UPDATE : 2024.11.08

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#ART & CULTURE

NFT FREAK vol.3 片桐裕司&NIKO24 NFTアートとともに、クリエイターが思い描く世界へ

Text/Interview:Layla Okuhama

Photo:Tatsuru Ishiwata

Edit:FREAK MAG.

ハリウッドの大作映画にも特殊造形として関わってきた片桐裕司さんによる立体造形作品を、『NEO TOKYO PUNKS』などNFTコレクションをヒットさせてきたNIKO24さんがNFT化。NFTを通じて「好き」で繋がるためのプロジェクト「NFT FREAK」内でローンチされました。

 

初めての対面となったお二人に、お互いの作品の印象や今回のプロジェクトで作り上げたコラボ作品のこと、これを経て感じたNFTアートの未来について対談で語っていただきました。

 

―お二人は今回が初対面だそうですね。

 

片桐(以下:片)そうですね。それぞれ2022年の東京コミコンに関わっていたのですが、その時はお会いできず今日が初めてです。

 

NIKO(以下:N)小さな頃から観ている映画に携わっている片桐さんとお会いできて光栄です。

 

―NIKOさんはどんな映画で片桐さんの作品をご覧になっていたのですか?

 

N:例えば『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『ヘルボーイ』、『ジュラシック・パーク3』『A.I.』など挙げたらキリがなくて、知らないうちに多くの作品に触れていたと思います。まさかそんな方とお仕事できるとは思っていませんでしたね。

―片桐さんはNIKOさんの作品にどんな印象をお持ちですか?

 

片:すごくかっこいいですよね。面白いですし、好みです。

 

N:ありがとうございます!僕は普段サイバーパンクというか、ロボットのようなイメージで描くことが多いんですけど、今回のコラボ作品は生き物というか有機的なものなので描いていて新鮮で楽しいです。

―NIKOさんはどのあたりに楽しさを感じていますか?

 

N:最初に片桐さんの作ったキャラクターを見た時に、ぬいぐるみと人間をかけ合わせる発想が自分にはないのでその造形に衝撃を受けて「これをどうNFT的に、かつ愛着を持ってもらえるようにデフォルメしていこうか」と考えたんですが、それが楽しかったですね。難しさもありますが。

 

―NFT化する時に片桐さんから伝えたことはあったんですか?

 

片:いえ、好きにやってくださいとお任せしました。

―そうなんですね。そもそも立体造形をNFTにするということで、NIKOさんとして意識していたことを具体的に教えてください。

 

N:このキャラクターはパッと見ると怖いんですけど、眺めていると可愛らしさも感じられるじゃないですか。そのキモカワなところをより伝わりやすく2Dで表現できたら、というのは意識していました。

 

―そもそも日本ではNFTアートは可愛らしいものが多いとお話されていましたよね。

 

N:そうですね。海外だとグロテスクなのものやホラーテイストの作品も多いんですけど、日本はアニメなどのカルチャーの影響もあってNFTも可愛いものが多くなっているんだと思います。

―なるほど。片桐さんはご自身の作品がNFTアートとして表現されることをどう感じていますか?

 

片:純粋に楽しみですよね。タッチしてこなかった世界なのでどうなるんだろうと。

 

N:多分、今の日本のNFTでここまでエッジの効いた作品はないと思うので、インパクトがあるんじゃないかなと。反応が楽しみですね。

 

片:NIKOさんの作品は世界観がしっかりあるんですよね。単純にキャラデザインというより、サイバーパンク的な世界観が構築された上にキャラクターが存在している。その中でバラエティ豊かに作っていくというのは労力も必要で大変だと思う。よくこれだけの組み合わせを作れるな、すごいなと感心しています。

―バリエーションもすごいと思われるポイントなんですね。

 

片:僕自身はあまりデザイナータイプじゃなくて、依頼されたところからイメージを形にしていくコマーシャル・アートをやってきたんです。自分が監督として撮る映画は、ストーリーがあってその中でキャラクターが立ち上がっていく感覚ではあるんですが、「自分がこういうキャラを作りたい」という欲求はあまりなくて。だから、それを0から生み出していける人はすごいなと思います。

 

N:元々は会社員をやっていて、クリエイターへの憧れで2年前くらいにこの世界に飛び込んだので、僕は相当荒削りだと思うんですよ。ただ確かに、見た人がストーリーを感じられるように世界観を創っていくことは意識していますね。

 

片:元々、創作するのは好きだったんですか?

N:そうですね。小さい頃からイラストを描いていたんですけど、親から「クリエイターの仕事は大変だよ」という刷り込みもあってすぐにはイラストの道には進みませんでした。大学では建築デザインを勉強しましたが、卒業後は建築系ではない会社員になってイラストは趣味で描いていたんです。元々N F Tをやっていたこともあって、自分のイラストの趣味と結びついたという感じなんですよね。なので、独学で学んで18歳でツテもなく渡米された片桐さんはすごいなと尊敬します。

片:僕の場合は、行動を起こすきっかけはやっぱり映画なんですよね。映画が好きで、映画に関わる職種はたくさんありますが、当時はまだ日本では知られていない職業だったので、これならなんとかなるんじゃないかと漠然とした自信があって。あとは漫画も好きだったので、高校のクラスメイトだけを登場人物にして自分で描いていましたね。全然うまくはなかったけど。

 

N:手先は器用だったんですか?

 

片:そこそこじゃないですかね。自分の作品を描いて満足というよりは、読んで笑ってくれたりリアクションが大事だったと思います。作家タイプじゃないですよ。

―NIKOさんは、NFTコミュニティの中での反応が自分の作品にフィードバックされると話してましたよね。

 

N:そうですね。SNS上だとInstagramをスタートしたくらいから少しずつイラストを人に見せるようになったんですけどコメントがつくのが嬉しくて、さらにNFTを始めてから距離が近くなったことでリアクションがより見えるようになり楽しさが増しました。下描きの段階から見せたり、次の作品を匂わせたり、そこでの反応がモチベーションになったり。NEO TOKYO PUNKSのコレクションは下描きから見せて、名前の候補も一緒に考えてもらってました。プロセスも一緒に楽しんでもらえるのはNFTの醍醐味ですね。

 

―片桐さんは作品を作る中でどんな時に喜びを感じますか?

 

片:そのプロジェクトによって、かなり具体的に作って欲しいものが決まっているケースと、オープンなケースがあるんですね。オープンな方が自由度が高くて当然おもしろい。監督から100%任せてもらえた『パイレーツ・オブ・カリビアン』の時は楽しかったですね。ただ、撮影までが殺人的なスケジュールで。自由だけれども命を削らないとできない仕事でした。これで変更があったら死んでしまうと思いながらやっていましたね。

―大きなプロジェクトでもギリギリのスケジュールで動くこともあるんですね。『A.I.』の時はいかがでしたか?

 

片:あの作品も結構お任せでしたが、スピルバーグ監督が自分のところに来て褒めてくれたんです。当時28歳だったかな。

 

―そんな若い時にスピルバーグ監督から太鼓判を!それは自信になりますね。お任せの時はどこからイメージを膨らませていくのですか?

 

片:造形についてはお任せでも、映画には必ずコンセプトがありますよね。それを遵守した中で、自由性を出していきます。

―NIKOさんはご自分の作品のインスピレーション源はありますか?

 

N:好きな漫画、アニメ、映画はもちろんで、自分が昔から見て蓄積してきたイメージが作品に結びつくこともありますね。ただ、枯渇していくこともあって自分の中でパターン化してしまうのは避けたい。そんな時はあえて人の作品を見ることもあります。あと機械的な作品のアイディアは動物からインスピレーションをもらったり。暇さえあればPinterestを眺めて動物の筋肉のつき方や造形を観察してイメージを膨らませていますね。

―片桐さんが監督された長編映画『GEHENNA〜Where Death Lives〜』はどんな出発点だったんですか?

 

片:予算の縛りから設定を考えていきました。舞台になるのは狭いところで、少数の人間が怖い目に遭う。それがベースです。あれもやりたいこれもやりたいと膨らませた結果、予算が足りなくなってロークオリティになるのは避けたい。現実的に撮れるもの、その中で能力を最大限に活かせるものを撮る。そうした制約からストーリーが生まれることもあります。

―NIKOさんは制約から作品が生まれることってありますか?

 

N:NFTのデザインってけっこう制約だらけなんです。基本的にはパーツをランダムに組み合わせていく作り方なので、そのパターンをどう工夫して重ねていくかというある意味で制約がある中で、自分なりのルールを作ってそこから生まれるアートなのかもしれません。

 

―今回お二人はクリエイター同士でひとつのものを生み出していくわけですが、そのあたりはいかがですか?

 

N:自分はNFTを始めてクリエイターとして活動をスタートさせたので、どちらかというとクライアントからの発注があって作るより、自分で世界を作ってイメージを広げるやり方をしていて。今回は初めて他の方の作品を僕がイラストにするプロセスですが、片桐さんの世界観を保ちながら自分の色を出すというのもやらなければいけないので、それは初めての経験ですし、新しいチャレンジに楽しさを感じるところでもありますね。

 

―立体から2Dになりますよね。

 

N:そうです。あとホラーというテーマもありますよね。今回の作品を見てファンの方は僕のイラストって分からないんじゃないかってくらいテイストが違いますし、新しい扉を開けてもらったというか、普段発表するものとは違ったおもしろさがあります。

―片桐さんにはどんな影響がありますか?

 

片:自分も初めての経験なので、純粋に楽しんでいます。もちろんこのキャラクターが生まれた出発点には映画があるわけで、ホラーなので怖さもあるんですが、作った本人としても「かわいいな」と思えるんですよね。今までなかったパターンだったので、これは新しいなと。普段、自分の作品でもかわいいと感じることは少ないですが、このぬいぐるみと人間の死体という組み合わせも見たことないですし、おもしろいものができたなと愛着を感じています。作っている最中もあっという間にイメージが膨らんで、作業が早かったですね。

 

N:そうだったんですか!改めて、なぜこの組み合わせになったのか聞きたくなりました。

 

片:ホラーってアイコンが大事だと思うんですよね。ジェイソンとかフレディとか、とにかくそのキャラクターのビジュアルが大切。その中で、身近にあるものが怖くなったら?と考えました。あんまり話すと映画のストーリーのネタバレになってしまうから話せないですが、ぬいぐるみと人間を組み合わせたアートを作る人がいたら・・と想像していき、その人なりの実験を実体化したらどうかというところからこの造形になりました。

 

N:片桐さんはその登場人物になったつもりで、イメージを膨らませていくんですね。

片:自分が脚本を考えていく上でも、その人がどんな人で何を考えてこういう行動をするのかという物語の構築の仕方をするので、今回もそのプロセスで誕生したキャラクターです。

 

N:片桐さんは作りあげるスピードもすごいですよね。自分は1作品に時間がかかる方なんで。

 

―どこに時間をかけるのですか?

 

N:自分はデザインに時間がかかりますね。出てこないときは数日下描きを描いていることもありますし。スピードをどう上げていくかは課題なんです。

 

片:そうですね。もちろんデザインが出てこないと時間はかかりますが、それ以降の技術的なスピードであれば業界で1番早いと思います。

―仕事のスピードも含めて名だたる映画監督が「片桐さんにお願いしたい!」と映画の大切な部分をお任せしてきたんですね。今回のプロジェクトはファンの方にとっては意外な組み合わせなのかもしれませんが、お話を伺っているとお二人ともその業界の黎明期から「好きだから」という理由で突き進んできた開拓者のようなイメージが重なりました。今後はこのプロジェクトがどんな展開になったらいいと想像しますか?

 

N:まずひとつは、日本でのNFT自体がまだ有名なクリエイターさんがそれほど出てきていないなかで、片桐さんのような最前線で活躍されているクリエイターの方がNFTを使って何かやるということ自体が業界にとってプラスですし、他のクリエイターさんがそうしたやり方を知る機会にもなると思います。まずそこにプロジェクトとしての意義を感じます。もうひとつは、個人的に今回の片桐さんの作品が純粋にキャラクターとして好きなので、小さいフィギュアなどグッズ化されて、高校生がカバンにつけているのを見かけるとか、キャラクターとして愛されるのを見てみたい気持ちがありますね。

片:僕自身はNFTに関する知識は浅いので、そもそも想像も付かなかったことなんですが・・もう少しやってみたいですね。自分の作品がNFT内で展開されていくことを嬉しく思っていますし、うまくいってほしいですね。

 

―NFTアート内で、ホラーという切り口が話題になるきっかけにもなりそうですよね。

 

N:NFTを使う意味のひとつは世界中とブロックチェーンで繋がっていて、今まではクリエイターさんが作品を生んでも収益化できなかったものが世界にも届いて、ひとつの収益化の手段になるからですよね。クリエイターが自分の思い描く世界を表現したい時に、もしお金がなくてそれが実現できないと思っているならNFTで資金調達ができるかもしれない。表現したいものをそのまま表現しやすくなるという点でも、NFTは有効だと思うんです。「こういう手段もあるんだよ」というのを広げるためにも今回のプロジェクトは意義があると信じています。

INFORMATION

  • NFT FREAK ポータルサイト

    セレクトショップ“FREAK’S STORE”などさまざまな事業を展開するデイトナ・インターナショナルが、NFTプロジェクト「NFT FREAK」を2024年9月に新たにローンチ。

    NFTを通して「好き」で繋がるコミュニティの醸成とクリーエーターの支援を目指します。

PROFILE

  • 片桐裕司

    東京都出身。

    高校卒業後18歳で渡米。

    フリーランスで映画、テレビのキャラクター制作に参加。

    1998年、TVシリーズ Xファイルのメイクアップの仕事でエミー賞受賞。

    1999年、世界屈指の工房であるスタン・ウィンストン・スタジオのメインアーティストに就任。

    『A.I.』『ジュラシックパーク3』『タイムマシン』『宇宙戦争』等、数多くの作品に従事。その後もフリーランスとして様々なクリエイトを続けている。

    主な代表作は『キャプテンマーベル』、『パシフィック・リム』、『マン・オブ・ティール』、『エイリアン対プレデター レクイエム』、『ウルヴァリン X-Men Zero』、『パイレーツオブカリビアン 生命の泉』、『スパイダーマン4(制作再開)』など。

    スティーブン・スピルバーグやギレルモ・デル・トロ、サム・ライミなどの著名監督の映画作品に参加。彼らの映画のキャラクタークリエイションに多大な貢献をしている。

    同時に、昔からの夢で目標でもあった映画監督としても活動しており、2016年に長編初監督映画、「GEHENNA〜Where Death Lives」を制作。

    2018年6月アメリカ10都市で公開、北米Netflixで配信中。

    2019年に未体験ゾーンの映画館で日本上映。DVDレンタル・販売中。

  • NIKO24

    福岡県出身。

    2021年からNFTクリエイターとして活動を開始。2022年にNFTコレクション『NEO TOKYO PUNKS』をリリース。 日本発のNFTプロジェクトとしては初めて、取引量世界ランキング 27位を記録。

    2024年1月時点での総取引額は7億円にのぼる 2022年に株式会社WEST BASEを設立。 『NEO TOKYO PUNKS』という、国内ではまだ事例が少ない 『NFT発のIP』として、様々な自治体や企業とコラボレーションし IP展開と同時に、NFTのテクノロジーを広める活動を行なっている。

  • 奥浜レイラ

    1984年神奈川県出身。映画・音楽のMC・ライター。

    2006年よりテレビタレントとして活動をスタート。映画の舞台挨拶やトークイベント、ラジオ番組でMCを務める他、雑誌の音楽レビューや、映画パンフレットへの執筆などライターとしても活動している。

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