UPDATE : 2025.06.27

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#ART & CULTURE

日常で感じたモヤモヤを不穏なビジュアルで表現!
nico itoが作品に込めた自分の世界

Photo:Takao OKB

Text:Ryo Tajima (DMRT)

6月7日から29日まで、ギャラリー月極で個展『Soft Panic』を開催したビジュアルアーティスト、nico ito。彼女の作風はどこか不穏な雰囲気のキャラクターを3Dライクな立体的タッチで描いたもの。90~00年代初頭のコンピューターグラフィックがバックボーンにあり、レトロでいてインパクトある作品を制作している。

そのインパクトあるルックスに注目が集まり、過去にGUCCIやUNDERCOVER、NIKEといったブランドとも協業してきた背景を持つ。

 

今回の個展に込めた思いは「日常の中で感じている小さな違和感やモヤモヤをなるべくキャッチーな言葉で表現したい」ということ。そのようにして表現された作品群はポップでいて、どこか毒っけが感じられて印象的だ。この展示を軸にnico itoのクリエイションについてインタビュー

不憫萌えというか。浮かない顔をしているキャラクターが好き

-本格的に制作をスタートしたのはコロナ禍で、まずはインスタグラムなどのSNSへアップし始めたのがきっかけだそうですね?

 

nico ito:  はい。今の作風が固まったのがその時期でした。それまでは平面的なグラフィックをやっていたんですが、いつか3D的な立体感のあるものを作りたいと考えていたんです。コロナ禍になり、まとまった時間ができたので、その間に取り組んで試行錯誤しながら今の作風にたどり着いたんです。

-立体的なグラフィックをやりたいと思っていたのは、誰か好きなアーティストはそういう作風だったからですか? nicoさんに影響を与えているのはどんなアーティストですか?

 

 

nico ito:当時はInstagramやPinterestでとにかくたくさんのアーティストをチェックしていました。ゴリゴリの3Dではなく、立体的だけどレトロ感がある感じをやりたくて、特にRobert Beatty、Jo Minorというアーティストの作品が好きでした。あとはHylicsというクレイアニメーションを使ったゲームがすごく好きで世界観が最高です。

 

最近はまた少し変わってきて、90年代後期から2000年代初頭の頃にあったコンピューターグラフィックからも強く影響を受けています。幼少期の頃からパソコンが身近にあって、よくわからないブラウザのゲームであそんだり、海外のチープなGIFなたくさん盛り込まれた謎のサイトをよく見たりしてました。「キッドピクス」というお絵描きソフトはずっと大好きで、そのあたりの世界観が原点にあると思います。

 

あとは昔からずっとダリの絵に憧れていて、こんなのが描けたらなと思っていました。

-nicoさんの作品を見るとキャラクターが非常に個性的で印象に残ります。表現しているキャラはどんなものが多いですか?

 

nico ito:  私が不憫萌えと言いますか(笑)。ちょっとかわいそうだったり浮かない顔をしているのが好きなので、そういうキャラクターを描いていますね。それを描くにあたって自然と、ちょっとイヤだなぁというストーリーが生まれたりしてくるんです。なので、口数が少なくて笑顔もないような描写がけっこう多いです。それは、私が自分の感情の機微に敏感なことも理由としてありますね。今回の個展『Soft Panic』では、そんな自分の精神的な脆弱さをテーマに、自分の感情をキャラクターへ投影しながら表現している作品が多いです。

-『Soft Panic』で展示されている作品を見るとキャラクターのシュールな表情が印象的ですね。3Dアニメっぽさやゲーム感も感じるのですが好きですか?

 

nico ito: そうですね、海外のキャラのぜんぜん可愛くないけどなんか愛せる感じが好きです。世界観も不気味なものが多いですよね。日本の番組でいうと「ウゴウゴルーガ」も好きでした。

-では、nicoさんのインスピレーションに影響を与えるものはなんでしょうか?

 

nico ito: 音楽から影響を受けることは多いです。今回の展示の私のイメージはOTTOというアーティストの楽曲で、ギャラリーで流すプレイリストにもたくさん入れています。アートワークもすごく好きです。かわいさと不気味さと不穏な雰囲気があって、OTTOの楽曲みたいな作品を作りたいと思いながら制作時ずっと聴いていました。

ゲームの世界やキャラクターを作り出してみたい

-『Soft Panic』で展示されている作品はどれも最近制作されたものになりますか?

 

nico ito: 展示のために制作した新作がメインですけど、過去に作った作品もあります。今回の展示では過去作も出したい気持ちがあって、じゃあどんな展示コンセプトがハマるだろう? と考えたときに、昔から一貫して、私がちょっとしたモヤモヤを描いていることが多いなと思ったので、そういうテーマにしました。

-タイトルには「日常の中で感じている小さな違和感やモヤモヤをなるべくキャッチーな言葉で表現したい」という思いが込められていますよね。これは、nicoさんにとって普遍的なテーマでもありますか?

 

nico ito:  やっぱり性格は変わらないものなので、昔から今も同じですね。そこに、さっきお話しした少し不憫なものが好きな性格だったり、ちょっとイヤだと思ったことを表現しようと考えていた気持ちが相まって『Soft Panic』に繋がっていった感じです。

-この作品「Midnight Genius」の「起きたら、全然よくなかった。」とか。クスリとしました。深夜のノリ的な解釈になりますか?

 

nico ito:  そうです、いわゆる深夜モード的な感覚のことですね。<天才>って書かれたタンクがベコベコになってゴミが降ってきているという絵です。

-一方で顔がないキャラクターも印象的ですよね。ちょっと怖さを感じるというか。

 

nico ito:  目がなかったり顔がないことによる不穏さっていうのも好きですね。顔があることでキャラクター像がはっきりするおで、そのストーリーが見えてくると思いますし、それはそれで好きなんでうけど、顔を不明瞭であった方が想像を膨らませることができるのかなと思います。顔がない方が日常の中にあってより強く恐怖を感じると思いますし、作品を観ているときに、そうした不穏なものと直面している感じがするかもしれないと思います。

-実際に展示をしてみて、お客さんの反応から何か発見するものはありましたか?

 

nico ito:やってみた結果、キャプションを書いてよかったと思いました。今まで作品解説は気恥ずかしくてしてこなかったんですけど、来てくれた人が楽しんでくれたり共感してくれたりして嬉しかったです。私の性格を知っている友人たちはキャプションを見て「めっちゃnicoだね」と言っていました。

 

ただ、文句っぽい感じの作品を出すのは今やっておいてよかったなと思いました。

このまま文句おばさんアーティストになっていくのは厳しいものがあります…(笑)

といいつつも自分が感じたモヤモヤは大切にしていきたいです。

-今回を展示を経て、具体的な話でなく、今後漠然とやってみたいと思うことはありますか?

 

nico ito: 空間を有効活用した展示をしてみたいです。今回の『Soft Panic』では、平面の絵で不穏な気持ちになっていただこうという思いがあったんですけど、まるで絵の世界に入り込んだような展示ができたら面白いんじゃないかと思います。あと、誰かゲームのグラフィックをオファーしてくれないかな~と思っています。以前からゲームの世界観やキャラクターのデザインをやってみたいと思っているので、そういう話がきたら嬉しいですね。自分で映像も作ってみたいですし、やりたいことはまだまだいっぱいあります。

PROFILE

  • nico ito

    1996 年東京生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を卒業後、ビジュアルアーティストとして活動中。デジタルとアナログ、双方の要素を落とし込んだ作風で、独自の世界観を作品の上に表現している。

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