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UPDATE : 2022.09.09

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#CINEMA

CINEMA FREAK!! Vol.1「ブレット・トレイン」

Text:Mikiko Ichitani

Edit:FREAK MAG.

2021年からスタートした映画連載「愛が止まらない!映画フリークがお届けする #シネマフリーク」がプチリニューアル!サブスクが主流になり、外でも家でも大量のコンテンツを消費できる時代だからこそ、何を観たらいいのか分からない!という人も多いのでは?新生「シネマフリーク!!」では、映画館で上映中の話題作から、ちょっとニッチなミニシアター作品、おうちで観ることのできる配信作品など数多ある映像作品の中からライターの独断と偏見で、いま観てほしい一本を深掘りします。

今回はブラッド・ピット主演、伊坂幸太郎原作で話題の『ブレット・トレイン』をご紹介。本作は、伊坂幸太郎作品の大人気殺し屋シリーズの2作目として知られる『マリアビートル』を、『デッドプール2』(2018)『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)などで知られる気鋭監督・デヴィッド・リーチの指揮下で大胆にハリウッド仕様にリメイクしたアクション超大作。原作の持つ軽快なテンポとウィットに富んだ会話劇、そして緻密に張り巡らされた伏線の数々までリスペクトを持って再現されているところが、とにかく見どころです。(実際に映画館では、声をあげて爆笑する人が続出していました。もちろん、私もその一人)

原作でも人気の檸檬と蜜柑はレモンとタンジェリンとしてかなりいい味を出してます。

<あらすじ>

いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスが待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していく—

なんの前情報がなくとも、ブラッド・ピットを筆頭に豪華キャストが日本の新幹線を舞台に暴れ回るというだけでワクワクしますが、せっかくなのでここでは監督、製作チーム、そして最大の見どころであるアクションシーンについて少し深掘りしていきたいと思います。

 

デヴィッド・リーチは、スタントマンとしてキャリアをスタートさせた映画監督で、これまでに『ファイト・クラブ』(1999)などいくつかの作品でブラッド・ピットのスタントダブルを何度も務めています。スタントダブルでイメージしやすいのは、クエンティン・タランティーノ監督作品『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)。その中でレオナルド・ディカプリオ演じる落ち目の俳優リックのスタントダブルとして、ブラッド・ピット演じるクリフが登場しています。デヴィッド・リーチはアクションをこなすプロフェッショナルとして、スタント・コーディネーターから映画監督までのぼり詰め、2019年にはプロデューサーのケリー・マコーミック(デヴィッド・リーチ監督の奥様)と一緒に自身の映画制作会社87Northを立ち上げました。

デヴィッド・リーチ監督

本プロジェクトが動き出したのは2020年の春。コロナウィルスの蔓延によって、世界中がロックダウンを強いられていた状況のなかで、製作チームが動き続けるための対策を考えていたリーチ監督にとって、新幹線という密室空間で起きるクライムサスペンスは絶好の題材だったようで。限られた時間と人員(そして接触)によって、ソニーの大型スタジオに全長20mの新幹線のセット、品川から京都までの駅のホーム、LAコンベンションセンターには東京駅の大きなセットが製作され、日本人リサーチャーによる緻密な日本の文化を反映させながらも、どこか時代が交錯しているかのようなカオス・ジャパンが創り出されています。また、劇中に新幹線の窓から見える日本の風景は、リモートチームが遠隔で撮影した東京ー京都間の夜景を幅25mの特大LEDウォールで放映したとのこと。新しい技術を取り入れることで実現した、日本を旅しているようなリアリティへのこだわりが本当にすごい!

さらに、CGなど最新技術を駆使しながらも、大規模なセットを活用した、チャレンジングな特撮の数々は必見!時速350kmの高速列車から投げ出されたり、よじ登ったり…プロフェッショナルたちの知識と経験で再現されたありえないシーンの連続はアクション好きからしたら眼福そのもの。もちろん、ブラッド・ピットを筆頭に役者陣もプロ魂を炸裂させて、実際にアクションシーンの8,9割を自身で演じているというのだから、一人ひとりのポテンシャルの高さに脱帽です。

物語の鍵となるのは、誰しもが背負う「運命」という永遠のテーマ。世界一の運の悪さを自覚するレディバグや木村がいる一方で、運を味方に他人を破滅に貶めてきたプリンスやホワイト・デスといった個性豊かなキャラクターたちが出会い、互いの運命が交差することでツキが変わっていく。冒頭からラストシーンまで、大なり小なり “因果応報” が積み重なる、緻密な演出の数々にニヤリとしながら、観るたびに新しい発見があるのも『ブレット・トレイン』の魅力。豪華なカメオ出演に日本文化のオマージュ(作中で描かれる人気アニメのキャラクターも既視感ありまくり)、キャラクターを印象付ける劇伴など、二度、三度と観たくなる要素が散りばめられた中毒性満載の一本をぜひチェックしてみてください。

タイトル:『ブレット・トレイン』

監督:デヴィッド・リーチ

出演:ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、真田広之、マイケル・シャノン、バッド・バニー(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)、サンドラ・ブロック

配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

2022年製作/126分/アメリカ

9月1日(木)全国の映画館で公開

参考文献

  • 「アート・アンド・メイキング・オブ・ブレット・トレイン」(DU BOOKS)¥4,180

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