2022年にNFTコレクション『NEO TOKYO PUNKS』を立ち上げ、発売開始2分で全2,222体を即完売させ話題になったイラストレーターのNIKO24さん。このジェネラティブNFT(複数のパーツをデジタル上で無作為に合成するNFTアート)プロジェクトの成功は日本国内で大きく注目されました。
NIKO24さんが描かれるサイバーパンクの世界に生きる横顔の“パンクス”たちは、日本のアニメーションの緻密さとアメコミ作品やストリートアートのようなダイナミズムが同時に感じられる個性的なキャラクターで、自分の分身として思わず手元に欲しくなります。そんなNIKO24さんに、これまで影響を受けてきた作品やNFTの分野に本格的に足を踏み入れることになった衝撃の理由、NFTとクリエイターの関係など幅広いテーマで語っていただきました。

―早速ですが、NIKOさんはどんな場所で生まれ育ったのですか?幼少期はどんなお子さんでした?
出身が福岡県の朝倉市というところで、果物栽培で有名な自然豊かな場所で育ちました。両親が毎週ジャンプを買っていたこともあって、幼少期から漫画が好きで『ドラゴンボールZ』『スラムダンク』『幽☆遊☆白書』『るろうに剣心』あたりを中心に読んでいましたね。小学生になるくらいから模写を始めて、ノートに漫画も描いていました。
―そんなに早くから漫画を描いていたんですね!
人気漫画を集めたようなオリジナルでしたね。ストーリーがあるような無いようなという漫画でしたけど、まわりは褒めてくれるんですよ。中学と高校の時はバレー部で、特待生として学校に行ったので部活ばっかりの生活でした。でもずっとイラストは好きで、学校のノートの端に描いてました。

―その時はどんなテイストでした?
小さい頃から『機動戦士ガンダム』も好きで、そこからメカ的なものに傾倒して『新世紀エヴァンゲリオン』にもハマっていたので、自分のオリジナルの初号機、2号機を創作したりして。
―オリジナルの初号機・・見てみたいです。どんなところに惹かれたんですか?
ガンダムガシャポン戦士やカードを集めていた時期を経てそこからプラモデルも作って。エヴァはストーリーも好きだったんですけど、今までのロボットものにはなかった人型兵器のあのフォルム、筋肉がリアルで動きも人らしくてかっこいいと感じたんですよね。

―造形にやられたんですね。今描かれているサイバーパンク作品に繋がる世界観かも。
そうですね。現実世界のように見えるけどどこかちょっと変とか、ファンタジーすぎないところ。リアルな世界の延長線上に異世界が描かれると「もしかして未来はこんなふうになるのか?」と想像できておもしろいんですよね。
―NIKOさんの作品はストリートカルチャーのムードもあると思うんですが、そのあたりはどうですか?
影響はありますね。大学ではイラストには進まず、建築のデザインの勉強をしていたんです。でもやっぱり描くことが好きで。そのあたりから音楽も掘り下げて聴いていてHi-STANDARDのようなメロコアやTHE BLUE HEARTSとか、Dragon Ash経由でHip Hopを聴くようになってグラフィティ・アートにも興味を持つようになりましたね。

―構築的な感覚も作品から感じていたので、建築の勉強をされていたのも納得です。ところで2年前くらいまで会社員をされていて、そこからどのように今の場所にたどり着いたんですか?
イラストの仕事をすることに憧れはあって、Instagramに投稿してそれを見て気に入ってくれた方から依頼を受けて無償でお手伝いするかたちで描くこともありましたし、LINEスタンプも作ってみましたが本業としては難しかったんですね。描くこととは別で、元々仮想通貨で投資をやっていたんですけど、ある日すごい損をしてしまって。
―え、どれくらいの損だったんですか?
忘れもしない2021年6月17日、当時マイナーなコインに投資をしていたんですが、夜に確認した時は平気だったのに朝を迎えたら一気にそのコインの値段が下がってゼロになっていました。一晩で600万円の大損を・・
―ひー!なんて恐ろしい・・
そうなんです。独身時代の貯金をそこに入れていて、家のお金も100万円くらい入れていました。それがゼロになって。仮想通貨のウォレットにも当時3万円くらいしか残っていなかったんですよ。朝起きて、妻に正直に話して土下座して、もちろん妻からは怒られて「自力で稼げ」と言われてお小遣いも全てカットになって。そこでいくつかLINEスタンプも出したんですがそこまでは売れないし・・ちょうどその頃、妻が2人目の子を妊娠中で、里帰り出産のため在宅が自分1人になったんです。少し時間ができるので、妻からは「この期間に何か形にしてほしい」と言われて、その時に流行りだしていたNFTならなんとかなるかも?と、会社から帰るとすぐにNFTの制作をする生活をしていたのがその年の9月くらいで。幸いその時にけっこう買っていただけたんです。

―さらに勢いがついたのはいつ頃だったんですか?
NEO TOKYO PUNKSというNFTコレクションのスタートが2022年3月なんですけど、その後くらいですね。それまではこれを仕事にできるとは考えていなくて、副業という感覚でした。でもNEO TOKYO PUNKSの発表後、ファンコミュニティが確実に広がったと実感しました。2000枚くらいのコレクションだったので、一気にホルダーさん(NFTを所有する人)が1000人以上増えたんですよ。コミュニティにも何千人と入ってきて、そのあたりから「もしかしたら、これは行けるかもしれない」と思い始めましたね。今は会社も辞めてクリエイターとして生活しています。
―クリエイターを支えるNFTコミュニティの存在も重要ですよね。日本のコミュニティはどんな特徴がありますか?
海外にも大きなコミュニティはあって、そこには投資的な側面で集まっている方が多いんですね。海外のコミュニティが求めるのは、NFTを発行する運営が自分たちの持っているNFTの価値をどう上げてくれるか。それを重視している印象なんですが、日本だとコミュニティ内の交流やクリエイターを応援する文化も強いです。もちろん最初のスタート時は日本のコミュニティも、買ったものの価値が上がるのかというのがメインだったんですけど、実際に入ってみるとコミュニケーションが楽しかったり、絵を買ったクリエイターがどんどん実績を作って有名になったり、応援するという体験自体にも価値を感じる人が増えたように思います。
―それはおもしろいですね。そのコミュニティ内で仲良くなることもあるんですか?
大人になってから、立場や年齢や性別を気にせず仲良くなることってあまりないと思うんですが、そういったことを知らないままコミュニティ内で仲良くなって、相手が住んでいる地域に行く時は連絡をして会ったり・・みたいなことがけっこう起きているんで、それが楽しいという方もいますね。

―ホルダーさん同士やクリエイターとの関係性が興味深いですね。NFTで作品を発表することにクリエーターとしてはどんなメリットがあると感じますか?
ひとつの表現の場、収益源としてNFTが加わったのは大きいと思っていて、まずデジタルのイラストを販売するのは今まで難しかったんですよね。絵画などのアーティストであれば、ギャラリーが介在して個展を開いて販売することが可能ですが、NFTだとそれがブロックチェーンで世界と繋がって海外の方々にも購入してもらえる。単純に収益のツールが一つ増えるのは魅力的です。あとはコミュニティの存在ですね。これまではクリエイターとファンコミュニティの間に企業が介在ですることも多く、密な繋がりが起きづらかったと思うんですが、NFTはクリエイターとファンが直接繋がることもできます。SNSと連携される方も多いので、どんな方が買ってくれたのかも分かりますし、NFTのPFP(プロフィール画像)にされている方にお礼を伝えられたり双方の距離が縮まった感覚です。

―クリエイターのモチベーションアップにもつながりますよね。
確実にそうですね。自分の作品に価値をつけてくれた人の存在が可視化されると、作品を生み出すモチベーションになります。
―日本の推し活カルチャーともNFTは相性がいい気がします。
この前コレクターさんに伺ったら、切手を集める感覚で自分のウォレット内に作品を並べて眺める楽しみができたと話してましたね。個人でコレクションするフィギュアなどとも近いと思いますが、家でコレクションしていると人と共有するのは難しいです。NFTだとソーシャルメディアを通じて自慢することもできますから(笑)
―コミュニケーションツールにもなりそうですよね。個性的な片桐さんの作品とのコラボでどんな作品が誕生するのか楽しみです。制作の具体的なお話はお二人の対談で聞かせてください!

INFORMATION
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NFT FREAK ポータルサイト
セレクトショップ“FREAK’S STORE”などさまざまな事業を展開するデイトナ・インターナショナルが、NFTプロジェクト「NFT FREAK」を2024年9月に新たにローンチ。
NFTを通して「好き」で繋がるコミュニティの醸成とクリーエーターの支援を目指します。
PROFILE
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NIKO24
福岡県出身。
2021年からNFTクリエイターとして活動を開始。2022年にNFTコレクション『NEO TOKYO PUNKS』をリリース。 日本発のNFTプロジェクトとしては初めて、取引量世界ランキング 27位を記録。
2024年1月時点での総取引額は7億円にのぼる 2022年に株式会社WEST BASEを設立。 『NEO TOKYO PUNKS』という、国内ではまだ事例が少ない 『NFT発のIP』として、様々な自治体や企業とコラボレーションし IP展開と同時に、NFTのテクノロジーを広める活動を行なっている。
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奥浜レイラ
1984年神奈川県出身。映画・音楽のMC・ライター。
2006年よりテレビタレントとして活動をスタート。映画の舞台挨拶やトークイベント、ラジオ番組でMCを務める他、雑誌の音楽レビューや、映画パンフレットへの執筆などライターとしても活動している。