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#ART & CULTURE

SUPERFUZZ MUSIC -extra edition- LAからAutomatic、bedらを招いた夜のこと

Text:Taishi Iwami
Photo:Kotaro Yamada

すでにヒットしている曲だけでなく、そのDJしか知らないであろう曲がクラウドの心を一つにする。前情報のない無名のアーティストや、インディペンデントなアーティストのライブがフロアを大いに沸かせる。そんなクラブやライブハウスでの音楽や人との出会いに魅了された、一人のオーディエンスでありDJでありライターによる連載『SUPERFUZZ MUSIC』。“オルナタティブ”をテーマに、いつもはタイムリーなアーティストやおすすめのニューリリースを紹介していますが、今回は2024年11月29日金曜日の深夜に、渋谷Studio Freedomにて開催したパーティー『SUPERFUZZ』で感じたことをお届けします。

あらためて、この連載のタイトルにも冠している『SUPERFUZZ』は、もともと私が仲間と始めたパーティー名で、2019年よりコロナ禍を除いて毎月ペースで渋谷や下北沢にて開催しています。基本的にはレジデントDJのみのラインナップなのですが、この日はLAより初来日となるAutomatic、東京からはbed、沖縄を拠点にするHOMEの3バンド、DJにはHALUを招きました。

念願の初来日。ミニマリズムにこそ宿る情熱と自由

私が最初にAutomaticを知ったのは、2019年6月。LAのレーベル、Stones Throwからのデビューシングル「Calling It」がリリースされたタイミングだった。音数や展開を削いだミニマルな曲。その中に1970年代のパンク~ポストパンク、それ以前のアートロックや電子音楽、古き良き映画音楽、90年代や00年代のインディーロックなどさまざまなレイヤーが見えてくる。そういった要素を折衷するセンスや個のプレイヤーとしてのスキル、今の時代を映し出す歌や、ダンスフロアにハマるグルーヴなど、多面的な魅力に引き込まれた。そこから同年9月にリリースされたデビューアルバム『Signal』も期待値以上だった。

 

またそのサウンドだけでなく、インディペンデントなアティチュード、ファッションや映像など、Automaticがトータルで発信する世界観は、当時まだ始まったばかりだっSUPERFUZZというパーティのロールモデルとなった。「いつかAutomaticとか呼んで何かやりたいね」とメンバーともときどき話していた。

 

そしてそんな想いが現実に。Izzyの奏でるレトロフューチャーなシンセの響き。きわめてシンプルながらも独特の間やフィルを盛り込んだLolaのドラム。Halleのベースは生々しい音色とキャッチーで少し奇妙なフレーズがクセになる。IzzyとLolaのツインボーカルスタイルも生で観るとより映えていた。前述の「Calling It」はイントロ長めのよりダンサブルな仕様に。人気曲「Too Much Money」や「New Bigining」にフロアが揺れる。「Suicide In Texas」では、そのシリアスな曲の世界観とは裏腹に、Lolaがドラムから離れフロントでパッドをたたきながら歌いオーディエンスを沸かせた。ライブが終わった直後には、JordieとAnnaの陽気なマネージャー二人がケーキを持ってステージへ。日付変わって誕生日を迎えたばかりのLolaをサプライズで祝うという、クルーのお茶目な側面も見せてくれた。

 

 

来日前に私がメンバーに行ったインタビューでHalleは、「ある意味で自分たちを制限することによって創造性や独自性を引き出す」、「私たちは世界でもっともアニメーション的(動きのある)なバンドというわけではないので~中略~オーディエンスに私たちの思う正しい体験を提供できるようにしたいので、サウンドや演奏の仕方には深くこだわっています」(※引用元 )と話していたが、まさにその通り。装飾や煽りを削ぐことでオーディエンスが獲得できる自由。ストイックなアティチュードが生むスリル。ポップなフックや時折見せる愛くるしい表情に感じる親しみやユーモア。生演奏だからこそ、その魅力をより深く堪能することができたステージだった。

ダンスフロアにおいて、もっとも機能的で衝動的な音楽

bedの曲からは、ダンスミュージックとしてのテクノやアシッドハウス、現行のクラブシーン、パンクやポストパンク、オルタナティブロック、サイケデリックロックなど、さまざまな背景が見えてくるが、それらを特定の参照点や時代感覚で因数分解することは難しい。人は音を奏でた時点で、メロディを歌った時点で何かしら過去の影響を受けている。そのもっとも原始的な地点からスタートするフロンティアスピリッツの爆走。今起こっている熱狂も1秒経てば過去の話。彼らは固執や停滞を許さない。常に前を向いて曲を作りライブを、曲をアップデートしてライブをする。

 

活動初期からの曲「APOLOGIZE」は8ビートから高速人力ブレイクビーツに。「mother ship」は当初とメロディが変わり、リリースに至っている。「Kare Wa」はパワフルでダンサブルな軸は保ちながら、その強度や音響面の中毒性が進化。曲間も然りで、BPMを合わせて繋ぐこともあれば、上音の残響でシームレスに次の曲へと移行したかと思えば、少し間を開けて次の曲にいくことも。複数回彼らのライブを観ているならわかると思うが、期待通りの流れがくることもあれば、あっと驚くサプライズもある。オーディエンスをさらなる楽しみの高みへ連れて行こうとする気概を感じる攻守の選択。いつチューニングしているのかもわからない音の緩急とフィジカルだけで繰り広げられるパフォーマンス。そしてフロアの誰もが真に自分の意志と感覚で音にライドするからこそ生まれる絶景。その説得力たるや。だから彼らのいる場に足を運ぶことがやめられない。

 

時代の最先端を生むダンスフロアにおいて、もっとも機能的であり衝動的な音楽。それによって巻き起こるオーディエンスの渦も含めたオリジナリティは、彼らがオフィシャルのSNSで公開しているライブ映像からも感じ取ることができるが、やはり現場で体感してこそ。DJ目線だと、これまでに何度か彼らとパーティを共催してきた。彼らのライブの前後にプレイをすることも何度かあった。ライブ前ならば興奮が抑えきれない、ライブ後は満身創痍ながらもまだその向こう側に向かおうとする覚醒したクラウドの凄まじい熱を感じる。毎度、そんなDJ冥利に尽きる場面が必ず訪れるわけだが、今回も例に漏れず。圧倒的なパフォーマンスは人間のポテンシャルと空間の自由を最大限に引き出す。本当の意味での「音楽最高!」を体現するバンド、それがbedだ。

深夜ライブならではの没入感

HOMEは沖縄を拠点にする3人組。2023年8月にリリースされた「Lucy」は、それ以前のライブ映像の段階から話題に。そして都内でもライブや自主企画を重ね、この日の前には渋谷WWWでのワンマンライブをソールドアウトさせている、今もっともアップカミングなバンドの一つだ。

 

1980年代のニューウェーブやポストパンク/ネオアコースティック、現在進行形のインディーロックやポップミュージック、クラブミュージックの要素などが溶け合う。レトロシティなノスタルジーも、今だからこそのミクスチャー感覚も、いつの時代においても輝ける普遍性も、前衛的な実験マインドも併せ持つ、新世代によるオルタナティブミュージック。今回は終電が終わった頃、オープニングDJ終わりのライブアクト1番手としてオファーしたのだが、早い時間からフロアの前半分はHOME目当てのオーディエンスでいっぱいに。

 

そんな中で、HOMEのアナザーサイド、ナイトバージョンと言えるドープなセットを披露。息を飲むようなスリリングなビートや、没入感のあるサウンドスケープに軸足を置く場面が多かったからこそ、ポップなメロディやフレーズがカタルシスとして機能する。持ち前の多面的な魅力を、深夜の森へと誘うようなアプローチで展開したことで、この夜全体が特別なものになる可能性を引き出したパフォーマンスだった。

DJの個性とパーティをデザインするスキル

HOMEのライブ前にプレイしたSUPERFUZZのレギュラーメンバー、DJ MUSASHIは、テクノやブレイクビーツ、懐かしいビッグビートやインディーロックなどを織り交ぜたセットを展開。自身のアイデンティティとともに、このパーティにおけるクロスオーバーの指針を示すようなプレイを披露した。同じくレギュラーメンバーのKEIGOは、HOMEとAutomaticを繋ぐ時間にプレイ。120BPM台のモダンなディスコを繋ぎながら、BPMに捉われないセレクトセンスで勝負するインディーロックへと。華やかな身のこなしもあわせてフロアを彩った。

 

そしてこの日、DJとしてもっともフロアを盛り上げたのはゲストのHALU。『Tribal Connection』というジャングル特化型パーティーのメンバーであり、テクノやハウス、トランスなどもプレイするスタイルで、東京のクラブシーンにおいて大きな信頼を集めている。さらにはジャズやネオソウルをルーツとするべニュー、Blue Note Placeにもたびたび出演するなど多彩な顔を持つDJだが、ロックミュージック~Prodigyのラインがルーツの一つという一面も。今回はSUPERFUZZのことや、Automaticとbed、バンドとバンドに挟まれたタイムテーブルだったことも念頭にあったのか、強度高めのダンスビートにフォーカスしながらロックバイブスも盛り込んだパフォーマンスによって、彼女を囲む360度どこを見ても激しいダンスの波が起こっていた。

Automaticとbedのシナジー

そしてこの日のあと、私たちSUPERFUZZは、12月1日にCIRCUS TOKYO、12月8日に大阪NOON + CAFEにて、Automaticをヘッドライナーとした『AUTOMATIC JAPAN TOUR 2024』を主催。対バンは両日ともbedにお願いした。東京はソールドアウト、大阪も満員御礼、大盛況だった(ちなみにbedは間にUKからFat Dog来日公演でもライブするなど過密スケジュールだった)。両日ともに、ライブ終了後も出演者や関係者、オーディエンスが混ざりながら、2時間近くダンスの宴が続く。その場にいた全員のパフォーマンスとクラブという場所で開催したからこそのシナジーによる嬉しい誤算だった。

 

そんな中で何より印象的だったのは、Automaticとbedに強い繋がりが生まれたこと。彼女たちは公式Instagramのストーリーで「Our new favorite band!」とbedのことを紹介したことを皮切りに、帰国後も含め何度もbedのことを投稿。向うのプロモーターをタグ付けすることも。そして、フィードでも我々を含め感謝を述べてくれた。LAと日本の間に生まれたこの関係性が、すぐ新しい企画に繋がるかどうかはわからないが、現在ニューアルバムに向けて準備中のAutomaticには遠くないうちに日本に来てもらいたい。そしてbedのUSツアー……、実現を想像しただけでワクワクする。

 

そして私たちSUPERFUZZが海外アーティストを招く企画は、これでひと段落ではありません。また新しい告知を近いうちにできると思いますので、お楽しみに。

INFORMATION

  • 『Club Malcolm NEW YEAR COUNTDOWN TO 2024-25』

     SUPERFUZZ

     

    2025.2.7(Fri)

    23:30~5:00

    at Shibuya Club Malcolm

    2,000yen with 1 drink incl.

     

    DJ: KEIGO / MUSASHI / TAISHI IWAMI

    more info: https://superfuzz2019.com/

PROFILE

  • TAISHI IWAMI

    10代の半ば、ファッションに対する自我が芽生えるとともに、ロックンロールやパンク/ポストパンク、インディーロックといったロックミュージックのディグに明け暮れるように。そして街で手にした1枚のフライヤーがきっかけで、そういった音楽の流れるクラブへ。お洒落でカッコいい人たちがダンスに興じるフロアに魅せられ、自身もDJを始める。現在は主にDJ、ライター、イベントのオーガナイザーとして活動。オルタナティブミュージックパーティ「SUPERFUZZ」の代表を務めている。

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