとか集めるようになったんですよ。無駄なものでも存在だけで嬉しい。
古舘:わかる。役立たないものを集める意味がわからなかったけど、これは楽しくて。サウナとキャンプの組み合わせが好きだから、サウナのセットに焚き火を足してみたんです。本当はもう1セット買って、もうちょっと広げたい。
枝:おお〜、夢が広がりますね。
古舘:ゆくゆくは、自分のサウナを経営したいと思ってて。そのための第一歩です。
───でも、せっかちさんとサウナの相性ってどうなんですか?
古舘:なので、よく一緒に行く友だちには「なんでこんなサウナ好きなのに、すぐ出るの?」って言われます。
全員:(笑)
古舘:サウナ→水風呂の行き来もめちゃくちゃ早いらしくて。外気浴しないんですよ。耐えられないんですよね。
枝:嘘でしょ! ととのうんですか?
古舘:いや、散らかってる。
枝:散らかる(笑)。いつごろから行ってたんですか?
古舘:小学校5年生くらいからサウナが好きで、近所の銭湯によく通ってたんですよ。自分にとってサウナは日常だったから、最近のお祭りっぽい盛り上がりがすごく楽しくて、より好きになってます。だから、サウナに行っているときよりも行ってないときのほうが楽しいってことに、最近気がつきました。
枝:……ん?
古舘:たとえば崎陽軒のシウマイ弁当が大好きなんですけど、最近気づいた一番美味しい食べ方が、食べないこと。この間、京都でのライブ前に東京駅でシウマイ弁当を買って、一切食わずにライブ会場に着いて、対バン相手の子に食べてもらいました。
枝:わけはわからないけど、すごく古舘さんっぽいエピソード(笑)。
お守りアイテム②ルービックキューブ
古舘:ルービックキューブは、せっかちでじっとしていられない自分を落ち着かせてくれるものです。ハマっていたころはずっとやっていて、完成まで1分切ったこともあるくらい早かったですね。
枝:何歳くらいからやっているんですか?
古舘:高校生から始めて、これが2代目。1分くらいで完成するから、せっかちな自分に合っているんです。
お守りアイテム③ファイブミニ
古舘:ファイブミニは、僕が世界でいちばんうまいと思っている飲み物です。味も、サイズも、値段も完璧。でも、そんなに評価されてないですよね?
枝:あってもチョイスしないかも。
古舘:そういう人多いんですよ、だから時々人にあげてて。もっと評価されてほしいです。今日はこれ枝ちゃんにプレゼント。
この曲は「私の知っている古舘さん」
枝:この間、THE 2のワンマンライブを観に行ったんですよ。最後にやった新曲『スプートニク』がすごく良くて、どうやって曲ができていったのか聞きたかったんです。
古舘:昔は自分が作詞作曲していたけど、いまはメンバーで共作することが多いんですよ。それは、自分自身から生まれるものの頭打ち感があったことや新しいものを求めていた部分があったんだけど、『スプートニク』はひさしぶりに自分の中から「作りたい」という欲求が湧いて、ものすごい勢いで描いたんです。10代の頃から、ある種メモ書きのようにずっと歌詞を書いてきて、いまの自分の集大成みたいな歌詞になったと思います。
枝:それまでライブで聴いた曲は歌手としての古舘さんで、でもこの曲は「私の知っている古舘さんだ」って思ったんですよね。客観視できる大人っぽさもあるけれど、情けなさとか寂しさも古舘さんを構成する大事な要素で、その揺らいでいる感じから歌詞がスーッと入ってきたんです。みんなが求めている歌も書けるけれど、そうじゃない。自分が軸にある。
古舘:ああ……それで最近思うのは、君とかあの子とかずっと歌ってきたけど、結局自分に向けて歌ってることに気づいたんです。
枝:誰のために書いたのか聞きたかったんですけど、納得しました。混沌として、感情を喪失したとまで言う古舘さんが、もう一度自分を見つめて書いたからこちらにも届いたんだなって。リリースされたら反響がすごく楽しみです。
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