UPDATE : 2022.07.25

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#LIFE STYLE

POP UP FOOD〜神出鬼没飯01:ラーメン吉祥丸/出会いとくつろぎのラーメン屋

Text:Haruna Tanaka

Photo:Takanobu Watanabe
Edit:Jun Hirayama,Taiyo Nagashima

NEUT Magazineの編集長をしながら、空いた時間は友達とおいしいものを食べることに全ベットしている僕(平山 潤)ですが、最近周りにお店を持たない飲食店が増えている、そんな気がする。ウーバーで注文すればいつでも届くとか、そんな都合のいい関係じゃない。だからこそ無性に食べたくなるけど、自分のタイミングじゃ食べられない、神出鬼没飯。英語で言うと“POP UP FOOD”を毎月紹介していきます。

 

記念すべき第1回となる今回のPOP UP FOODでは、アーティストの嶌村 吉祥丸さんがプロデュースするビーガンラーメン「ラーメン吉祥丸」をピックアップ。フーディー仲間で、前に「食の連載をやりたい」と言っていたのを思い出し、モデルとして活躍するシャラ ラジマさんを誘い、ラーメンを求めて集まる人たちで賑わう渋谷のJINNAN HOUSEで、吉祥丸さんに話をききました。

なぜラーメン?アーティストが「ラーメン屋」を始めたきっかけとは

シャラ ラジマ(以下シャラ):写真家をメインに多岐に渡って活躍している吉祥丸さんがラーメン屋をやると聞いたとき、素朴に「なぜ?」と思ったんです。きっかけって何かあったのですか?

 

嶌村 吉祥丸(以下 吉祥丸):もともとラーメンが好きだったんです。学生時代から日々さまざまなラーメン屋に通っていました。ラーメンは日本独特の発展、進化、多様化を遂げた食文化だと思っていて、日本で暮らしていたら誰もが触れたことのある日常的な料理とも言えると思います。。そのような魅力に惹かれて、いつかラーメン屋をやりたいなと冗談半分でよく話していました。

 

平山 潤(以下 潤):ざっくりと思い描いていたラーメン屋を実際にオープンすることになった経緯は?

 

吉祥丸:お茶食堂とギャラリーの複合施設である「JINNAN HOUSE」ができたときから企画やギャラリーのキュレーションとして携わっていたのですが、オーナーの鈴木さんから、「ラーメン屋をやってみたら?」という話が出たのがきっかけです。

 

シャラ:吉祥丸さんがラーメン屋をやりたいということを知っていて、きっかけをいただいたんですね。

 

吉祥丸:そもそもラーメン屋をやりたいと思ったきっかけとしてJINNAN HOUSEで働いている友人がもともと三軒茶屋の「おでん学園」というお店で週一でおでん屋さんをやっていたのですが、そこで食事をしたときに、飲食店の場で人と人が自然に繋がるという文化を体験しました。それまで自分にはそのような文化がほとんどなかったのですが、飲食を介してコミュニケーションが生まれるということを知って、そこに魅力や可能性を感じ、ラーメンを軸にしたコミュニティの場ををつくってみたいと思うようになり、それが今の「ラーメン吉祥丸」に繋がっています。

食で繋がる体験がきっかけとなったビーガンラーメン、実食。

シャラ:ビーガンのラーメンは初めて!早速いただきます!

 

:久しぶりに食べましたが、やっぱりおいしいですね…!旨みが口の中に広がるこのスープ、一体何でできているんですか?

 

吉祥丸:出汁は昆布やきのこをベースにしています。海苔の隣にチャーシューのようにのっているのは、車麩。お麩がたっぷりスープを吸うので、味が染みていると思います。。

 

:本当だ。見た目はまるでチャーシューですね。味が染みてて最高です。この黒いオイルも香ばしさとコクがあってすごくおいしいけど、なんのオイル?

 

吉祥丸:これは、お茶の葉を炒ったオイルです。このメニューは、鯛骨拉麺「鯛祥」を手掛ける、料理人の横山祥太郎さんと開発しました。

シャラ:お茶!こんな味になるんですね。ビーガンと聞いて、さっぱりしたものをイメージしていましたが、旨みやコクが凝縮されていて、繊細でバランスのよいラーメンでした。おいしすぎて、あっという間に食べ切ってしまった。ごちそうさまでした!

誰もが楽しめるラーメンを。ビーガンラーメンを提供するワケ

シャラ:ラーメンとはかけ離れたイメージのあるビーガンなのに、すごくおいしいラーメンで驚きました!「ラーメン=豚骨」みたいなイメージがあったので(笑)。 なぜビーガンにしようと思ったのですか?

 

吉祥丸:友人にビーガンやベジタリアンがいる中で、その人たちが食べることができないのは嫌だなと思ったからです。

 

:小麦などが使用されているのでアレルギーには気をつけないといけないけど、宗教や思想によって「食べられない」という人はかなり少なくなりますね。

 

吉祥丸:はい。そういう意味でも、みんなに食べてもらえるラーメンになるといいなと思っています。僕にとってラーメンは、コミュニケーションを生むためのきっかけでもあるので、開放的な空間で、自由に楽しんでほしいと思っています。

 

シャラ:あーなるほど。様々な人の交流になる場所としての飲食店や全ての人に楽しんでもらいたいというコンセプトがあったから、このようなビーガンラーメン屋という形式に落ち着いたんですね。背景にある意図も踏まえ、さらにちゃんと美味しい味を作り上げているのはとても強い魅力だなと思いました。

 

:「ラーメン吉祥丸」を店舗展開する予定はありますか?

 

吉祥丸:考えていた時期もあったのですが、食べに来てくれた人同士が会話を楽しんだり、ラーメンの場を通じて仲良くなり、人と人とが繋がっていく場面を何度も目にして、この場を提供することが自分の役割だと思うようになりました。店舗を持つと、どうしても回転率を上げることが優先になってしまったり、立地や席数などでさまざまな制限が出てくると思います。ラーメンを通してコミュニケーションや繋がりを築けているのは、このJINNAN HOUSEの芝生やテラスがあるオープンな環境による恩恵が大きいと思っています。

 

シャラ:確かに。広い空間でくつろぎながら食べられるラーメン屋さんって、他にないですもんね。

 

吉祥丸:はい。ラーメンといえば一人でさっと食べるような印象があると思いますが、開放的な空間でゆったりと楽しんでもらえるよう、お茶とのセットをベースに提案しています。

「ラーメン吉祥丸」を通して吉祥丸さんが今後やりたいこと

シャラ:吉祥丸さんは、ラーメン屋だけでなく、さまざまなプロジェクトを次々に実行されている印象があります。活動の軸になっているのは一体何なのでしょうか。

 

吉祥丸:社会課題に関するものから広告やファッションまで様々なジャンルの撮影をしますし、幅広い企画やキュレーションを行っていますが、一貫して言えるのは、やはり「繋ぐ」ということだと思います。自分は写真を通して様々なジャンルの人に日々出会えていて、カテゴリーに捉われずに人と人をフラットに繋ぐことができると思っています。それが自分の役割のひとつだと感じていますし、やりたいことでもあります。

 

:先ほどお聞きした店舗を持たない理由にも繋がってきますね。今後「ラーメン吉祥丸」を通して何かやりたいことはあるのでしょうか?

 

吉祥丸:やはり、コミュニティとしての場を形作るということを大切にしていきたいです。先日オープンしたときには、アーティストや学者、ビーガンのカップ麺をプロデュースしている方や環境活動家の学生など、たまたまそこに居合わせた、普段全く異なることをしている人たちが、同じ卓を囲むという瞬間がありました。その繋がりが仕事になろうが、ただ友人関係になろうが、それはどちらでも良いと思っています。こんなふうに、こちらがコントロールしえない領域で、様々なコミュニケーションが生まれたり、小さな気づきや出会いがあるような、そんな場を提供し続けていきたいです。

<次回はこの取材日に「ラーメン吉祥丸」と一緒にJINNAN HOUSEで出店していたノンアルコールバー「Bar Straw」を紹介します。お楽しみに!>

PROFILE

  • 平山 潤

    世間で<エクストリーム>だと思われるようなトピック·人に光を当て、より多くの人に「先入観に縛られない<ニュートラル >な視点」を届けるウェブマガジン「NEUT Magazine」の編集長。食べること、人と話すことが好きです。本連載の担当編集をしています。

  • シャラ ラジマ

    モデル・文筆家。バングラディシュのルーツを持ち、東京で育つ。「人種のボーダーレス」をコンセプトに、独自の路線で雑誌やTVなど幅広いジャンルで活躍中。

  • 嶌村 吉祥丸

    国内外を問わず世界的に支持される、写真家でありアーティストの嶌村 吉祥丸さん。ファッション誌や広告作品を手がけるほか、ギャラリーのキュレーションも務めている。2021年の夏に「ラーメン吉祥丸」をオープンした。

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