UPDATE : 2024.05.14

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#ART & CULTURE

“ほどよい距離感” と信念をもとに、描く。イラストレーター・matsuiが作品たちに込める想いについて

Text:Nozomu Miura

Photo:FREAK MAG.

ポップだけれど、どこかアンニュイ。エネルギッシュな太めの線で描かれているけれど、どことなく繊細で、儚い印象すらも思わせる。matsuiさんが手がけるイラストからは、ふと、そんなことを思わされます。

学生時代にはインスタレーション(空間を使った現代美術の手法)やメディアアート(コンピューターや電子機器といったテクノロジーを利用して作る芸術)の表現を主におこなっていたという彼は、就職を機に、WEBデザイナーの道を進むこととなったのだとか。

 

その道程で、彼は「自らの “作品” を生み出したい」と感じたのだそう。お客さまから発注を受け、それに沿う形で作り上げる “仕事” の他に、自らの想いだけをもとに生み出す “作品” を。そうして生まれたのが、この犬のイラスト。本稿では、彼が抱く作品へのこだわりやご自身の考えについて、また、今回リリースされるスペシャルなコラボレーションアイテムたちにかける想いについて、伺いました。

ー今日はよろしくお願いします。

 

matsui:よろしくお願いします。こうしてインタビューをしていただくのは初めてなので、ちょっと緊張しますね(笑)。

 

ーぜひともゆるりと、お話を伺えたらうれしいです。まず、matsuiさんが絵を描き始めた “きっかけ” のようなものについて。matsuiさんの肩書きとしては、“イラストレーター” になるのでしょうか?

matsui:一応、自身が携わっている分野的には、イラストレーターになるんですかね……。 基本的に、いつもやっていることと言えば、絵の具を使って絵を描くことなんです。そうして出来上がった絵をギャラリーで展示・販売しているような形です。その仕事を、はたしてそもそも  “イラストレーター” と呼んでしまっていいのか、自分でもあまり判断できていないんですよね。それに、自分のことを “アーティスト” と呼ぶのも、なんだか気が引けてしまって。

 

ーアーティストと名乗ることに、気が引けてしまう。

 

matsui: 話は少々さかのぼるのですが、僕が学生だった時代、インスタレーションやメディアアートのような方面の活動をしていたんです。当時、その分野で、アーティスト然とした方々をたくさん見てきたんですよ。「こういう人たちのことを “アーティスト” と呼ぶんだろうな」と思えるような人々を。

 

ーそこで、自分は違うな、と……?

matsui:恐れ多さともまた違うし、遠慮ともちょっと違う。ただ、自分が作ったものに対する向き合い方、そこで感じるものが、いわゆる “アート” ではないのかな、って。もっと遊びだったり悪ふざけのようなニュアンスが近いなぁ、と思っているんです。それが理由で、自身のことを「アーティスト」とは呼ばないようにしていますね。もちろん“アート”として接してくれる方もいて、それは大変嬉しいです。でも、自分の捉え方としては、そうではないんです。

 

ーそもそもmatsuiさんは、イラストレーターを名乗ることにも、あまり積極的ではないのでしょうか?

 

matsui:実際におこなっていることは、そうなんですけどね。名乗り方って、難しいですね。やっぱり。そもそものきっかけとして、WEBデザイナーとして働いていた頃、「自分の作品」と呼べるものが欲しくなったときに、絵を描き始めてみたんですよ。まずはスケッチからだろうと思い、縦長のノートを買って。通勤電車だったり喫茶店だったり、なんでもない場所で、なんでもない絵を描いていました。そこでもっとも大切だったのが、“ストレスがないこと” だったんです。

 

ーストレスがないこと、ですか。

matsui:仕事をしながらイラストを描き続けていくにあたって、よりストレスのないものを描きたかった。それは表現物としてもそうですし、画風もそうです。始めた当初はボールペンで描いていたけれど、描き続けていくうちに「細いペン、実は自分に合っていないのでは……?」と思うようになって。それからはタブレット端末を使って、デジタルの少々太い線で描くようになったんです。これもすべて、“ストレスがないこと” を重要視した結果なんですよね。 

 

ーほう、ほう。ストレスがないこと。それは、“犬を描くこと” にも関係している……?

 

matsui:まさに。とあるタイミングで犬の絵を描いた際、他の動物や物体よりも楽に描けるなぁと思ったんです。たとえば、猫を同じように描こうとしても、全然できないんですよ。なぜか犬だと、見本を見ずともイメージが湧いてくる。イラストに起こしやすいな、って。“相性の良さ” みたいなものを、ふと感じましたね。なんというか、“ほどよい距離感” みたいなものを。

 

ーmatsuiさんご自身は、犬はお好きですか?

 

matsui:それが、むずかしいんですよね。

 

ーむずかしい?

 

matsui:実家には、犬がいる期間が長かったんです。少なくとも僕が一人暮らしを始めるまでは、犬と暮らしていて。外で飼育していたので、特段家の中でベタベタするとか、そういう感じではなかったんですけどね。別にものすごく好きだということでもない、というか。

 

ーものすごく面白いなぁと思います。てっきり、犬が大好きだから描いているのかと。

matsui:絵だと、気が合うんです。それに、実際いまの僕が犬を飼ってしまうと、その “ほどよい距離感” が崩れてしまう。ちょっとおかしいのは自分でもわかっているんですけど(笑)、本当にそうだから仕方ないんですよね。「大好き!!!」ではなくて。「気が合うな〜」ぐらいなんです、面白いことに。それぐらいの距離感でいたいなぁ、と。

 

ー本当に興味深いですね。「好きだから描く」ではなく、「距離感を保った上でこそ描ける」に近いような。

 

matsui:だからこそ、作品として描く犬には、名前も付けていないし、犬種も一切決めていません。仮に「A」という名前を付けてしまうと、「A」になってしまうので。そこには適切な “距離感” と “余白” を、いつも残していたいなぁと考えています。

 

ー特に、今回のコラボレーションアイテムについては、どうお考えですか?

matsui:少しばかりスケールが大きい話になってしまうのですが、作品たちが、僕の命より長く人に愛してもらえるようなものになってくれたらいいなぁと思っているんです。どんな人に届いてもらいたいとか、どんな人に楽しんでもらいたいとか、そういう想いはあまり無くて。みんなに届いてほしいな、みんなに長く愛されてほしいな、と思うんですよ。

とにかく、ずっと残るものになってほしい。それが今回の「アパレルアイテム」や「アクリル作品」の形を取ることもすごくうれしいですし、普段から描いているような「キャンバス作品」の形を取ることも、すごくうれしい。

matsui:自分一人では、Tシャツもアクリル作品も、作れなかったと思います。その点で、今回のコラボレーションはすごく光栄なことですし、きっとたくさんの人々に見ていただけたらと願っています。

INFORMATION

  • 『A FREAK LIFE IS "ONE"DERFUL』 POP UP

    会期
    5月17日(金)〜5月26日(日)

     

    会場
    OPEN STUDIO(FREAK’S STORE渋谷併設ギャラリー)
    〒150-0041 東京都渋谷区神南1-13-1
    TEL 03-6415-7728

     

    営業時間
    【平日】 12:00-20:00
    【土日祝】 12:00-20:30

PROFILE

  • matsui

    1996年、愛知県生まれ。
    名古屋学芸大学卒業後、デザイナーとしてキャリアをスタート。2022年の初個展を皮切りに各地で個展やイベントを開催。2023年には香港や台湾でもイベントを開催し、海外へも活動の幅を広げている。犬をモチーフとして、太く、ゆったりとした線と明快な色使いの絵で、これまでに国内、国内外の様々なブランドとのコラボレーションにも携わる。

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